第27話 マスコミまできちゃった…

「うわぁ……」


 校門の前にはとんでもない人だかりが出来ている。

 新聞に私の記事が書かれていたとアリカちゃんが教えてくれた通りだ。

 マスコミ関係の人達が私を今か今かと待ち構えていた。


 これはまた飛び越えるしかないのかな。

 うん、そうしよう。

 私は助走をつけて校門に向かって走った。


「てぇぇぇいっ!」

「わっ!」

「なんか飛んだ! あれは噂の少女じゃないか!」


 マスコミの人達が高く跳びあがる私を見つけた途端に猛ダッシュしてきた。

 だけどさすがに学校の中までは入ってこないはずだ。

 最初は塀を飛び越えようと思ったけど、なんで一般生徒の私がそこまでしなきゃいけないのと思い直した。


「ミオさん! クルグイ討伐のお話を詳しく!」

「覇界拳についてお話を!」

「あそこで何をなさっていたのでしょうか!?」


 なにってキャンプだよ!?

 なんだと思ってたのさ!

 私の足にはさすがに追いつけないマスコミ達がどんどん引き離されていく。


 そして校門を超えた辺りで満員電車に入ろうとしてる人達みたいに詰まった。

 ここまでくれば安心だね。

 他の生徒の邪魔になるから早く帰ってね。


「おうコラァ! こりゃ何の騒ぎだ!」


 後からやってきたのはタイショウ先輩だ。

 あの柄の悪さならマスコミもさすがにドン引きするはず。

 風紀的にはよくないけど、こういう時は頼りになるね。


 案の定、マスコミ達はそのチンピラっぷりにサッと引いた。

 タイショウ先輩はマスコミ達を睨みつけて素通りする。


「まさか西園寺のことで騒いでんじゃねーだろうなぁ」

「あ、あなたは西園寺……ミオさんとお知り合いなんですか?」

「俺は覇界拳を教えてもらおうと頼み込んでるんだよ。だけどなかなか首を縦に振らなくてな。お前らもあの西園寺には苦労するぞ」

「すると弟子入り希望ということですか! 西園寺さんは弟子を取るのですか!?」


 あれ? なんだか雲行きが怪しくない?

 タイショウ先輩? 頼むよ?

 ていうか何気にウラン先輩も一緒にいるんだ。

 仲良く登校している辺り、さすが幼馴染だ。


「あぁ、だけど考えてもみろ。あの強力無比な覇界拳をそう簡単に教えてもらえるとは思えねぇ」

「なるほど! でもあなたの逞しそうな体ならば弟子に相応しいように思えますね!」

「お、そうか?」

「もしあなたが弟子入りしたとなれば大きく話題になるでしょう! 応援してますよ!」

「ハハハッ! 任せおけぇ!」


 いや、何してんの?

 なんで応援されてるの? 弟子とか取らないからね?

 あの人達、話題になればなんでもいいの?

 天狗になっているタイショウ先輩の横からウラン先輩がひょこっと出てきた。


「こちら、タイショウの一騎当千チャンネルを運営してまーす。今後ともご期待くださーい」

「ほ、ほぉ、チャンネルですか……へぇ」

「もしこちらのタイショウが弟子入りすればこのチャンネルで呪霊と戦ってる様子を配信するんで。登録者数は15人、あ。13人でした。二人減ってました」

「それはそれは……」


 あぁ、マネージャーってそんな感じで宣伝するのか。

 あの人、タイショウ先輩をからかってるだけに見えてちゃんと考えてるんだね。

 それはそれとして絶対に弟子入りはさせないけどね。


「はいはーい! マスコミのみなさーん! どけてくださいねぇー!」


 あの明るい声はアリカちゃん!

 私のマネージャーにして大親友!

 家が遠いから一緒に登校できないのが歯がゆい。


「ミオちゃんに何かあるならマネージャーの私を通してくださいねぇ! はい、名刺!」

「みおみおチャンネル、そうですか。それは失礼しました」

「もし当チャンネルと懇意にしたかったら強引な取材は絶対にやめてくださいね。もしミオちゃんが不快な思いをしたら……えーと、例えばですねぇ」


 そう言ってアリカちゃんはマスコミの一人をビシッと指した。


「あなたの密会をバラしちゃいますよぉ~? あの人、綺麗な人ですねぇ!」

「えゅっ!? な、なんの、話かな!?」

「えぇー? またまたぁー! 三日前も会ってたじゃないですかぁ! すごく異性にモテるんですねぇー!」

「い、いいいい、いや、ハハハ! なにを言ってるんだか! ハハハ……」


 マスコミの一人が脂汗を流している。

 次第に他のマスコミの視線が明らかに突き刺さって居心地が悪そう。

 特に女性の記者の冷めた目がすごいなぁ。


 アリカちゃん、マスコミ関係者の秘密まで握ってるの?

 どうやって? いや、アリカちゃんだからなぁ。

 中学生の時、私に金持ちマウントしてきた子の父親の不倫が発覚していたからなぁ。


 これがアリカちゃんのやり方だ。

 決して核心をつくことなく匂わせる情報を出す。

 それをどう感じるかは受け手次第だ。


「そ、そうですよ! 皆さん! ちゃんとアポをとって取材しないと! 君達も帰った帰った!」

「急にどうしたんですか? 私は帰りませんよ!」

「えぇ~? そんなこと言っていいんですかぁ?」


 帰らないとごねたマスコミの顔をアリカちゃんが悪戯っぽく覗き込む。

 覗き込まれたマスコミの人も何かを察したのか、少し冷や汗をかいていた。


「秋村さんは縛られるのがお好きなんですねぇ?」

「……え、いや。なにを言ってるんだか」

「蝋燭も大好きなんですよね? どのくらい熱いんですかぁ? 鞭とどっちがいいんですかぁ?」

「は、はぁ!? い、意味がわからん! か、か、帰らせてもらう!」


 マスコミの秋村さんが顔を赤くして逃げていった。

 その様子を他のマスコミが見て一気に沈黙する。

 ようやくアリカちゃんという存在の恐ろしさに気づいたみたい。

 うん、同情するよ。


「まだ取材されたい方はいますかー?」

「いや! もう結構!」

「次の仕事があるんだった!」

「いやー忙しい忙しい!」


 皆、取ってつけたような言い訳をして散っていった。

 校門前にはいつもの光景が戻ったわけだけど、他の生徒は青い顔をしたままだ。

 あの人達もアリカちゃんの恐ろしさを知っている。

 あの中にはアリカちゃんに弱みを握られている子もいるのかも。


「さ! 今日も元気にお勉強ですよー!」

「そ、そうだな!」

「さぁホームルームが始まるぞ!」

「がんばるぞー!」


 生徒達が逃げるようにして校舎に吸い込まれていく。

 どう考えても覇界拳なんかよりこっちのほうがすごいでしょ。

 なんでアリカちゃんが取材対象にならないの。


「というわけでミオちゃん! おっはよ!」

「お、おはよ」

「そういえばあの件、進めるんだよね? ほら、切音さんとのコラボ!」

「うん、勇気を出して誘ってみようと思うよ」


 そう、みおみおチャンネルはいよいよ切音さんとのコラボを始動する。

 具体的な内容はまだ未定な部分が多いけど、今回は遠出することにした。

 せっかくのコラボだからね。

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