第15話 ランク上位探索者

 いきなり殴りかかるひげ面であったが、ツトムはアッサリとその拳を躱して体当たりをした。


「グワッ!!」


 自分が居た方角とは違う方に吹き飛ぶひげ面。それを見てもう一人の男が動き出した。


「やりやがったな! 喰らいやがれ!」


 そう言ってひげ面と同じようにツトムに殴りかかってくる。ツトムはそれを躱しながら巧みに位置を変えていく。ユウカに後ろ手で同じように移動するように指示するのも忘れない。これはダンジョンに入る前にユウカに「こうやって指示する事もあるから」と教えていたのだ。


 そうして三人の女性たちとユウカが自分の後ろになるように位置取りしたツトムはもう一人の男の手を掴み、立ち上がりまたツトムに攻撃しようとしていたひげ面に向かって投げつけた。


「ウワーッ!」

「ギャッ!! く、来るなーっ! ゲボッ!」


 ひげ面の腹にツトムが投げた男の頭がちょうど当たり二人とも倒れ込む。


「ふーっ、大丈夫ですか? 何もされてません?」


 ツトムは二人が倒れて呻いているのを見ながら後ろにいる三人の女性にそう尋ねた。


「あ、は、はい。あの、有難うございます。私たちEランク探索者で三人で活動してます」


 一人がそう言うと後の二人もツトムに礼を述べた。


「「有難うございます!!」」


「一応、確認なんですけど別にこの二人とパーティーを組んでいるという訳じゃ無いんですよね?」


「はい。私たちも無理やりパーティーを組まされて…… 普段から私たちは三人で活動してるんですけど今日、いきなりこの人たちに声をかけられて、言う事を聞かないと探索者協会に居られなくしてやるって脅されて仕方なく……」 


 ツトムの問いかけにそう答える女性。ツトムやユウカよりも少し年上、コウスケたちよりは年下に見える。


 その時になって呻いていた男二人が復活した。


「この野郎!! 手加減してやったら思いっきりやりやがって! 協会に言ってお前の探索者資格を剥奪してやるからなっ!!」


 その言葉にツトムは吹き出してしまう。


「プッ! Cランク探索者だと言ってましたけど、Dランク探索者の僕に負けましたって協会に報告するんですか? まあ、僕は別に構いませんけど。それにあなた達の言い分は通りませんよ。こっちには僕を含めて五人居ますし」


「へっ、バーカ! ランク下位の言い分よりも上のランクの言い分の方を協会も信じるに決まってるだろうが! お前はもう探索者として終わりなんだよ!!」


 男の言葉にツトムは冷静に返す。


「多分そうはならないでしょうけど、それなら今から一緒に協会に戻りましょう。それぞれお互いの言い分を協会の人に聞いて貰いましょうか」


「おう! そうするぞ! 協会で吠え面かかしてやるっ!」


 という事でレベリングの途中ではあったが戻る事になりユウカに謝るツトム。


「ユウカ、ごめんね。でもこの人たちをそのままにしておくのもマズイと思って。ちゃんと始末をつけておいた方が良いと思うんだ」


「ううん、謝らなくて良いよツトム。私もそう思うから協会でちゃんと話をしてあの人たちを何とかしてもらおうよ」


 そして三人に向かって、


「ツトムが居れば大丈夫です。一緒に戻ってちゃんと話をしましょう!」


 と笑顔で言うユウカ。それには三人の女性も笑顔で「はい!」と返事をして一緒に戻る事になったのたった。

 ユウカも少しだがレベルアップはしている。レベル1から今はレベル5となっていた。なので今日は戻っても構わないと考えたのだった。


 協会へと戻る道中で名乗り合うツトムたちと三人の女性たち。


「さっきから名前で呼びあってるから僕や婚約者の名前は既に分かってるでしょうけど、僕はツトムと言います。十六才です」 


「私はユウカです。年はツトムと同じで十六才です。レベリングの為にこのダンジョンに来ました」


 ツトムに婚約者として紹介され照れて少し頬を染めたユウカの後に続いて三人の女性たちも名乗った。


「私はキヨミって言います。一応三人の中では最年長の十九才です。私たちもまだレベルが低いからこのダンジョンで経験を積もうと思って来ました」

「私はキヨミの妹でハルナです。十七才です」

「私はハルナと同級生でミヤコと言います。十八になります」


 名乗り合い、和気あいあいと進むツトムたちの前方十メートルほど離れて男二人が苦虫を噛みつぶしたような顔で歩いている。

 ツトムとしても男二人を後ろを歩かせたら奇襲なんて事もあり得るので先を歩くように言ったのだ。

 その際に自分たちは最低でも十メートルは離れて歩くと伝えてある。


「Cランク探索者なら気配察知ぐらいは出来るんですよね? それなら僕らが後ろを歩いていても大丈夫でしょう? あ、それとも気配察知も出来ないとか?」


 ツトムからそう告げられ男二人は本当は気配察知なんてスキルは持ち合わせていないのにも関わらず、見栄を張って


「出来るに決まってんだろうがっ! いいぜ! お前らが後ろからついてこい!!」


 などと強がったのだった。


 そうして十メートル前方を歩く男二人はダンジョンを戻っていくのだが、気配察知が出来ないが故に魔物たちから攻撃を受けてから反撃する形となっていた。


 ツトムはスキルとして発現はしていないが、異世界向こうでの冒険者生活の中で魔物の気配を感じ取る事が出来るようになっていた。

 そして更にツトムが食材認定している魔物に関してはしっかりと気配察知が出来るようにもなっている。

 なので前方の男二人の余りのお粗末さにツトムは内心で呆れていたのだった。


「おらっ! クソがっ! 俺様の通り道を塞ぐんじゃねぇっ!!」


 ここはFランクダンジョンなので出てくる魔物も弱い。協会認定Cランクであれば楽に倒せる魔物だったので男二人はイキって出てくる魔物を倒していた。倒しながら時々チラチラと後ろを見るのは女性たちにアピールしてるつもりなのかも知れないが、出会いが最悪だったので女性たちが称賛などするはずもなく、というかそちらを見向きもせずにユウカと四人で女子話じょしばなに花を咲かせていたのだった。


「そうなんだ!? ユウカちゃんはツトムくんと幼馴染なんだね!」(ハルナ)

「良いなぁ、私なんて彼氏がいた事が無いよ……」(キヨミ)

「キヨミちゃんはその性格を直さないと無理よ」(ミヤコ)

「何よ! ミヤコだって一緒じゃない! 彼氏なんていた事無いでしょ!!」(キヨミ)


「フフフ、皆さん本当に仲が良いんですね」(ユウカ) 


 こうしてダンジョン内を進んでいきやっと出口までたどり着いた瞬間であった。男二人が突然走り出した。

 女性たちが慌てるがツトムは


「心配いりませんよ。僕たちは歩いてゆっくりと協会に向かいましょう」


 落ち着いてそう言う。女性たちはもちろん、ユウカもツトムが落ち着いていたのでその言葉に従う。


 ツトムは先に走って協会に向かった男二人は先に自分たちが有利になるような証言をするつもりだと分かっていたのだが、協会の人がそれを鵜呑みにするようならばコウスケに電話すれば良いやと思っていたのだ。

 こんなくだらない事で頼るのは申し訳ないとは思うが時間を取られてユウカのレベリングが出来ない方がツトムにとっては大問題である。


 異世界向こうでも冒険者時代や料理人として活動していた時も時間が惜しいと思った時は遠慮なく年長者を頼っていたのでツトムとしては今回も頼るつもりであった。


 そしてツトムたちが協会にたどり着くと先に来ていた男二人が


「来たっ!! アイツらです! 俺たち二人にイチャモンをつけていきなり殴りかかってきたのはっ!!」


 と、ツトムが頼ろうと思っていたコウスケその人にそう叫んでいたのだった……

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