第3話「落陽 -2-」

「まず……は、恐らく霊力の発現っスね」


結丸の発言に、あーその線が、と納得する久火と飲み込めない様子の輝蘭。


「ちょっと待って、発現って」

「霊能者としての目覚めというか……」

「いや、分かるんだけど、そうじゃなくて……!」


まァ普通そうなるよな、と思いつつ結丸は続ける。


「んー…なンか、頭上のソレ以外の変化ってあったっスか?」


結丸の問いかけに一瞬固まる輝蘭。しかし、何かを振り払うように首を左右に振り、それに返す。


「えっとね、ちょっとおかしいかもしれないけど…って今更か」


(まァ化けモンだしな……いかんいかん)


「大丈夫ですよ、多少のおかしなことには慣れてるので」


久火がフォローを入れ、そっか、とまた少し安心した様子の輝蘭は続ける。


「なんか、電気のリモコン取ろうとしたらミシってヒビ入れちゃったり、ちょっと手に当たった物弾き飛ばしちゃったりしたんだよね……」


「身体強化か、いかにも霊力が増した初期症状って感じっスね……まあ珍しいことじゃないんで安心していいっスよ」


「よかった〜〜〜!!!……で、一時的にって言ってたじゃん?それは……?」


「一旦は外見を元通りに見せる……所謂いわゆる変化の術を俺らがかければいつも通りの見た目に戻ると思うんスけど…………つまり霊気の塊が目に見えるレベルで浮かんでるってなると、よっぽど出力が高い、そんだけ出力があると、新津紀サンの術式への耐性ができやすい……まァ長くなったっスけど、要は効きにくくなるってことっス」


霊気は意思を反映する。その気もないのに作用するとなるとよっぽどだ、と結丸は踏んだ。


「う〜ん……ってことは私がその変化の術を覚えればいいってこと?」


「着眼点はいいっスね、ただ、術をイチから覚えるってのは時間がかかるんで、まず基礎、霊気の扱いを覚えて制御するとこからっスね」


「その……レイキっていうのは?」


「んー……簡単にいえばエネルギー源というか、術を使うためのパワーというか」


「じゃあ筋肉はめっちゃあるから、ラケットの振り方を覚えよう!みたいなことね」


「あ〜そうっスそうっス!」


流石運動部エースだけあって飲み込みが早い輝蘭。


「んじゃ早速……と言いたいトコだが……すまん久火後頼んでいい?」


「えっ僕!?」


「いや、流石に巡回せんワケにもいかねェだろ?だから俺がチャチャッと方ァ付けるから後任せるぜ、俺よりお前のがその専門だろ」


そう言い残し、「とりま応急処置っス」と変化の術で兎耳(?)を隠し、「んじゃあと頼む」と去っていく結丸。


はいはい、と受ける久火。「えと、大丈夫そ……?」と不安げな輝蘭。


「ここからは、イメージの話になるんですけどね」


眠たげな久火の目が急に光った。気がした。なんせ自分に術師の才能の芽があるなんて思ってもいなかった。先程までの不安が無かったかのように、輝蘭も目を輝かせるのだった。

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