殺したいほど憎いのに、好きになりそう
味噌村 幸太郎
第一章 転生
第1話 許せない
憎い……あいつをこの世から消せるなら、何でもやってやる。
それぐらい毎日、あいつの顔を思い出す。
もう30年ぐらい経ったと言うのに、俺をいじめたあいつ……”
いじめなんて、生易しいものじゃないと思う。
俺が小学生だったから、両親と教師の間で簡単に流されてしまった。
もちろん、両親は学校と真面目に争ったけど……結局、教師も立場があるし。
学校側もいじめを認めれば、悪い噂が残る。
だから、もみ消された。
そんな汚い大人たちといじめの主犯である、鬼塚 良平が怖くなった俺は、中学校へ進学しても学校へ行くことは諦めた。
本音を言うならば、学校へは行きたかったけど、怖くて行けなかったんだ。
行けばまた、あいつが笑いながら俺を殴って蹴り上げるに違いない。
平気でそういうことが出来る人間なんだ。
なんてことを考えては外への恐怖心が膨れ上がり、俺は知らない間に”引きこもり”という名の社会不適合者に陥っていた。
これも全部、鬼塚のせいだっ!
あいつさえいなければ、俺は今ごろ普通の会社員で、可愛い嫁さんと子供でも居たのだろう。
でも、目の前にある光景は、あの頃抱いていた夢とは違う。
部屋の中に積まれている大量のマンガ雑誌。それから飲み終えて空っぽになったジュースのペットボトルが何本も床に転がっている。
父さんや母さんに会わせる顔が無いからと……捨てられなかったゴミ袋が何個も溜まっている。
「もう無理なんだよ……」
ひとり、そう呟くと。
自室の扉を開いて廊下に出る。
二階から階段を降りる途中で、自身のパーカーが捨てられていることに気がつく。
それを手に取り、羽織ると一階の玄関にたどり着く。
居間から笑い声が聞こえてきた。
きっと父さんと母さんがテレビを見ているのだろう。
もう、二人とも70代だ。まだ元気だとはいえ、早く安心させてあげたい。
でも、アラフォーの俺が37歳から一気にリア充へと変われるのだろうか?
無理だろう……。誰かに聞かなくても分かり切った答えだ。
そんなことを考えながら、ボロボロのシューズを履く。
全身、グレーのパーカーとスエットで外へ出ると、冷たい風が吹き抜けてきた。
そうか……今はお正月。冬休みってやつか。
だからこんなに外が寒いし、人も少ないのか。
でも俺みたいなヒキニートが外を出るには、うってつけかもな。
長年、引きこもりだった俺もここ数年でようやく外へ出られるようになってきた。
それは”怖い存在”が消えたからだ。
鬼塚 良平という憎い人間が、地元から引っ越したと母さんから聞いた。
就職して結婚した、あいつは東京へ旅立ったらしい。
俺をボコボコにしたヤツがリア充になって、ハッピーだと?
お前の周りがどう思っているか知らないけど、世界中で俺だけはお前を絶対に許さない。
この手で殺したいほどにな……。
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