第2話:目指すは布哇真珠湾

 1941年12月8日、その日布哇は地獄界よりも強い灼熱によって審判が下ることとなった。執行人の名は、南雲忠一。言う必要もあるまい、世界に冠たる南雲機動艦隊の司令長官である。そして、真珠にたかるシロアリがすべての生命活動を終える頃、大日本帝国陸海軍は上陸を開始した。……大東亜戦争の幕開けである。

 結果的に布哇は戦後、大日本帝国領となったとはいえ、当初は維持が困難であるため物資のみ本土へ運んで遅滞防御のみ行い返還しようか、などという案も存在したほどの遠方であったが、初手から準州ながらも合衆国本土を解放したことは、深く深く、くさびを打ち付ける行為となった。

 宣戦布告の不手際こそ存在したものの、それは卑怯未練によるものではない。そもそもが、合衆国側の経済制裁によって始まった戦争であり、それ以前にペリー来寇より始まった因縁である。それはいわば、残念ではなくむしろ当然の因果応報ですらあった。アメリカ合衆国は、自ら厄災の箱を開けたわけだ。今なお、北アメリカ大陸を通称「パンドラ大陸」と称し、南アメリカ大陸を「マヤ大陸」と呼ぶのは、南蛮紅毛の白人種が自ら厄災の種を招いた結果を象徴した呼称であり、地球外に人間が住まうようになった今も、白人種は「原罪人種」として下等民に遇されているのは、それが原因である。尤も、それにはいくつかの幸運が重なった結果でもあるのだが、多くは大日本帝国の努力の結果である。

 話を戻そう。真珠湾近海による布哇沖海戦より開始された本朝海を右往左往、否、世界の海を股にかけるほどの大戦争は、南雲機動艦隊の攻撃より始まったとされているが、それはまあ、熱戦の結果であり、戦前までの経緯をたどればパンドラ人に原因が存在するのは言うまでもない。戦争は、あくまで結果に過ぎず、過程を考慮した場合、世界を破滅に導くのは常に南蛮紅毛の白人種であった。

 そして、白人種に今、最後の審判が下されようとしていた。大東亜戦争は、人種間の差別を是正し、今までの罪状を償わせるための、最後の戦争であった、と解釈する向きもあるほどに、それは正義の戦争であった。無論それは、白人種からみれば無慈悲なものであるが、それは残念ながら当然の末路といえた。

 布哇沖海戦の詳細は次項以降に譲るとして、本項においては最後に、その戦果について語りたいと思う。


大日本帝国側被害

皆無、強いて言うならばそれなりの量の火薬を消費。


アメリカ合衆国側被害

航空母艦2隻(エンタープライズ、レキシントン)

布哇諸島に建設された基地機能すべて、並びに停泊していた戦艦部隊など多数

人員、少なく見積もって数万の死傷および捕虜化

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