第10話 うまい肉

彼女と別れ大草原へ。はあ、気力が落ちたが仕事は仕事、やらなくては。引き続き狩りをしているとレベルが上がった。レベル3、コスト12、新しくカードが増える。今回も禁止カード、強力なカードだ。やはり増えるのは禁止カードだけのようだな。強いけど目立つから扱いが難しい。そして最弱の英雄もパワーアップ。


「強くなった気がする!」


数値は300、これならキバ鳥を倒せるかも。強化が一体目は敗退、そして二体目。お互い傷を負う死闘、最後はキバ鳥の胸に剣を突き立て最弱の英雄の勝利。


「やったー、初勝利だ!」


その後も勝ったり負けたり。英雄が強くなったことだし一段階上の狩場で戦おうかな。負けてカードに戻らないと強くならないんだよね。勝ってもすぐ負けるから後が戦いずらい。狩りを終えギルドで精算。そうだ、ドーレさんが捕まったから借金の返済はどうなるのかな。いやそもそもよく考えると恋人ってだけならドーレさんは釈放されるのでは。悪さをしたわけではないよな、悪い男に引っかかっただけじゃないか。テーブルに座り休憩しながら考え事をしていると、向かいにマイアさんが座り話しかけてきた。


「アル、先ほど件の報告だ。報酬代わりといってはなんだがこの後奢るからついてきてくれるか」

「いいですよ」


盗難の話だな、マイアさんの後をついていく。高そうな料理屋に入っていく。彼女と同じものを頼む、食前酒を飲みながら話をする。


「実はこの前宿屋の前でアルに声をかけたのは偶然ではないんだ」

「どういうことです?」

「どうやらドーレが犯罪に手を染めていたようでな」


まずは悪行の全容。ドーレさんがターゲットを決める、新人でこの街に昔から住んでいない他所から来た者、PTに呼ばれにくい者を彼女が厳選していく。妙に詳しく聞いてきたのはそういうことか、てっきり挨拶と世間話的な会話だと思っていたが。次にターゲットを男に伝え盗ませる。そしてカードを作るときに借金させる。


「再発行は500で済む」

「えー! ああ、なるほど。マイアさんは俺から情報を引き出そうとしたんですね」

「ああ、それで宿屋前で待ち伏せていたんだ。しかし4000と聞いた時は驚いたぞ」


本来は500か、3500も上っ面をはねていたなんて。犯罪ってのはこれか。彼女もがっつり悪行に手を染めてたんだな。彼女にはがっかりした。魔物退治大丈夫って心配していたのも俺が死ぬと金にならないからかな、あー、腹立つ!


「捕まってよかった。後から分かったことだが今回の件はかなりの問題になっていてな」


最近、新人が辞めてしまう人数がいつもよりも多くなっていた。調べていくとドーレがおかしな動きをしているという情報を掴む。俺の借金話で架空の借金を作っていたのはわかった、後は盗みの実行役を捕まえる。配置を決め、今日は予行練習をしていた職員達。そして偶然俺が盗人を見つけた。現場にいて言い逃れができない証言も自らその場でしてしまった。そうか、それで妙に連携が取れていたんだな。はは、捕まるのは時間の問題だったな。捕まえてわかったが、どうやらかなり前から犯行に及んでいたらしい。年単位で、その数は数十人をくだらない。調べを続けるともっと増えるかもとマイアさん。辞めてしまった人間が多いのは集金ペースを上げたからのようだ。もし欲を出さず少しづつならずっと見つからない可能性もあった、ということを考えると非常に恐ろしくなる。


「盗難届は出してなくて個人の紛失としていたから発見が遅れてしまった」


届け出るって言ったのに、新規だと受付の話を信じるしかない。お金を返し終えたところで冒険者をやめ故郷に帰ってしまう者が多かった、これも発見が遅れた理由の一つ。この場合あの盗賊がかかわっていて手口は最悪、トドメとばかりにもう一度カードを盗むのだとか。それは心が折れるな。お金以上に最終的に何十人もの新人の未来を奪った罪は重い。


「当然これからは借金の返済をしなくていいぞ」

「わかりました」

「それからある程度取り戻せたぞ」


金袋を俺に渡す。結構入っている、ありがたい。


「さあ、面白くない話はここまでにして食事を楽しもうか。好きなだけ食べていいぞ」

「遠慮しませんよ!」


運ばれてきたのはうまそうなステーキ。ギラギラと金色に輝く派手な肉。


「味が評判の黄金豚のステーキだ。高いから私もたまにしか食べないがな」


ナイフが豆腐を切るようにどこにもぶつかることなくすっと入って切れた。フォークで突き刺し恐る恐る口の中へ。


「こ、これは!」


口の中で一瞬にしてとろける、それでいて心地よい食感と強い旨味を感じる。こいつはうまい、現実世界でもこんなおいしいものは食べたことがない。これだけでもこの世界に来てよかったと思えるほどに。


「おかわり!」


ステーキ三枚をぺろりとたいあげる。本当は遠慮するつもりだったがあまりのうまさに俺の社交性は吹き飛んでいった。ごちそうさまでした!


「ではな」


かなり精神的ダメージを負っていたが、マイアさんのやさしさと肉がかなり吹っ飛ばしてくれた。食事って大事だな。よーし、いつかは毎日この肉が食えるくらいのカード使いに!

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