十回目のマリナー
鵙の頭
第1話
ゆっくりと搭乗する君を待つ。
「
そうやって君は、冗談交じりに私を和ませる。
「お前待ちだよ。早くしろ」
少し微笑みながら私は、君の冗談にそう返した。
「もー、せっかちなんだから」
マイペースな君の性格はいつも私を助けてくれる。今までそれに果たして何度助けられたか分からない。しかも君はただマイペースなだけでなく、人も思いやれるいい子だ。
片足と片腕だけで器用に体を移動させて、君は私の後ろの操縦席に収まった。それを確認してから視線を正面に戻し、メインエンジンを立ち上がらせる。激しい振動が始まり、私達を覆うように置かれているいくつものモニターが順番に点灯していく。
「ねぇ水星」
「なんだよ
君の声は高く透き通るようで、これだけ振動が来ているというのに不思議と私の耳に届く。
「突然ですが、問題です! デデン!」
君はいきなり大きな声でそんなことを言い出した。
「はぁ? んだよそれ」
「明後日は私達オフなわけですが、私は何をしたいでしょーか!」
唐突だ。彼女のこういうところは本当に読めない。これも場を和ませるためなのだろうか。……いや、ただの思いつきって気もする。
彼女が何をやりたいか。大体こんなことを言い出す時というのは、甘えたい時なのだ。そういうのはもう、いつも一緒にいるから何となく分かる。
「デートだろ」
彼女が身を乗り出したのが後ろからの振動で分かった。
「ピンポンピンポン! 大正解!」
それだけ耳元で大声を出されると流石にこの振動でも聞こえるな。声が綺麗なこととあまり関係なく。そんなことを思っていると管制局から通信が入った。
「それでは第二問!」
「何問あるんだよ。通信入れるぞー」
「待って待って! これで最後だから!」
私が応答しようとすると君は必死にそれを制止する。そんな姿が少し愛おしい。
「えー? まぁいいよ。で、問題って何?」
激しい機械音の中、有機的な君の声はハッキリと私の耳に届く。
「――明日、世界が終わるんだって」
それだけで私は、人間だって思える。君と私は人間なんだって、実感できる。
「知ってるよ。だから行くんだろ」
管制局からの通信を受け取る。
『こちら管制官シナノ。少し応答が遅かったみたいだけど、大丈夫?』
「何も問題ないよ」
『了解。では、発射準備を始めるわね』
モニターに景色が映る。見えるのは発射装置と、遥か外に見える月だけ。
「パイロット、斎藤水星。準備完了」
「オペレーター、斎藤金星。同じく準備かんりょー」
『確認しました。こちらも発射準備完了。
――対異星生命体用戦闘兵器マリナー。発進』
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