第5話 ギフトの奇跡

 嵐の爪痕が色濃く残る村で、リクは相変わらず周囲の人々を気遣っていました。しかし、彼の家にも食べ物はなく、どうすることもできない日々が続いていました。それでも、リクは祈ることをやめませんでした。心のどこかで、自分がこれまでに行ってきた親切が、いつか村を救う力になると信じていたのです。




 そんなある日のことです。リクの家の前に、一人の旅人がやってきました。その顔を見たリクは、驚きの声を上げました。


 「あなたは……あの時の!」


 その旅人は、リクが森で最後のパンを渡した年老いた男性でした。旅人は手に大きな袋を抱えています。その袋の中には、米や乾燥した果物、パンなど、たくさんの食べ物が入っていました。


 「リク、君のおかげで私は遠くの村にたどり着き、仕事を見つけることができた。そのお礼がしたくて、こうして戻ってきたんだ。」


 旅人の言葉に、リクの目には涙が浮かびました。あの日渡した小さなパンが、こうして形を変え、何倍にもなって戻ってきたのです。


 旅人はさらにこう続けました。


 「この食べ物は君のためだけじゃない。君が助けたみんなにも分けてあげてほしい。」


 リクは感謝の気持ちでいっぱいになりながら、旅人の持ってきてくれた食べ物を村の広場に運びました。そこに集まった村人たちは、その光景を見て、最初は驚いた表情を浮かべましたが、やがて次々と声を上げ始めました。




 「あれ? あの旅人、確かリクが助けた人じゃないか?」


 「そういえば、この前リクに薪をもらったとき、ずいぶん助かったな。」


 「私もリクに助けられた。そうだ、私が持っている蜂蜜を分けてあげよう!」




 こうして、リクがかつて助けた人々が次々とリクのもとにやってきました。


 森で薪をもらった隣人は、自分の家に保存していた蜂蜜をリクに差し出しました。その蜂蜜は嵐の被害を受けることなく、大切に守られていたものでした。


 また、リクが荷物を運ぶのを手伝ったおばあさんも、自分の畑で育てていた少量の野菜を持ってきました。


 「リク、あなたの優しさに助けられた恩を忘れることはないわ。この野菜をみんなで分けましょう。」


 さらに、以前リクが泣いていた子どもを励ました家族は、残っていた米を少しずつ持ってきました。




 村の広場には、次々と人々の「感謝の贈り物」が集まっていきました。その光景を見たリクは、胸が熱くなりました。


 「ぼくがしてきた小さなことが、こんなふうにみんなの助けになったんだ……。」


 その日から、村の人々はリクの影響を受けて、互いに助け合うようになりました。食べ物を持ち寄ったり、家の修理を手伝ったりと、村全体に優しさの輪が広がっていったのです。




 しかし、それだけではありませんでした。リクに恩を感じた旅人たちは、さらに大きな助けを持って戻ってきました。遠くの村で働いていた人々が、物資や薬、さらには家を修理するための道具を持ってきてくれたのです。


 ある日、リクの家に、以前彼が雨の日に泊めた旅人が訪れました。その旅人は、大きな荷車に山積みにされた小麦粉や塩、油を持ってきてくれました。


 「リク君、君があの日家を開放してくれたおかげで、私は元気を取り戻すことができた。今度は私が君の村を助ける番だ。」


 その言葉を聞いたリクは、何度も「ありがとう」と言いました。




 やがて、村は再び活気を取り戻しました。嵐で失われた作物の代わりに、他の村から持ち込まれた種を植えることで、新たな収穫の希望が芽生えました。村人たちはお互いを助け合い、以前よりも強いつながりを持つようになりました。


 リクはその中心に立ちながら、思いました。


 「助けることが好きだからと続けてきたことが、こんな形で村全体を救うなんて……。」


 その瞬間、リクは森の泉で聞いた言葉を思い出しました。


 「心を込めて与えたものは、形を変え、何倍にもなって戻ってくる。」


 リクの与える心は、確かに村全体に広がり、見えない形で巡り巡って、リク自身を助けていたのです。




 こうして、小さな村に再び笑顔が戻りました。そしてリクの「与える心」の物語は、村の人々によって語り継がれるようになったのです。


 リクはこれからも、誰かを助け続けるでしょう。その心は、まるで金色の泉のように、輝きながら広がっていくのです。

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