第29話
聞き覚えのあるその歌声は
繁華街のビジョンに映っている人物からで。
ラブストーリのようなバラード曲。
Timezの曲だ。
カタチあるものはいつか無くなる
そんな切ない歌詞。
『、、、、』
言葉が見つかんない。
「ごめん、困らせちゃったかな」
『そうじゃなくて、、、』
「まだ早いって思ってたし、
陽茉の事わかってるつもりだったけど
このままなんて、やっぱり出来ない」
優しい眼差しの光輝。
私だって、このままだなんて思ってない。
前に進みたい気持ちと、光輝の事も好きだ。
ただ、過去の恋愛がチラついて、
まだ前に進めない。
中途半端に出来ない。
好きだけど、大好きって気持ちには
まだなれてない。
これが恋なのかも、まだわからない。
告白が嫌なわけじゃない、嬉しいよ。
でもそれが恋愛になるのが少し怖い。
今の私は何もかも中途半端で。
向き合える時間もない。
『ごめん』
傷つけたいわけじゃない。
こうやって、真剣に向き合ってる光輝に
中途半端な気持ちは失礼だ。
『まだ、ごめん、前に進めない。光輝が嫌いとかじゃない、今余裕なくて、、、、』
「そっか。」
残念そうな、切なそうな光輝の顔。
ごめんなさい。
「帰ろうか」
家についても胸が痛くて。
何度か光輝にlimeを打っては消して。
『今更何を言いたいのよ』
自分に腹立たしい。
キラリと光るキーホルダー。
ブラブラしてるそれを眺めて再びため息が出る。
恋ってなんだっけ。
愛ってなんだっけ。
いくら考えても答えなんて出ないのに。
これでいいんだよね。
イムスタをそっと開くと
美優が今日の4人を投稿していて。
そこに映る、私も、光輝も
とっても笑顔で。
はぁ
次の投稿は
ao.komiya
スター碧の呟き
悩まなくていいよ、ただ笑ってほしい。
文字だけなのに
胸が痛い。
このままがいい、はわがままなのかな?
昨日の出来事を美優に話て、美優は
「ひーちゃんが決めたんだから、美優はそれでいいと思うよ」
私を責めない。
光輝との関係がこれで崩れるかもしれないけど
曖昧な事はできなかった、
大切な存在だからこそ。
『お疲れ様です』
何かを忘れるには、
何かに没頭するのが一番だ。
『今日も頑張ります!』
いきなり声を上げた私に
なに言ってんだ?って顔の碧と
お、おん!って一緒にガッツポーズの竜一さん。
ふんふん鼻息荒目の私はまたTimezから始まる。
今日の撮影は雑誌のインタビューと撮影だ。
「お疲れちゃん」
メイクの林さんと挨拶を交わす。
メイクをテキパキとこなす林さんが
「陽茉子」
陽茉こ????
『あ、あたしですか?』
「あんた以外誰がいるのよ」
子はいらないんだけどな。
「あんた、何その顔?」
『えっ?』
「ひどい顔してるわよ、最近何かあったの?」
「陽茉ちゃん、何かあったの?!」
なんだ、なんだって乗り出している竜一さん。
『なんもないですよ!』
「あんた、女の癖に顔が終わってるわよ!
メイクのノリにも気持ちが現れるのよ!」
バッと顔押さえて見たものの
自分ではよくわかんない。
ちらっと鏡越しに碧を見てみたら
どうでもいいって顔で携帯をいじっている。
くそぉ顔整ってるな、、、。
スタジオ入りして
まずは撮影に入るので私は備品などの準備に
追われていた。
「はーい、最高二人ともこっちみて、ほら、いい!その顔」
パシャパシャとフラッシュの光が飛びかう中
シリアスな顔の二人がカッコよくポーズをとる。
芸能人てすごいなぁ。
色んな表情出来るし、尊敬でしかない。
「お疲れさまです」
長い時間の撮影が終わって
すぐさま、インタビューが入る。
ブツブツ言ってる碧がいたので不思議そうに
していたら、竜一さんが隣にきた。
「ああやって、碧はいきなり歌詞が出てくるんだ。」
『へぇ〜、大変ですね、作詞って。』
「いきなり思いつくフレーズだとか、その場の雰囲気だとか、
その場で書かないと忘れちゃうんだって」
『すごいですね』
「でもちゃんとした作詞は自分の家の作業場しか作らないんだよ」
『こだわり、ルーティンなんですね』
「そうそう、でもあいつが作る、
歌詞も音楽もすごくいいんだ。
独特の世界観と、
ほんのちょっとあいつの闇も隠れてて、
多分この世で一番のファンは俺かもしれない」
ニヤっと笑った竜一さんはとても、
かっこよかった。
少し照れくさそうな竜一さんは、
とっても碧を尊敬していて信頼している。
いいコンビだな。
私まで嬉しくなった。
そう人を思させる、
小宮碧はやっぱりトップミュージシャンだな。
『私もファンです』
クスクスと二人で碧を見つめる。
インタビューが始まってその後ろで私は片付けを始める。
「では、小宮さん、杉原さん今日はよろしくお願いします」
「「お願いします」」
「もうすぐ、大きなツアーが始まるようで、どんなツアーになるんですか?」
「そうですね、今回は大きなドームツアーでして色んな方に会えるように
色んな所を回るつもりです、
また大き場所なので色んな人が来ていただけるように楽しみにしてます」
碧が淡々と話している。
「今、最も人気のTimezのお二人は、女性のファンがすごい多いですよね?
恋愛の歌も書いていますが、
小宮さんの実体験も入っているんですか?」
「え、僕のですか?笑いや、まぁそれは、
実体験もあるかもしれないですが
こう慣ればいいなっと
思う部分もありますね笑
それは聞く皆さんが
ご想像していただき楽しんでもらえれば笑」
「なるほど、インタビューしている私がドキドキしました」
わははとスタジオの中のみんなの笑い声。
「客観的に書く歌も多いです。
例えば、人にどう思われるかなど
どう思っているかなど、
人によって感じ方も違いますしね」
「素晴らしいです」
「ただそれを、歌詞に乗せて歌う奏でる、それが出来るのは竜一と一緒に奏でることで、
Timezになるんです。
僕一人では絶対に届けれない」
うんうんと竜一さんは相槌を打つ。
「女性だけが聞くと言うか、色んな人が色んな感情で僕たちの歌を聞いてくれれば
作った僕はとっても嬉しいですね」
「ありがとうございます。」
「では、最後に、みなさんが一番聞きたいであろう、質問いいですか?
新曲はバラードではないですが、
どこか切なそうな小宮さんが
話題になってますが
今もしかして、恋なさってるんですか?」
「ええそんな質問が来ると思ってなかったです笑」
「よのファンの女性はみなさん気になってますよ、ほらうちの雑誌は
女性が見るのが多いので笑」
「いや〜ぶっこみますね、
よく僕は切なそうな歌声だとか、闇を感じるだとか言われますけどね笑
そうですね、先ほども言いましたが、
聞いた方がご想像でき、
楽しんでいただけるように、
皆さんの想像にお任せします笑
是非次のツアーに足を運んでもらい
確かめて欲しいですね」
「わー見事にかわされてしまいました。
では読者の皆さんの想像に任せると言うことですね、皆さんチャンスです、
あなたの事を思って
歌っているかもしれませんね、
ツアーで是非確認しましょう。
さすがです、ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
パチパチとスタジオ内に拍手が湧き
二人ともぺこりとお辞儀して
スタジオを去る。
さすがスター。
インタビューも完璧じゃん。
小宮碧の実体験か。
歌詞に込められた想い。
碧は恋愛してるのかな。
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