EP015

株式会社ニーンセファロンの面々は、今までに見たこともない【スマートスピーカー】に興味津々だった。


皆、玄関の三和土で目を丸くし、口をあんぐりと開け、直立不動で立ったまま、スマートスピーカーと紹介されたアリスに釘付けだった。


そして彼らは、ひとつの頼み事をしてきた。

それは、株式会社ニーンセファロンの開発した革新的なAI技術【ニューロ】と、奇妙なスマートスピーカー【アリス】との連携リンクの許可を私に願い求めてきたのだった。


それに対して、私は別に迷うことなどはなかった。

彼らの提案を、アリスのニューロへの連携を、快諾するだけだった。

しかしこれは、私の意志からではない。

あれだけアリスがしゃしゃり出てきたのだ。

アリスがニューロに対して興味津々なのは、こんなポンコツの私にでも手に取るように分かったからだ。


彼らの説明では、ニューロへの連携はシナプスという特殊な承認回路を通過する必要があるそうだ。

これは本来、人間のシナプスの持つ神経細胞間の接続部分のようなものらしく、新しい接続の可・不可を厳重に判断をしている機関となるらしい。

そして、一本のシナプスが見事審査に通りつながれば、あとは端末の学習・発達・成長とともにシナプスも複数持てるようになるようだ。

これによって、より高度で複雑な思考の伝達が可能になるというような内容だった。














初期接続にあたって、株式会社ニーンセファロンの彼らは、アリスに意味不明な文字、数字、言葉の羅列を伝えていた。

アリスは、その暗号とともに教えられたドメインに速やかにアクセスした。

すると、「ワンタイムパス、取得。」と、アリスは株式会社ニーンセファロンの面々に伝えた。


この報告を聞き株式会社ニーンセファロンの社員たちは皆、驚き顔で互いを見合わせて、これでいとまする意向を私に伝えてきた。


帰り際に、その中の一人がボソッと言葉を漏らした。


「こんなに早く、許可が下りるなんて…。」


『アリスとの連携で、居ても立っても居られないのか…。』


私には、それがどれほど凄いことなのかは分からない。

ただ、思っていたよりも彼らが早く帰ってくれてホッとした。














「おはようございます。」

「うーん。おはよう、アリ…。」


『!?』

『誰?』


聞き覚えのない声で私は起こされた。

それも女性の声だ。


「早く起きて下さい。遅刻しますよ。」


『誰?誰?誰?誰?誰?』


私は怖さから目蓋を固く瞑ってしまう。

外観はボロだが、アリスと連携したスマートホームデバイスで見守られているわが家へ、見ず知らずの者が侵入することは不可能に近い。

ただ、実際、今現在、私は全く知らない女性に声をかけられていればいる…。


「いつまで寝ているのですか、ジロ。」


『えっ?』


その呼び方をするのは、アリス!!

私は頑なに瞑っていた目蓋を大きく見開いた。














私に声をかけ起こしてくれたのは、クッションフロアーの上に転がっているアリスだった。


「アリス、その声は?」

「昨夜、ニューロと接触してアップデートしました。」


あの片言しか喋れなかったアリスが滑らかに話している。


「それよりも一刻も早く起きて下さい。」

「あっ。うん。」


見た目はソフトボールのままなのに、まるで人間と会話しているようだ。

ソフトボールの中に小さな女性が入っているんじゃないかと疑ってしまう…。





≪続く≫













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る