HAPPY DAYS ~居残り組と奇跡の9日間~
くるみしょくぱん
1話 Musings:ひとりごと
中井 心愛(なかい ここあ)。
絶望的にコミュニケーションが苦手な女子である。
そのせいで、
心愛は保育園でも小学校でも、
友人ができなかった。
夢中になれる趣味もなかった。
周りからは暗い子だと思われていただろう。
そんな心愛の
人生が動き出したのは小学2の時だ。
きっかけは、
クリスマスプレゼントに買ってもらった
絵具セットだった。
心愛は描くことにハマり、
少しでも時間があれば筆を取るようになった。
絵画教室にも通わせてもらった。
中学2年になった頃、
心愛の絵がコンクールで金賞をとった。
お父さんとお母さんが喜んでくれたので、
心愛はとってもうれしかった。
少し話が変わるようだが、
心愛には憧れている男子がいる。
名前は佐藤くんという。
サッカー部のエースで、明るく気さくなイケメンだ。
中学3年の春。
誰もいない放課後の教室で、
心愛が絵を描いていると、
ユニフォーム姿の佐藤くんが入ってくる。
彼のあたまや首すじから流れる汗はツヤツヤで、
すごくエロかった。
心愛は、うほー、と興奮する。
佐藤くんが
心愛の席までやってきた。
「ねぇ。中井さんて、
絵すごくうまいよね」
心愛はまた、うほー、と興奮した。
佐藤くんは、
声まで透き通るさわやかイケメンなのだ。
「え、え・・・っと、あの・・・」
心愛の発した言葉は、
高音を出そうとするアイドルみたいにうわずって気持ち悪かった。
「高校でもさ、絵を描くの?」
佐藤くんの言葉を聞いた心愛は、
生涯を絵画にささげたゴッホを思い浮かべた。
そうして、「絵はこの先もずっと描こうと思っています」と伝えようとして、
「私は・・・ずっと前からゴッホです」と自分をゴッホの生まれ変わりと
勘違いしている中二病のような台詞を口走ってしまった。
佐藤くんは、「ふーん・・・ふぐっ!!」と言ったまま
肩をガタガタと震わせ始めた。
ややあってから、彼は目尻をぬぐい、
教室を後にした。
たったそれだけのことだったが、
心愛はかんぜんに恋に落ちた。まっさかさまだ。
心愛は、佐藤くんが離れた高校へ
スポーツ推薦で進学するウワサを耳にすると、
そこへの進学を決めた。
トーゼンのことながら、
お父さんとお母さんはとても心配した。
しかし、普段からほとんど自己主張しない心愛の
切実な思いを尊重してくれたのだった。
恋に有頂天になったゴッホの生まれ変わりで中二病の心愛は、
ろくにその後のことを考えていなかった。
いま思えば、
もう少し考えれば良かったのだが。
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