第8話【初詣】

「3、2、1…ハッピーニューイヤー!」


テレビから聞こえてきた音と共に年が明けた。

あけましておめでとうと母と挨拶を交わした。

正月という事もあり、夜更かししようと思い漫画を読み始めた。するとカズからメッセージが届いた。


「あけおめ!今暇?」

「あけおめ、漫画読んでる。」

「暇なら丁度良かった、初詣行こーぜ。」

(暇とは絶対言ってないぞ。)

「了解。」


家まで迎えに来てくれたカズと共に自転車に乗って、神社に向かった。


「結構人多いんだなぁ。」

「ハルー、屋台も出てるぜ!」

「よっしゃ、いくか。」

「せっかくだし御参りして行こうか。」

「そーだな。」


僕はカズと参列に並ぶ事にした。


「それでハル君よ、デートはどうだったんだ?」

「ニヤニヤすんな、別に普通に楽しかった。」

「その感じだと上手くいったんだな、付き合ったりすんの?」

「そんなんじゃねーよ、ただ買い物に付き合っただけだ。」

「そうなのか?鈴華ちゃんはハルに気があると思うんだけどなあー。」

「それはないだろ…ちょっと待て、俺鈴華と行くなんて言ったっけ?」

僕は驚きを隠せず聞いた。

「マフラー。ハルが欲しがってるって俺が鈴華ちゃんに教えたんだぜ。」

「な…はぁ、そーゆー事かよ。」

カズにからかわれるのは妙に悔しかった。

「で、鈴華ちゃんの事は好きじゃねーの?」

「分からん…けど実は俺前から好きな人いるんだよな。」


僕はカズの事を1番仲の良い友達だと思っている。だからこいつになら自分の本心を言ってもいいかもと思ったのだ。後は多分深夜のテンションに流されたのだ。


「俺がずっと好きなのは小白結凪って子なんだよな、ほら前恋バナした時にいた…。」

「まじか!全然気づかなかった。てかなんで急に教えてくれるんだよ!」

「うるせぇ、なんとなく話たくなったんだ。」

「それは嬉しいなあ…あれ小白さんって確かサッカー部の奴と付き合ってたんじゃ?」

「最近別れたらしいぜ、あっ、言っていいか分かんねぇけど。」

「まじか!じゃあチャンスじゃん!」

「俺もそう思ったんだけど、まだ未練あるっぽいんだよなぁ。」

「そうなのか…でも諦めねぇんだろ?」

「勿論!」

「いいじゃん!それでこそ俺の親友だ!」


人に話すと案外気力が湧いてくるもんだな。それに普通に楽しい、男同士の気を遣わなくていい会話は心地いい。しかし、カズは何かを気にしているように笑う。


「どうかしたのか?」

「いや、別に。それより小白さんのどこが好きなんだ?」

「どこって…難しいな。笑顔とか声とか表情とか…かな。」

「全部見た目じゃねーかよ。」


真面目に答えろよと言わんばかりの呆れた顔が僕に向く。

(そう言われるとそうだな。結凪の事が好きだといいながら、彼女の事を全然知らない。)


「もっとあいつの事知りたいなぁ。」

「本気で好きなんだな。」

「んー。」


僕は照れてマフラーに顔をうずめた。

その後参拝を済ませておみくじを引いたり、屋台を回ったりして楽しんだ。


「せっかくだし日の出見ていくか!」

「はぁー?寒いし帰ろうぜ。」

「ハルー、どうせ暇だろ?それにもう人呼んでるから。」

「ん?誰か来るのか…」


言いかけた時遠くから声がした。聞き覚えのある声だ。


「あけおめー!」

「鈴華か、後…水瀬もいるな。」

「呼んでおいたんだよ、退屈せずに済むようにね。」

「みんな暇してんだなあ。」


あけおめ、ことよろ、という年始の呪文を唱え終わり日が昇るまで談笑していた。


「晴空何持ってんの?」

「ベビーカステラ。」

「美味しそう!1個頂戴!」

「はいはい。」


僕は袋からひとつ取り出し、鈴華の口元に持っていった。鈴華はそれを食べると僕の肩を殴った。意味が分からん。


日の出を見るとなれば場所は海岸沿いだろう。僕らの他にもぞろぞろと人が集まっていた。だからだろうか、無意識に彼女を探してしまうのは。


「人多いの好きじゃないんだっけ?」

「まぁ、視界に色んな物が入ってくる感じが好きじゃない。」

「見なければいいのに。」

「勝手に入ってくるんだよ、なんせバスケットプレーヤーだからな。」

「うわ、うざっ。」


などと話してる内に日が昇った。

ピピッ。パシャ。カシャ。次々とシャッター音が聞こえてくる。それと謎の拍手と口笛。

僕が考えていた事と言えば、せいぜい彼女に関連する自分の感情だ。こういう景色を見たり、周りとの反応のギャップを感じる度に思う。いつもそうなのだ、同じ物事を経験しても僕は人と比べて感動が少ない気がする。単に感情が欠落しているのか、感情を上手く表現出来ないのか。そんな事を真剣に考えながら初日の出という行事を終えた。

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