第2話【コイバナ】

「えっ!いるんだ!誰!?」

僕が好きな人がいると告白した数分後に鈴華から返信が来た。


「俺も内緒」

「じゃあ当ててあげるよ!」

「勝手にどうぞ」


僕は少々ずる賢い作戦を思いついていた。

(鈴華は俺の事をモテ男くんと言ってたな。ということは少なからず俺に好意を寄せている女の子がいるということだ。多分あいつは自分の予想した女の子を言い終わったら本命が出てくるはずだ!)

勝手にどうぞなどと無愛想な態度とは裏腹にまたも高揚感が僕を支配した。


「んー、同じクラスのカナちゃん!」

「なんで水瀬?」


本来ならここで違うと断言すればいいものを自分のモテ度のようなものが知りたくて、理由を尋ねた。言ってしまえば気持ちよくなりたいのだ。


「だって教室でもよく話してるじゃん」

「たいていは委員会の事とかだけどな」

「でもカナちゃん晴空の事かっこいいって言ってたよ」


ベッドに寝転がり、気が付くと口元までも緩んでいた。しかし喜んでいるなどと悟られないように興味のないフリをした。


「そうなんだな」

「えー、違うの?」

「違う」

「まじかー!結構自信あったのになあ〜」


(言い方的に俺に好意を寄せてきている女の子の話ではないな)

ふいに時計に目をやると23時を過ぎていたので、今日はもう寝た。

次の日。教室に向かう途中で今日も彼女が視界に入る。2年4組の小白結凪が。(今日も可愛いなあ)などとお花を咲かせていると、月城も視界に入ってきた。咄嗟に出かけた舌打ちを堪え、僕は5組の教室に重くなった足を運んだ。


「おはよー!昨日の話の続きしよ!」

「鈴華、朝から元気だな」

「晴空はテンション低すぎるよ」

「これが標準だ、後昨日の話は急すぎて驚いた」

「ふふん!慌てるかなと思って送ってみた!」

「勘違いするからやめてくれ」

「案外勘違いでも無いんだけどな〜」


そんな無駄話をしている内に朝の不快感は消えていた。(たまに鬱陶しいけど、今回は感謝だな)と思ったのもつかの間、すぐに好きな人は誰だと質問責めを食らった。

14も歳を重ねると「恋バナ」というやつに興味を持ち始める男女は少なく無いわけなのです。ましてや女子なんかは四六時中その話題で盛り上がっているだろう。ここだけの話実は僕もその手の話は好んでいるほうだったのだ。そんな14の男女4人で昼休みにお弁当を片手に恋バナをする事になった。


僕はいつも通りカズ(島 和斗)と昼休みにお弁当を持ち寄っていた。すると、そこにご機嫌な足音がこちらに向かってきた。


「おふたりさん!ご一緒しても〜?」

「なんだ鈴華か…と水瀬?」

「神田くん、私も一緒にいいかな?」

「全然大丈夫だけど、カズは?」

「もちろん大歓迎さ!」


こうして、僕と鈴華と水瀬とカズの4人で昼食をとる事になった。

(しかし、昨日の話で話題に上がった水瀬もいるのはなんだか気まづいな。平常心で頑張らないとな。)

などと考えていると、鈴華と目が合った。途端、なんともイタズラ心満天の目線を僕に送ってきた。(やっぱりあいつの差し金かよ)


「それじゃあ早速始めましょうか」


鈴華が切り出した。僕は物凄く嫌な予感がして、めんどくさそうに返した。


「何を?」

「ハル、男女が集まればする話なんてひとつだぜ」

「流石カズくん!察しがいいわね」

「はぁ、やっぱり。水瀬は平気?」

「え、うん。私も興味あるかも」


水瀬は少し照れながら、自らの好奇心をにおわせた。(仕方がない。ここは頑張って乗りきるか。)

話題は異性のタイプというなんとも曖昧で抽象的なもので進んでいった。まずはカズからだ。


「俺は元気で、目が大きくて、可愛い子がいいなあ」

「(なんだその天使みたいな超人は)最高だ…」

「顔の事しか言ってないじゃん、ほんと男子って」

「神田くんもそうなの?」


当たり前だろ。可愛い顔は正義だ。それに適うものなどあるわけない。と言いたい所だが、流石に印象が悪くなるのは避けるべきだろう。


「そんなわけないだろ。こいつと一緒にするな」

「ふーん、怪しいわね」

「(うっ、)そういう鈴華はどうなんだよ?」

「私?私はノリが良くて面白い人がいい!」

「鈴華ちゃんも相当無茶な事言ってるよ?なあハル?」

「あぁ、面白いが特に難しいな」

「そうかなぁ、あくまで理想ってだけだけどね」


恋バナは思っていたよりも面白い。男は理想を追い求める傾向にあり、女の子は想像しているより現実的なのだと感じていた。


「カナちゃんは?」

「私は…」

水瀬が話始め、目を向けると目が合ってしまった。水瀬は恥じらいながら目を逸らすので、僕まで恥ずかしくなりまた昨日の話を思い出し、なんともいたたまれない気持ちに襲われた。かっこいいと言われていたという話だけで舞い上がれるほど僕はお調子者のつもりはない。が、やっぱり嬉しいのも事実なのである。


「私はよく分かんないけど親切な人がいいな」

「(これは…なかなかツッコミづらいな)」

「ありきたりすぎるでしょ」

「(うおっ、こいついいやがった)」

「だって!気遣いとか気配りが出来るって素敵だなって思うから…」

「カズくん!カナちゃんは純情なんだからいじらないで!」


こんな調子で恋バナなる事をしていると、聞き慣れない足音が近づいてきた。


「スズー!」


声の鳴る方へ視線をやると同時に周りの音が消え、沈黙が僕の中で鳴る。いや、正確には鈴華を呼ぶ声が耳に届いた瞬間からだ。

声の正体は小白結凪だったのだ。

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