第34話 スライム討伐したい!
Cランクの依頼。それはDランクのものとはやっぱり違うものだ。
まだモンスター討伐が多くあるわけではないけど、それでも弱いであろうモンスターの討伐ならある。
その中で……
「スライム討伐?」
比較的簡単に思えるものを見つけた。
それは、スライムと呼ばれるモンスターの討伐。水色に近い色をしている、ぷにぷにしたモンスターの名前だ。
よくラノベの挿絵で見るけど、見た目はかわいいのだ。だけど、打撃には強く衝撃を吸収してしまうほどに弾力のある身体なのだとか。
「ねえリーシャー、私これやりたい! スライム討伐したい!」
「……スライム、ですか……」
勝手に決めるのはダメなので、とりあえずリーシャーに相談する。
私もセルティーア嬢も、最終的にリーシャーがオーケーを出さないとその依頼には挑戦できない。過保護なリーシャーは、私たちが危ないことをしないように注意深く見ているのだ。
私としては、将来強いモンスターとも戦いたいから、徐々に依頼のハードルを上げていきたいなと思っているんだけど。
「ね、ね、いいでしょ! スライムなら、それほど危険なモンスターじゃないし!」
私はこの世界に転生して、屋敷にある本はほとんど目を通した。その中には、当然モンスターの生態系について書かれているものもあった。
それによると、スライムとは初心者冒険者でも比較的簡単に倒せるモンスターとのこと。
その身体はほとんどが水のような物体であり、打撃を吸収してしまい、斬撃も効果が薄い。また再生力も高く、身体が分裂してもくっ付いて再生してしまうのだとか。
だけど、スライムの身体には核となる部分がある。そしてそれは、スライムの身体の外からも内部が透けて見えるのだ。
その核を破壊すれば、スライムは死ぬ。だから斬撃で核を狙うか……打撃でも、吸収しきれないほどの衝撃を核まで届かせるか。
あとは、火にも弱いらしいので、火属性の魔法が一番効果的だ。
「スライム……しかし……」
「大丈夫だよ! スライム……モンスターに関する本はいっぱい読んだし、この依頼は三体だけ討伐だよ?」
そう、私が見つけた依頼書には、三体のスライム討伐が書かれている。
内容は、国の外にとある湖があるのだけど、そこに出現したスライムが湖の水を吸って水が減っているのだという。
そのため、湖を枯らさないため早急な対応が必要なのだ。
スライムはその身体のせいか、水を吸収する性質がある。しかも吸収し、体積を大きくするのだ。
なので、水魔法は逆にスライムの大好物となってしまう。
「リーシャー……」
「リーシャーさん……」
「ぬ……わ、わかりました。わかりましたよ、そのような目で見ないでください」
私とセルティーア嬢のお願いについに折れたリーシャーが、軽くため息を漏らす。
やったー、と私とセルティーア嬢はぱん、と手を合わせた。
やっと冒険者らしいことができる!
「ですが、危険だと判断したらすぐに撤退しますからね」
「もー、心配性だなリーシャーは」
スライムの攻撃手段は、主にその体積の大きさを利用したものになる。
簡単に言えば、人間の顔に飛びつき貼りつくことで、呼吸できなくなった人間が窒息してしまう危険がる。
身体が水だからか、スライムが顔に貼りつけばまるで水中にいるかのような感覚になるのだという。
そのせいで命を落とした冒険者もいる。そういった意味で言えば、リーシャーが心配性すぎるなんてことはない。
モンスターである以上、危険であることに変わりはないのだ。
私だって、口ではそう言っても細心の注意を払うつもりだ。逆に、スライムの動きにさえ気を付ければ問題はない。
スライムに足はない。ぴょんぴょん飛び跳ねるだけだ。その動きは、目で追えるはず。
「大丈夫、私だって油断はしないから。もしリーシャーが危なくなっても、私が助けてあげる」
「まったく。
……では、そのときは頼りにしていますね」
リーシャーの許可も得たことで、私たちはこのスライム討伐の依頼を受けることに。初めてのモンスター討伐だ!
依頼書をキャンちゃんさんのところに持っていき、受理してもらう。
「……はい、確かに受理しました。期限は二日です。スライム討伐の証明として、スライムの核の一部を持って帰ってください」
「核の一部?」
「はい。スライムを倒すには核を叩くことが必須ですが、砕けた核はそのまま残ります。ですので、打撃にしろ斬撃にしろ、燃やしたとしても核が消滅することはありません。なので、一部で構いませんのでそれが証明になります」
「……ちなみに、核からスライムが復活するなんてことは?」
「確かにスライムの身体は、燃やされでもしない限りは再生します。ですが一度破壊された核は再生しません。スライムは核を中心に再生するので、核が破壊されればもう再生することはできません」
「なるほど」
要は、スライムの核を潰してしまえば復活はしない……ってことだね。それがわかれば充分だよ!
私だって、今日までの間に武器を買った。短剣だ。
武器は危ないからとリーシャーに止められるかもと思ったけど、意外にもあっさりと許してくれた。曰く、護身用としても多少の心得はあった方がいいということだ。
ま、武器を使うイメトレもバッチリだよ。それに、本番で使ったことはまだないけどリーシャーに使い方を教えてもらったりもしたし。
「じゃ、さっそく行こうよ!」
「興奮しないでください。依頼は逃げませんから」
「でも期限があるからー」
私は冒険者ギルドの外へと飛び出し、その後ろからリーシャーとセルティーア嬢が続く。
初めてのモンスター討伐に興奮しているのも事実だけど、初めて国の外に出るのだ。
外の本も読んだことはあるけど、やっぱり直接自分の目で見ないとね。
この国は大きな壁に囲まれている。なので、正規の門を通らないと外へは出られないし、中にも入れない。前世じゃまず見ることのなかった景色だ。
隠れて街中へ飛び出していた私でも、さすがに国の外にまでは行けないというわけだ。
「外かぁ、どんな感じになっているんだろ」
令嬢である限り、基本的に国の外に出ることはない。そりゃ、他の国に行く機会があればわからないけど……
それじゃあ、自分が出たいときに出ることはできない。それじゃあ、自由じゃない。
自由を求める私としては、依頼さえこなせれば自由に外に出ることのできる冒険者はまさに願ったりだ。
「さー、『コメット』初任務、気張って行こー!」
「おー!」
「どうしてそんなに元気なんですか……」
手を掲げ、歩き出す。目指すは、国の外……そして、スライム討伐だ!
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