第23話 どうして、泣いてるんだろ?
「お疲れ様でした。無事、依頼の達成を確認しましたので、報酬をお渡しします」
冒険者ギルドに…戻った私たちは、受付のキャンちゃんさんに成果を見せ、依頼が完了したことを確認してもらった。
そして、報酬を受け取る。
Dランクの依頼……つまり冒険者ならば誰でも受けられる依頼なだけあって、報酬はぶっちゃけかなり安い。
これを三等分したら、稼ぎなんてこれからどれだけの依頼をこなさないといけないんだと感じてしまうほどだ。
それでも……
「これが……冒険者としての、報酬……!」
もらった報酬を見て、私は目を輝かせた。いや、私だけではない。セルティーア嬢もだ。
貴族令嬢としてこの世界に転生した私は、まあ簡単に言ってしまえばお姫様だ。なにもしなくたって欲しいものは手に入るし、お金に困ったことなんてない。
だから、自分で稼いだお金というのが……こんなにも感動するものなのだと、今初めて知った。
前世では、私はなんにもできなかったからな。中学生じゃアルバイトなんてできるはずもないし、できたとしてもそもそも病弱の私には無理だ。
「! しゃ……モミジさん!?」
「ど、どうかしました!?」
そんなことを思い出していると、なぜかリーシャーとセルティーア嬢の二人が慌てたように私を見た。
いったいどうしたのか……と思うと同時に、頰にあたたかいものが流れた。
それを、そっと指で拭う。
「……あ、あれ? なんで……どうして、泣いてるんだろ?」
それは、涙だった。目から流れた涙が、頬を伝っていたのだ。
なんで涙が流れているんだろう。別に、悲しいこととかあるわけじゃないのに…………いや、違う。
これ、もしかして嬉し涙ってやつかもしれない。前世のことを思い出した私は……自分でやりたかったことをやれて、感極まってしまったのかもしれない。
「ど、どこか痛いのですか? あわわわわ……」
あはは、リーシャーったら。わかりやすくうろたえちゃってるよ。
「大丈夫。別に、悲しいとか痛いじゃないから」
「そ、そうなのですか?」
そうだ……これは、痛みや苦しみ、悲しさによる涙じゃない。だってこの涙は、あたたかいから。
前世、ベッドの上での生活が多かった私は、本をよく読んでいた。それは当然ラノベや漫画が多かったけど、それ以外のものも読んでいた。
その中に、こういうのがあった。悲しみや苦しみで流す涙は冷たく……逆に、感動や喜びで流す涙は温かく感じられることが多いと。
私はよく、涙を流していた。病弱な身体に絶望して、家族に迷惑をかけることがつらくて、死ぬのが怖くて。だから、流れる涙はいつも冷たかった。
でも、この涙は……あのときのものとは違う。とても、あたたかい。
「えへへ、二人と一緒に冒険ができて、嬉しいなって……そう思ったの」
「モミジさん……」
なんだかちょっと恥ずかしいな。でも、二人に余計な心配をさせないためには本当のことを言うべきだ。
私の言葉を信じてくれたのか、二人はそれぞれ照れたようだけど、笑っていた。
「三人とも、仲がよろしいのですねー」
すると、今のやり取りを見ていたキャンちゃんさんが微笑ましそうに笑っていた。
「! ごめんなさい、突然こんなところを見せちゃって」
「いいえー、なんだかいいもの見れましたから」
クスクス、と笑いながらキャンちゃんさんは言う。なんと恥ずかしい。
それに、周りには他の冒険者たちもいるのに。
私は涙を全て拭い、こほんと咳払いを一つ。
「あの、依頼なんですけど、一日に何回でも受けられるんですか?」
「ちょっと、モミジさんっ?」
「はい、それは可能ですよ。冒険者の方はランク関係なしに一日に何度でも依頼を受けることができます。ただし、一度受けた依頼を達成するか、それとも失敗するか……どちらにするにしろ、一度に複数の依頼を受けることはできません」
ふむふむ、なるほどね。依頼を受ける→成功→報酬をもらう→依頼を受ける……とループできるってわけだ。
でも、一度に受けられる依頼は一つのみ。それをクリアするか失敗するか……ともかく受けている依頼がゼロの状態でないと、新たに依頼は受けられない。
じゃあ、その気になれば一日でいっぱい稼ぐことも夢じゃない……ってことだよな。それに、いっぱい依頼を達成すればそれだけ早く冒険者ランクが上がるってことだし。
「モミジさん、今日は冒険者になって初日です。今日は身体を休めましょう」
と、リーシャーが私に言う。
危険なことをさせたくないリーシャーとしては、いくら簡単な依頼とは言えたくさん依頼を受けて私が疲れてしまうことは避けたいのだろう。
私としては、まだ冒険者の仕事したい気分なんだけど……リーシャーを無理に付き合わせちゃってるし、あんまりわがまま言うわけにもいかないなぁ。
「……わかったよ。今日はここまでにしておこう。セルさんも、それでいい?」
「はい、もちろんです」
そういうわけで、私たち三人の冒険者初日はこれにて終了した。
初日だからガンガン行くか、それとも初日だからこそそれなりにしておくか……考えた結果、後者になったわけだ。
ただ、それはそれとして……
「せっかくだからさ、初冒険者記念ってことで打ち上げやらない?」
「あ、いいですねそれ!」
私の提案に、セルティーア嬢はナイスアイデアというように手を叩いた。
あとは、リーシャーの反応だけど……
「……まあ、それくらいならいいでしょう」
「やったー!」
見事お許しが出たので、三人で打ち上げだぁ!
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