第17話 報告
「あぁ、もうこんな時間か」
「ごめん、かなり長くなっちゃった」
「池のほとりに私とナリーの荷物を置いてきた早くそれをとりにいかないとな。それに、「死の毒」についてギルドに報告する必要もある」
「そうだね、これ以上被害が広がったらまずいもんね」
ナリーとの話に夢中になりすぎて完全に優先順位を誤ってしまった。
「ということで、荷物回収とギルドへの報告の二手に分かれたいんだが、ナリーには荷物回収を頼めるか」
「うん、わかった」
「その、すまないな。中年の私にはもう限界なんだ」
20km以上酷使した私の足はいくらステータスが上がっているとはいえ、明らかにガタが来ていた。足もずっとプルプルしている。
◇◇
「そうですか、池の水が「死の毒」に汚染されていたのですね」
「はい、行方不明になっていたほかの二人の冒険者を発見したわけではありませんが、彼らもそれが原因かと」
「なるほど」
「では当面、汚染がなくなるまであちらは封鎖しておきます」
ルーシーは私の話を聞きながら紙に文字を書いている。何かの報告書だろうか。その後も数十分ほど彼女による質疑応答が繰り広げられ、私の報告も問題なく終わるかと思われたが、
「ところで、死の毒に侵されていたナリーが回復したという話は本当ですか?」
「え、えぇ。彼女はもう元気ですよ」
「では、あなたが道具屋で低級毒消し薬を超高級毒消し薬に変えたという話も本当なんですね?」
くそっ、もう話が出回っていたか。
「企業秘密というわけには」
「現在、この町と隣町モデューロでの報告件数が異常に増えているんです。今回ばかりはあなたを変人扱いして見逃すわけにはいきません」
「しかし、なんと説明したらよいのか」
四則演算しかまともにできないこの世界の住人に、どうやってこの複雑なスキルのことを......。
「たっ、大変だ!」
すると突然、バンっと勢いよくギルドのドアが開かれ、冒険者が大きな声で叫ぶ。
「北西から魔王軍襲来!現在、"灼熱のテトラ"と"ヘキサウラム"が交戦中!」
「至急D級以上の冒険者は北西へ向かってくれ。E級は町の人の避難誘導を頼む」
「......数隆さん、あなたは魔王軍の相手をお願いします。くれぐれも死なないように。まだ話は終わってないので」
「わ、わかりました」
私からすれば魔王軍よりルーシーの方が怖いのだが。しかし、北西からの襲来か。ナリーは私たちの荷物を回収しに北東へと向かった。彼女が無事だといいんだが。
私は急いで魔王軍へと向かう、というよりはルーシーから逃げるようにしてギルドを出た。いつも静かな町の様子とは異なり、皆があわてふためき騒々しくなっている。町の入り口につくと、何百もの魔物がこちらへ近づいているのがわかる。魔王軍とやらは、私が今まで戦ってきたスライムとは違っておぞましい形相をしている。私は今からこいつらと戦うのか。
「君たち、来てくれたのか!」
「この数は俺たちでは対処しきれねぇ。お前らは町の方へ向かっている魔物を頼む!」
全員が真っ赤な装備を身にまとった剣士が二人に魔法使いが二人の、計四人組がほかの冒険者に指示を促す。見るからに、彼らが"灼熱のテトラ"だろうな。私は言われた通り、"灼熱のテトラ"を無視して町へと進む魔物へと向かう。
オーク Lv32
HP 2250/2250
MP 0/0
ATK 1445
INT 0
DEF 506
AGI 102
「かなり強いな」
C~B級くらいの巨大な豚型の魔物が十数体で群れになっている。まともにやりあえば数に殺される。素因数分解しようにも、この数相手では
《アドバイス。先日手に入れたスキル<素数判定強化>の使用を推奨します》
そうだ、そんなスキルがあったな。確か、MPを消費することで計算速度を上げるんだっけか。
「<素数判定強化>!!」
そう唱えると急に頭が熱くなる。3桁だろうが4桁だろうが、数が視界に入るだけで素因数分解されていく。
「これならいける!」
HP、ATK、DEFが高いのが特徴のオークも、悉く貧弱なステータスとなり、短剣ひと突きで次々と絶命していく。残ったのはHPやDEFが小さくならなかったものの、ATKがスライムレベルの人畜無害な豚と化していた。
どうやらほかの冒険者たちもうまくやってくれたみたいだな。残るは"灼熱のテトラ"と"ヘキサウラム"が対峙している魔物だけのようだ。
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