断罪者たちはアノニマス

月狂 四郎

第1話 陰キャの有罪判決

 ――今日という日が、俺の人生最悪の日になるかもしれない。


 幽体離脱でもしているかのように、教室の床で這いつくばる自分を見下ろす。まるで他人事だった。このまますべてが終わればどれだけ楽だったか。


「おい、亀頭。テメーはいちいちキメーんだよ」


 後頭部に衝撃。強い圧力。


 俺は亀頭じゃない。鬼頭守きとう まもるだ。


 心の抗議も空しく、後頭部をより強い力で踏みつけられる。


 土下座するように言われた俺は、床に膝をついたまま頭を踏まれた。固い床に額をぶつけたせいで、頭蓋骨の内側がジンジンと痛む。


 踏みつけているのは、このクラスを支配するボスだった。


 鮫島賢司さめじま けんじ――バスケ部のエースであり、スクールカーストの最上位。高身長にイケメン、頭も切れて喧嘩が強いという最強のラスボス。


 最悪だ。よりにもよってこんな奴に目をつけられるなんて。


「お前の小説とやらを読んだけどよ、本当に隅から隅までキモいんだよ。童貞丸出しで、お前の願望が丸見えなんだよ!」


 後頭部にかかる圧力が強くなる。固いタイル貼りの床が痛くて、顔の向きを横へずらした。罪悪感で押しつぶされたような顔の岡莉奈おか りなと目が合う。


 目下行われているつるし上げの発端は彼女だった。いや、正確に言えば、彼女にまつわる小説を書いたことだった。

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