第2話 学校
道すがら、昨日の学校での話を思い出すネオ。それに似た今朝の夢も頭から離れない。
「あれは、夢だよな?」
指を曲げたり開いたりしながら、ネオは呟いた。まるで自分がそのまま伝説の中に入り込んだような、不思議な夢だった。あんなに現実みたいな夢は、今まで見たことがない。しかし、ネオの脚は今地面をしっかりと捉えている。落ちていない。
そんなことを考えていると、急にネオの臀部は街路に打ち付けられた。目の前には汚れた作業着に包まれた脚が立っていた。
「おいガキ、どこ見て歩いてんだよ」
上から舌打ちと怒声が降り注ぐ。ネオが呆気にとられている間に、その声の主は去って行った。
体の痛みに泣きそうになるが、ぐっと堪えて立ち上がった。その痛みは、今の自分は既に夢の中から脱していることの証左だった。ネオはより汚れてしまったカバンを拾い、学校へと向かった。
1年前、国内の7~12歳の子どもは必ず学校に通うという義務が発生した。町の人々は子どもを働き手として使えなくなると猛反対だった。しかし国民に法律をひっくり返すだけの力は無く、ただ従うのみだった。
一方子どもたちは、尻を叩かれながら日々煙の中で働かされる日々から解放されると喜んでいた。しかし、実際は椅子に黙って座るよう指示され、大人のつまらない話を聴かされる苦痛を強いられることとなった。教師は将来君たちが国家に貢献できるように勉強しなさい、などと言っているが、子どもたちの腑に落ちる説明ではなかった。
ネオが扉を開けると、相変わらず騒がしい教室が視界に映った。昨日の伝説の話なんて、完全に忘れてはしゃいでいる。
「俺は鉄砲隊、バーンバーン」
「うるせえ、ぶん殴った方が早いさ」
ネオはいつもの教室後方隅っこの席に腰掛けた。学校は退屈だが、ネオにとっては喧噪の中で独り座っている方が余程苦痛だった。しかし今日は違う。あの話の続きへの期待が孤独感を打ち消していた。黒い穴に落ちた人はどうなった?あの夢みたいに、ずっと落ちていくだけ?それとも……。
「こいつ、ニヤニヤしている」
「気持ち悪いな」
蔑んだ目をネオへ向けた少年たちは、また戦争ごっこに戻っていった。その少年たちの声はネオの耳に全く届いていない。
「ほら、授業が始まるぞ。早く席に着きなさい」
まるで新品のような服を着た教師は、相変わらず笞で威嚇行為をとっている。なかなか席に着かない子どもたちに苛立ちを隠せていない。ネオも今日だけは教師に同情する。
「それでは昨日の続きだ。ええと、どこまで話したかな……」
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