お仕置き案件 ~その浮気。気づいていないと思ったら、大間違いなんだからね~
夏笆
一、
結婚して三年。
夫の
あんの、腐れ外道!
私が苦しんでいる時に!
浮気の事実に気付き憤るも、悲しいかな。
職を持たない私が家を飛び出したところで、露頭に迷うのが関の山。
それでも、ひとりなら
私って優しい?
いやいや、これも作戦というもの。
いきなり家出をすれば露頭に迷う一直線でも、ちょいと準備をすれば、周りに心配をかけることなく、朝也と別居出来る状況を作り出すことが出来る。
『まりも。お疲れ様。本当にありがとう・・ありがとう』
そして
でも、退院して日常生活が始まれば、ふとした拍子にもやもやが浮かびあがる。
未だ、続いているのかな?
そもそもが、朝也の携帯に相手から連絡が来たのを偶然見て、その後、朝也の様子のおかしさと、しみついた香水の匂いから断定するに至ったわけなんだけど。
そういえば、それ以来、
むしろ、
ていうか、帰宅時間にぶれが無いのは、結婚してからずっとなのよね。
大体がして、ずっと判で押したように同じ生活サイクルだったくせに、あの時だけ狂わせたら、浮気だってすぐにばれると思わなかったんだろうかと、我が夫のことながら遠い目になってしまう。
朝也の行動パターンなんて、定時でまっすぐ仕事に行く、定時でまっすぐ家に帰るが定番で、そこに時折会社での付き合いとか、友人と会うってのが入るくらいなんだから。
でも、私が気づいていないと思っているのよねえ。
あの、あんぽんたん。
「ふぎゃ」
「おお、よちよち。きれいきれいしようねぇ」
すっかり首も座って、更に色々な表情も見せてくれるようになった、可愛い
やっぱり、もやもやは解消しよう。
そうしよう。
「美里ぃ。おじいちゃんとおばあちゃんのおうちに、行こうねぇ」
おむつも替え、お腹もくちたことで満足そうな美里を抱いて、私は用意のスーツケースをクローゼットから取り出すと、それをごろごろ引きながら家を出た。
さて。
朝也は、どう出るかな。
「すみません、お義母さん。暫くお世話になります」
美里と荷物を抱え、降り立ったのは勝手知ったる朝也の実家がある駅。
今、朝也と美里と三人で住んでいる家からも、私の実家からも然程離れていないここが、私が選んだ逃亡先。
いや、逃亡っていうとなんか私が悪いみたいだけど。
「いらっしゃい、まりもさん。美里ちゃんも、よく来たわね」
にこにこ笑って迎え入れてくれる、義母の存在が心休まる。
何を隠そう。
朝也の浮気を断定した時、私はお義母さんにだけは話をした。
だって、私の実家に言っちゃうと、取り返しのつかない大騒ぎになりそうだったから。
うん、つまり。
私も、本気で朝也と別れようなんて思っていないわけだ。
でも、かなりの衝撃だったことは確かで、私はひとりで抱え込むことを早々に諦め、お義母さんに泣きついた。
『浮気されて辛い、悲しい。
そして、お義母さんとふたり、考えた朝也へ与える試練が今回のこれ。
<暫く
朝也は、とにかく美里を可愛がっているから、この方法が一番効くと私は踏んでいる。
これで朝也に『それなら離婚しよう』なんて言われたら、私がへこむかも知れないけど、お義母さん曰く絶対にそんなこと言わないそうだし、私もそう思う。
だって朝也、人をだますとか嘘を吐き続けるとか絶対に出来ない。
でも、秘密を守るってなると絶対で、そんなときの朝也は、凄く格好いい。
・・・ええと、だから。
つまり何が言いたいかっていうと、たぶん、浮気はあの時の一回だけなんだろうなって思っているってこと。
別に、朝也の良さを思い出してなんていない。
「ふぎゃ」
「
「でも、思ったより大丈夫そうで、良かったです。やっぱり、お義母さんが居てくれると心強いのかな」
私と同じでと、私は美味しいお茶を飲む。
今日は、ちゃんと買って来た栗羊羹と共に。
うん。
おいしい。
幸せ。
お仕置き案件 ~その浮気。気づいていないと思ったら、大間違いなんだからね~ 夏笆 @hisuiusagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。お仕置き案件 ~その浮気。気づいていないと思ったら、大間違いなんだからね~ の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます