神の被害者 【変幻の勇者】

緋神 暁

第0話 徹彦の死

その日の私はとても運が悪かった

例えば大好きなゲームの新作を買いに久しぶりに外出した

だが、そのゲームは目の前で売り切れた

10店舗ほど回ったがすべての店舗で売り切れていた

それどころかゲームを買うための金さえ財布ごとられてしまった


気づくと周りはかなり暗くなっていた

当然だ 徒歩で10店舗近く回ったらそうなるに決まっている

仕方がないから帰ってダウンロード版を買おうと駅までの道を調べるためスマホを取り出した

だがその時、後ろから高校生と思われる男子がぶつかってきた

その結果、スマホを道路に落としてしまった


パキッという嫌な音がした


「あっ すんません」

男子は軽薄けいはくな言葉で謝る

「いや 私も突っ立っていましたので」

苛立いらだちながらも下を向いてしまう 反抗的になれない

他人ひとは苦手だ 過去のことからどうしても怖いと思ってしまう

目を見て話すなど絶対にできない

そんなことを考えながらスマホを拾うと案の定 割れていた

「ホント すんません それ弁償べんしょうします」

礼儀正しいのか軽薄なのかわからないやつだと思った

「いえ 大丈夫です これでもかせいでいるので」

他人が苦手な私だが一応仕事はしている 一般的なものではなくVtuberという

2Dのキャラクターを動かし配信するといものだが...


2Dのキャラでは自分を見せなくていいから話すことも容易い

それにゲームの腕には自信がある一部のゲームではプロゲーマーとしても活動しているほどだ そのためそこそこのファンがいるのだ


だが、対面でこれ以上 他人ひとと話すのはごめんだ

すぐに立ち去ろう


しばらく歩いた後、駅の場所はどっちだろうかと悩んでいると

目の前に地図が描かれた看板があった

さっきまではついてなかったがこれはラッキーだなと思った


―――だが今思うとこれはさらなる不幸への案内板だったのだろう


地図で駅の場所を確認した私は早く帰って配信で今日の愚痴ぐちをこぼそうと少し早足になった


駅に着いた

ICカードを探すが

家に忘れていたのを思い出す

少量の小銭をポケットに入れておいてよかった

乗車券を買い改札に通す 出てきた乗車券をポケットにしまう


自宅方向のホームに向かう 

帰宅ラッシュの時間だろうか 人が多めだ

だが、まだ誰も並んでいないところがあった


あそこでいいかと私はその乗車位置に向かう


―――ここで他に人が並んでいるところを選んでおけばよかったのだろうか いや、どうせほんの少しだけ伸びただけだろう


通過する電車がホームに差し掛かる瞬間




後ろから誰かが当たって来た




多分 故意こいではなかったのだろう

すぐに慌てた声がした


誰かが緊急のボタンを押そうとしているのがちらりと見えた

だが、もう遅い


私の体は電車によって遠くに飛ばされた

痛くはない 痛すぎる時、脳が痛みを遮断するというのは正しいようだ



そう思いながら私の意識はこの世から消えた

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