もっちゃり女を独断と偏見で俺好みに育成することにしたら人生の難易度が変わった話。
くすのきさくら
レッスン0 長めのプロローグ
第1話 美容院という難関
今日は彼女の人生の分かれ道。
しかし、彼女に選択権は一切ない。
口を挟むことすらできない。
何故なら彼女の行動すべてを俺が掌握しているから。
先に彼女には謝っておく。
悪い。君は俺の独断と偏見で俺好みに変わってもらう。
これはもう決定事項だ。
★
明るいクリーム色の外壁の建物の前に立っている俺。
軽く息を吐いてからドアの取っ手を手に取り。ゆっくりと大きなドアを押し開けた。
チリンチリンとドアの頭上に付いていた鈴の音が鳴ると同時に、ふわっと温かみのある独特な香りがまずしてきた。
けれど嫌いな香りではなく。少しだけ緊張を解してくれる優しく温かい香り。
石鹸だけではなく。髪を染めるカラー液。パーマ液の混ざった香りだろう。
いろいろ香りを混ぜると変な匂いになりそうなものだが。この場所はいろいろな香りが混ざり。今の優しいお店の雰囲気が作られている。
ドアを開けるまでのドキドキしていた気持ちを少しだけ落ちつかせてくれたのは間違いない。
「いらっしゃいませ」
第1の関門。お店に入ることをクリアした俺。
そんな俺に対してドアを開けてすぐ正面にあった受付近くに居た女性店員さんが作業を中断し。俺の顔を見て笑顔で声をかけてきた。
そしてすぐに俺の正面へとやって来た。
店員さんは俺とそれほど年齢は変わらないのではないだろうか?まだ少し幼さがあるようにも思えるかわいらしいサイドテールの女性だ。
女性と関わることがほとんどなかった俺。サイドテールの女性の笑顔でコロッと恋に落ちていたかもしれない。いや、ちょっと落ちかけたかもしれないがぐっと堪え。再度気合を入れなおす。
まだ1つしか関門は通過していないのだ。関門はまだある。ここで気を抜けばせっかく第1の関門を通過したのが水の泡となる。
今更だが俺は今美容院へとやって来たところだ。
また、俺としては初美容院である。そのため実は緊張でガチガチだったりするが。このあと第2の関門はもしかすると選択肢が生まれる可能性があるため。自分の心を落ち着かせながら。でもちゃんとサイドテールの女性店員さんをの目。正確にはおでこあたりを見つつ俺は声を出した。
「――え、あっ、えっと、カットの予約をお願いした
第2関門も何とか通過。
サイドテールの女性店員さん。おでこも綺麗だったので一瞬だけ見惚れたがために、少し噛んでしまったが。気が付かれてはないだろう。それより無事にまだ慣れない名字も言えた。
「はい。では、まずこちらにお名前をお願いします」
「あっ、はい」
サイドテールの女性店員さんからペンを受け取ると俺は紙に今の自分の名前。
名前を書くのはまだまだ慣れていないが。昨日必死に練習したので何とかスムーズに書くことができた。
「――ありがとうございます。当店のご利用は初めてでしょうか?」
「あ、はい。初めてです」
「では、まずお荷物はこちらのロッカーへとお願いします」
「わかりました」
そして、先ほど気にした選択肢が生まれる可能性が低くなった。
俺が気にして選択肢というのは、もしかすると、この身体はこのお店が初めてではないと、いう可能性があったからだ。
でもサイドテールの女性店員さんの様子からして、俺のことを初めてのお客さんとして扱っている様子で、お店の方のデータにも過去の履歴はなさそうな雰囲気なので、あまり選択肢の事は気にしなくて良さそうだ。でも一応もしがあるので、頭の隅に意識はしておく。
そのあとの俺は、サイドテールの女性店員さんの指示を受けつつ。入り口横にあった鍵付きロッカーに持っていたカバンなどの荷物を入れた。
「では、こちらのソファでお待ちください。また可能な範囲でこちらへの記入をお願いします」
「あ、えっ、は、はい。わかりました」
無事に第1、第2関門と通過し。ソファへと案内されたことで一息つきかけた俺だったが。ここで予想していなかった事が起きた。
サイドテールの女性店員さんからバインダーに固定されたアンケート用紙を渡されたからだ。一瞬だけプチパニックになりかけた。
どうやら俺がロッカーに荷物を入れている間にバインダー。アンケート用紙を準備していたらしい。気が付かなかった。
少し挙動不審になってしまったが。サイドテールの女性店員さんは俺へとバインダーを渡すとまた先ほどまで居た受付近くへと移動していった。
次こそ一息ついてから俺はアンケート用紙に目を通しつつバインダーに付いていたペンを手に取る。
用紙には要望、希望など。この店を利用するのが初めてと答えたからだろう。複数の質問などが書かれていた。
最後にはこのお店のアプリがあるらしく。アプリの宣伝。ダウンロード方法も書かれていたが。あいにく現在の俺は学校から配布されたタブレット端末しか持っていないため。アプリのダウンロードが出来るのか不明のため軽く流し。最初の記入欄へと視線を移す。
髪のことで困っていることや。どのようにしてほしいか。カットなどをしている時などに話しかけていいか。などの質問があったので順番に答えていく。
ちなみに現在の店内は2人の他のお客さんがおり。どちらも美容師さんとおしゃべりを楽しみつつ髪を切ってもらっているが。おしゃべりが不要。苦手な人も居るからそのような質問があるのだろう。などと考えつつアンケートを埋めていった。
少しの時間を要してアンケートの紙は書ける範囲でざっと書いた。曖昧な回答になっているところもあったが。これで許してもらおう。
すると、俺が書き終わるのを待っていたかのようタイミングで、お店の奥から先ほどのサイドテールの女性店員さんとは別の女性店員さん。ふんわりしたオーラをまとった落ち着いた大人の女性が俺の方へと向かって来る。
少し背筋をぴしっとする俺。
ちなみに、女性は髪型が肩にかかるくらいの明るいブラウン系のセミロング。スタイルも良く優しそうな女性店員さんだ。
お店選びは今のところ二重丸。花丸だったようだ。
なお、再度恋に落ちかけていたがこれまた再度俺はぐっと堪えた。まだ何も始まっていないからだ。
今俺のところへと向かって来ているふんわりオーラの女性店員さんは、先ほどのサイドテールの女性店員さんとは違い。腰にハサミなどが入った小さなカバンを付けているので、多分この後俺の担当をしてくれる美容師さんだろう。
ということは、先ほどのサイドテールの女性店員さんは受付。アシスタントだったのだろう。そんなことを俺が思っているとふんわりオーラの女性店員さんが俺の前までやって来て腰を落とす。
それと同時にほんのりと良い香りがした。香りで再再度恋に落ちかけるがこれまたぐっと堪える俺。なんでかわいい人ばかり居るのか。俺がこのお店を選んだからか。
「初めまして、本日担当させていただきます。
話し方は優しいお姉さんと言った感じ。担当の人も当たり。花丸だ。
「初めまして、飛鳥です。こちらこそよろしくお願いします」
もし俺はここで緊張を解いていたら『これから一生よろしくお願いします』とかいう訳の分からない返事をしていたかもしれないが。ふんわりオーラの女性店員さん。三宮さんが奥から来てくれたため。心の準備をするには十分で、俺は落ち着いて返事をしてから書き終えたアンケート用紙を三宮さんへと渡した。
「では、まずこちらを少し確認させてもらいますね」
「はい」
三宮さんが俺が書いた紙を見ている間。俺変な事書いてないかな?大丈夫かな?という心配をしつつ。チラチラと三宮さんを観察する。もちろん変な意味でとかではなく。純粋に目の前に大人の女性。それも美人さんが居るので、何か参考にできることはないかと思っての観察だ。
ちなみにさすが美容師さんと言うべきか。今の俺とは比べ物にならないくらい髪の手入れが行き届いている。素人の俺が見ても髪が全く違うと言える差だ。三宮さんの髪は1本1本が輝いて見えた。
また髪以外でもやはり大人の女性言うべきか。身だしなみもしっかりしているからか。オーラが違った。
それに比べ俺と言えば、今の部屋にあったパーカーとジーンズで、とくにおしゃれとかはわからないのでしていない。これなら変じゃないだろう。程度でやって来た自分がちょっと恥ずかしくなる。
次来るときはおしゃれな服。または高校生なので学校の制服。基本学校での生活なので、普段着に合わせた髪型も良いかもしれない。次来るときは服装も考えておこう。
「はい、お待たせしました。では、今日はどのようにしましょうか?」
三宮さんを観察していると不意に声をかけられたので、慌てて俺は視線を三宮さんの目。おでこに合わせて決めていた言葉を言う。
「えっ。あっ、その今日はバッサリ切ってください」
「――えっ?」
すると一瞬だけ三宮さんは驚きの表情をしたが。そこはプロ。すぐに笑顔になり。その後細かくどのようにするか確認してきた。
多分となるが三宮さんが一瞬驚いたのは現在の俺の髪は腰近くまである。また前髪も長く。何もしないと目が。顔が完全に隠れるくらい髪の量も多い。それをバッサリ切ると言ったからだろう。
でもそれでいい。
今日の俺はとにかく髪を短くすることが目標だったのだから。
髪が伸びるのにどのくらい時間がかかるかは俺は知らない。腰当たりまで伸ばすのは大変だろうことは嫌でもわかる。でも切る。決定権は今この身体を掌握している俺にあるので切るったら切る。
こんなことを言っても信じてもらえないだろうが。この身体は
俺は彼女の身体で話すこともでき、手足も自由に動かせ。俺の思うがまま。
なので、今の美容院に来て髪を切るというのも飛鳥玲奈さんの許可はもちろん取ってない(そもそも飛鳥玲奈という人の中身。彼女がどこにいるかわからないので聞くこともできないが)。もし怒られることがあったらそれはその時だ。
今の俺はこの身体を俺好みに変えるために美容院に来た。だから俺が自由にこの身体を俺好みに独断と偏見で変えるのだ。
俺の本当の名前は
しかし今は
俺に何が起こったのかというと、それは数日前のことをまず話さねばならない。
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