落ちこぼれの俺が最後の希望と呼ばれるワケ〜史上最高の幼馴染と騎士になったら、俺が切り札になりました〜

御影

第一章 養成所編

第1話 夢

「俺が大きくなったら、騎士になってミサちゃんのこと迎えにいくから、それまで待っててね!」


元気な少年の声が広い部屋の中に響く。


「うん!私、ハルマ君が騎士になるまでずーっと待ってるから!」


笑顔を浮かべるミサと呼ばれる少女は、少年・ハルマに負けず劣らずの元気で言葉を返す。

今この場に広がる世界は、他の誰にも邪魔されることのない2人だけの世界…のはずだった。


「コラァクソガキ!

まーたミサの部屋に入りやがって!

さっさと出て行け!」


「パパ!?」


「げっ!なんでおっさんが居るんだよ!まだ昼だぞ!?」


バンッ!と大きな音を立てて入ってきた男は、ミサの言葉通りミサの父親である。

ハルマとミサの2人だけの世界を壊すのは、いつもこの男だった。


「ハルマ君…今日はパパお休みの日だよ…」


「またぁ!?」


「またぁ!?って…このやりとり2年近く続けてんだから良い加減学習しろよ!」


「そうだっけ?…まぁいいや、また来るからねミサちゃん!バイバーイ!」


「あ、こら!」


鬼の形相で今にもハルマを摘み出さんとする父親の横をするりと通り抜け、ミサに別れを告げて帰っていくハルマ。

こうして、ハルマとミサの2人だけの世界は今日も終焉を迎えたのであった。


「ねぇパパ、なんでハルマ君にだけ強く当たるの?」


「ミサ、何度も言ってるだろ。

あいつはなんだ。

捨て子と関わったって良いことなんて無いんだ。

あんな汚れた野蛮人との関わりなんて、ナディーウ家の者としてあってはならないんだよ。

分かるね、私達ナディーウ家は英雄の血を引き継ぎし五大英家ごだいえいけの一つ。

誇り高き血筋が雑種と関わっては…」


「ハルマ君は良い子だよ!

なんでパパはそんなにハルマ君のことを悪くいうの?

優しくて、勇気のあって、とてもかっこいいんだから!」


「…ミサ、世の中は自分の好き嫌いだけでは生きていけないんだ。

いずれミサにも分かる時が来る…」


「…なんでよ…パパの分からずや!」


「あ、ミサ!待ちなさい!…」


—————————————————————————


今から100年程昔、この世界に突如として“魔王”を名乗る魔物が現れ、その強大な力を持ってこの世界に生きる人々を蹂躙し始めた。

この世界に元から存在していた魔物とは比べ物にならない程に、魔王が持っていた力は強大だった。

人々が1,000年近くかけて発展させ、築き上げてきた文明を容易く破壊し、対抗するその悉くをねじ伏せ、この世界を我が物にせんとした。

また、魔王に与する魔物たち“魔王軍”もまた、元から生息していた魔物と別格の力を誇り、それらの魔物の中には後に魔人と呼ばれる高度な知能を有した人型の魔物も多数存在していた。

しかしながら、数多の配下を従える魔王の襲来は人類にとって悪い影響ばかりを及ぼした訳ではなかった。

魔王がこの世界で人智を超えた力を行使したことにより、人々の中にも不思議な力を行使することができるようになる者が現れ始めたのだ。

人々はそれを“魔法”と呼び、魔王軍との戦いに役立てていったのだ。

魔法を習得した人々は次第にその数を増やしていき、魔王が現れて一年が経つ頃には、生き残った全ての人々が、例外なく何かしらの魔法を使えるようになっていた。

そして当時の王は、優れた魔法を使える者たちを集り、

「魔王の脅威からこの国と民を救った者には、なんでも望むものを与えよう」と集まった者達を焚き付けた。

しかし、魔王の強大な力に敵う者が現れる事はなく、日に日に我こそはと名乗りを上げる猛者達も少なくなっていった。

もう手詰まりかと思われ始めた頃に、4人の旅人が名乗りをあげた。

後に“英雄”と呼ばれる存在である。

そして4人は、魔王と三日三晩戦い続け、そして遂には魔王を封印することに成功した。

これが後に“英魔の戦い”と呼ばれる戦であった。

王の御前に生きて帰った4人に、王は言った。


「よくぞ魔王を打ち倒してくれた。

其方らこそ、この国を…いや、この世界を救った英雄である。

約束通り、其方らが望むものをなんでも与えよう。」


その言葉に対して、4人英雄達のうちの1人が答えた。


「では、有事への備えとして、この国を守るための力を欲します。

具体的には、魔物達や万が一に他国からの攻撃を受けた時にこの国を守れる盾となる軍を作りたいのです。」


「ほう…軍か。

しかし、この国にはもう騎士団が存在する。

それとの差別化はどうするつもりだ?」


「この国に仕える騎士達も皆魔法が使えます。

しかし、現在の騎士は魔法に対しての知識に乏しいものが殆どです。

なので、私たちが改めて魔法について伝授し、魔法を使える騎士団を編成するのです。

そうすれば、今居る騎士達も職に困ることは無いでしょう。」


「…ふむ、よかろう。

新たなる騎士団の編成を許可しよう

そして、其方らをその騎士団の団長に任ずる!」


「「「「ははっ!」」」」



この瞬間に、今日こんにちまで続く由緒正しき魔法騎士団が結成された。

この騎士団は“プラトの騎士”と呼ばれ、4人の英雄たちがそれぞれ団長を務める四つの騎士団に分かれた。


強化魔法に長けた者が集まる【スペーディオ】


攻撃魔法に長けた者が集まる【ダイアグラス】


防御魔法に長けた者が集まる【クランヴィウム】


回復魔法に長けた者が集まる【フォーチュン】


彼等の活躍は、結成当初から現在まで、広く語り継がれている伝説となっている。


そして新たな日の出と共に、また新たな騎士の卵たちが自らの野望や夢を叶える為に、騎士養成所の門戸を叩くのであった。

__________________________________________________


「…ル………て…」

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