まじめな旅
未定
第1話 再会
ドアが開き、女が入ってきた。女はすぐに私のことに気がついたが、気づかなかったふりをすると決めたようだ。ベッドに座ったので、女の首筋にキスをし、乳首を舐め、内腿を撫でた。濡れてきたので入れた。終わってから、二八〇リーブラ渡した。女は受け取って、数え、不思議そうな顔をした。
「二十リーブラ多いです」
女はそれを返そうとした。まだ賢い生き方を知らないのだ。
「受け取ってくれ。よかったから」
「そうですか」
「あいつはどうしたの?」
「え?」
「あのときのあいつは」
「さあ。どこかでは生きてるんじゃないですか」
「一人なら、おれと一緒に来ないか」
女は黙った。私は続けた。
「電車で見たときから、君のこと気になってたんだ」
女は息を吸って、吐いた。
「私はこのままでいいんです。また裏切られるくらいなら、初めから信じないほうがいい」
「そうか」私は言った。「それはとても賢い生き方だね」皮肉ではなかった。
女は急に涙ぐんだ。私はもう一度いいかと尋ね、うなずいてくれたので、今度はキスから始めた。結局三度目もあった。どんな形であれ、女は求められることに飢えていた。
「また来ますか?」翌朝、女が言った。
「本当におれと来ない?」私は聞いた。
「行かない。やめておく」
「いつかまた会おう。そのときは服を着て。肉でも食おう」
三日後、私は街道の途中宿で新聞を手に取った。その隅っこのとても小さな枠に、死人の身元を引き受ける人間はいないかと問うものがあった。それは娼婦であり、川に浮いて見つかったと書いてある。私はその娼婦の名を見た。
「どうしたあんちゃん、急にため息なんかついて」
近くの行商人がそう言った。私はささやかに笑った。
馬宿を出るとき、その行商人が教えてくれた。次の町まではかなりある。馬なしで行くのは骨が折れる。このあたりに暮らす野生馬は穏やかだから、捕まえればすぐに言うことを聞くようになる。ほら、あそこにも三頭いる。
私はなかなか捕まえられなかった。大きな背嚢を背負った女が来て、背嚢を下ろすと、黙ったまま、私に見本を見せるように、または当てつけのように、あっさり馬を捕まえてしまった。
「どこまで行くの?」女が馬の上から聞いた。
「決めてないんだ。どこであれ同じだと思うしな」
「あなたのジョブは?」
「こう見えて僧侶なんだ。生臭坊主だが」
「私もこう見えて戦士さ。私たち、相性がいいんじゃない?」
「そうらしい」
「私はバルバドに行きたい。それまでパーティを組もうよ」
「いいよ。でも馬がない」
「私のはいま馬宿に預けてある。これに乗りなよ」
「君だから言うことを聞くんじゃないの?」
「一度人を乗せた馬は相手を選ばないよ。だいたいはね」女は上から手を伸ばした。「私はジーナ」
「ジローだ」
私たちは二頭の馬を並べ、八つの蹄を響かせた。
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