第3話

 宴会が終わり、ぼくはひとり公園のベンチに座りながら缶コーヒーを飲んでいた。他のみんなは2次会でカラオケに行った。

 こういうところが、アピールが足りんってことなんだろうかな。

 焼酎のせいで少し頭がクラクラとしていた。

 公園のところどころに立つ電灯は、まるでそこから何らかの柔らかい粒子が優しく放出されているかのようで、その周辺の空間にぼんやりとした光の輪を作り出していた。

 その一つなかで、誰かが体をゆっくりと揺らしながら立っているのが見えた。先程から聞こえてくる、柔らかな音色はその人物が奏でているようだった。

 男性か女性かも判別できず、若いか年寄りかも分からなかった。ただ光の粒子を浴びながら緩やかに揺れていた。

 柔らかく低い音色。そこからは何かしらの温度を感じ取ることができた。どこかで聞いたことがあるような懐かしさを感じる響きだった。


 「あれ、何という楽器なのか知ってる?」


 突然耳のそばで声が聞こえた。びっくりして振り向くと、いつの間にか年配の女性がぼくのすぐ後ろに立っていたのだ。

 彼女はぼくの耳に顔を寄せていた。彼女はわかるかわからないかぐらいの程度でそっと微笑んだ。


 「知ってる? あの楽器の名前を」


 彼女は再び言った。


 「いや、知らないです」


 ぼくは答えた。


 「隣、座ってもいいかしら?」


 彼女は聞いた。

 彼女の声は囁くようで、しかし真っ直ぐにぼくの耳に響いてきた。

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