第10話 二度目の呪い

 体の痛みを感じ、目を覚ます。

 横になったままで顔を顰めながら周囲を見渡すと、シーフギルドで使わせてもらっている自室というか個室のようだ。いつもより毛布が多く敷かれていたので、すぐにはわからなかったよ。

 喉の渇きを感じたので体を起こし、そばのテーブルに置いてあった水差しからカップに水を汲み飲む。ふう、体に染みわたる感じがするな。


 飲み物を飲んだら胃が活動を始めた感じがして、今度は空腹を強く意識するようになった。

 少し落ち着いたらおばさまのところに行って何か食べさせてもらおう。

 それにしても、死んだと思ったけどどういうことだろう。あの時、気を失っただけで砂漠の戦士さんたちが助けてくれたのか、それともゲームみたいに生き返ってセーブポイントまで戻されただけなのか。

 そういえば、あの狼たちどうなったかな。助かってればいいけれど。

 

 そんな感じで考え事をしながらぼんやりぽやぽやとしていると、部屋に誰かが近づいてくるのを感じた。これはサリーさんかな。


「目が覚めたようだね」

「おはようございます」

「昨日のことはどこまで覚えてる?」

「昨日? あぁ。一日経ってるんですね。そうですね、戦士さんたちから攻撃されてダメージを受けたサンドウォームが離れた場所にいた俺の方に来て、逃げようとしたけど砂漠狼の子供が気になって……なんとかしようとして相手を毒にしたあと、ちょっと油断してしまって……やられたのかな」

「よしよし。ちゃんと記憶があるし、頭の方は大丈夫そうだね」


 倒れて気を失っている内に、一日経過していたようだ。暴れるサンドウォームの体当たりを受けた後、気を失っているところを見つけてもらえたのかな。


「俺は……だれが助けてくれたんでしょうか?」

「あんたは、運がよかった。死んでしまっていたけど、たまたまオアシスに立ち寄ろうとしていた司祭様がいて『リザレクション』をかけてくださったんだよ」

「えっ⁉ 俺、死んでたんですか?」


 な、なんだってー⁉

 ふう。助かってよかった……とか思ってたのに、死んでたの⁉

 ていうか、リザレクションマジすげー!

 神様、仏様、司祭様。結局どなたに一番感謝すべきなのかわからないけれど、ありがたや、ありがたや。


 すぐにでもお礼を言いに行かなければと思って、司祭様の居場所を聞いたけれど、リザレクションをかけてくれたあと、お礼を固辞して立ち去っていったそうだ。

 まさに聖職者って感じのムーブ。なんて立派な方なのだろう。


 

 とにかく詳しい話は後でということになり、食堂の大将やおばさまも心配してくれてるみたいなのでまずは顔を見せに向かう。


「気が付いたみたいだね。そこに座って待ってな。すぐに料理を運んできてあげるからね」


 食堂に入ると、おばさまはすぐにこちらに気付いて声をかけてくれた。大将もこちらを見て頷いてくれてるし、本当気持ちがありがたい。

 個室を抜ける際、あのモブの兄貴ですらナッツを一粒くれたくらいだ。シーフギルドのみんなあったけぇな。



 温かい食事を頂いた後は、部屋に戻ってサリーさんから先ほどの話の続きを聞くことになった。とはいえ、先ほどまでの話で大部分はすでに把握できていたし補足程度。

 砂漠の戦士さんたちがこちらに駆けつけてくれた時には、すでに俺は瀕死。辛うじて生きてはいるが……という状況だったらしい。

 サンドウォームは、毒でかなり弱っていたみたいで戦士さんたちの手で倒すことに成功したそうだ。若い個体だったので、毒も効いていたしなんとかなったと言っていたとか。あれで、若い個体とかマジっすか……。

 

 討伐後は先ほど聞いた通りで、戦闘が終わって少ししたら俺が息を引き取ったと。で、手足の向きがおかしくなっている若干アレな状況になっていた俺を、ここで埋めるか連れて帰るか話している時に、たまたま通りすがりの司祭様が現れて蘇生させてくれたと。アレって何ですか、やめてよ。想像したくない、想像したくない。

 さすがにすぐに意識が戻るわけではなかったので、リーダーのあの戦士さんが騎乗生物に乗せて運んでくれたんだって。お礼に行かないとね。普段どこにいる人なんだろう。兵士にでも聞けばわかるかな?


 とまあそんな感じで街に到着すると、そこからは先輩たちの手でこのシーフギルドに運び込まれてベッドで寝かされていたわけだ。


「今日は無理せずこのまま休んでおきな」


 そう言うと、サリーさんは部屋から出ていった。

 たしかに全快って感じではないし、素直にしたがっておこう。


 

 それにしても、助かってよかった。いや、助かってなかったんだけどさ……。

 通りすがりの司祭様って、よく考えるとタイミング良すぎだよな。もしかすると、ゲームでいう死に戻り的なことが起きたんだろうか。でも、本当にたまたまってこともありえるし、今後も出来るだけ死なないように立ち回らないとな。死に戻れると思って余裕こいてたらダメでしたじゃシャレにならないし。

 おっと。そうだ。一回死んだってことは、デスペナことテスペナルティがあるはず。

 

 袋の中に手を突っ込んで、ステータスプレートを取り出し確認してみる。

 あれぇ。なんかデスペナで経験値が減るどころか、シーフのジョブレベルカンストしてるんだが。どゆこと?


 ウーム。考えられる理由としては、サンドウォームを毒にしていたからそのスリップダメージ分の経験値がこっちに入ったってとこかな。倒すまでは気を失って瀕死ではあったけど、一応生きてたらしいし。

 減ってたら悲しいけれど、増えてるんだしまあいいか。ラッキー!


 続いてアイテムは、特に減ってないかな。大丈夫そう。

 そういえばヒドイ怪我をしていたらしいけど、多少傷ついたりして劣化してるとはいえ装備品壊れたりしてないな。ふっしぎー。

 愛用のウィークネスさんもいつも通りかな。ただあの時に毒塗ってるから、刃の部分には気をつけないとね。


 あとは、身体の状態を確認っと。さすがにしばらくは能力が低下したままとかかねぇ……って、え?

 状態異常の呪いの数が増えてるうぅぅぅ!

 ウィークネスさんの他に『砂漠狼の霊』ってなんですの?

 

 恐る恐るステータスプレートをつんつんと突いてやると説明文が表示された。

『治療に恩を感じテイムされようとしていたところ、対象者と共に死んでしまいそのまま呪いとなってしまった砂漠狼の霊』となっている。

 あーなるほど。あの時の親狼さんかな。でも、呪いって表現はちょっとショック。


 どこにいるんだろうと意識して部屋の中を見渡すと、足元にいて驚いた。しかも小さくなってるじゃん。どしたのよ。

 触れられるかなと思いながら手を伸ばすと、感触があった。さすがに体温までは感じられないか。でも、それ以外は割と普通の犬っぽいや。これはいいものだ。撫でてやると喜んで尻尾を振っている。

 餌とか必要なのかなと考えながら撫でていると、久しぶりに強制的に言葉が頭の中に入ってきた。【自身の血を与えることで成長させることが可能。尚、傷を直接舐めた場合その部位を回復させる効果がある】だそうで。

 なるほど、血で成長ね。ということはですよ、餌あげる度に俺は出血する必要があるってこと。マジカー。痛いの嫌だなぁ。

 そりゃあこれなら確かに呪いって表現にもなるか。優しめだけどさ。


 とりあえず今は、出血してないので我慢してもらおう。腹が減ったら言うようにしてくれたまへ。

 そういえば、子狼たちはどうなったんだろう。話に出てこなかったし、死んで消えちゃったのかな? 無事に逃げられたってだけならいいんだけどな。

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