終章-1
サーシャたちが暮らすハメリカ合衆国、そのトップが住まう宮殿はホワイトハウスと呼ばれる。
5km四方ほどのその建築物は壮麗な装飾もさながら、一坪につき一つといった割合で魔術的防護が構築されている。さらに警備兵はもちろん庭師やメイドといった人間の一人一人まで地方の格闘チャンピオン程度の実力を身につけている。
どんな怪盗であろうとも、このある種の要塞の図面を渡された瞬間に卒倒してしまうだろう。
そのホワイトハウスの中心たる執務室、この国の社会保障から戦争まで、あらゆる政を担う場所。そこには____良い表現ではないかもしれないが___カビの生えた年寄りとその側近が腰掛けるのが常だった。そしてお紅茶とサンドイッチでもつまみつつ、じっくりと政策の一つひとつを吟味する。おしゃべりに夢中になり、何も決まらないで会食などに繰り出すのも日常茶飯事。
さもありなん、ある程度歳月を重ねた国家というのはそういうスローペースな人間を国家元首に着けた方が安定するものだ。
しかし、今回ホワイトハウスの執務室に着いた男はやや毛色が違った。
「
鼻息荒く宣言する。
ぎらぎらと光る目、広い肩幅、染めた金髪。この大統領はここ百年の間の前任者とは明らかに違った。ある漫画家曰く、『不動産屋の感覚で政治をやる強引な男』。
この男が来てから、法案が通らない日はなかった......それどころか、日に数十件の法案を通過させたことがある。カマホモの禁止、髪ストローの禁止、etcetc。
そのダイナミックさは法的観点にとどまらず、公務員の10%を既に解雇していた。公務員をである。
今YOU'RE FIREDされた男は30年近くホワイトハウスで働いた、言うなれば内政のプロと言えた。ハメリカはもちろん、諸外国だってその腕前を舌なめずりして欲しがる。
男は当然、大いに慌てた。
「げぇーーーーーっ 何故です!?!?!?!?」
「理由がわからんのなら、それが答えだ.......。」
理由?
大統領の不法移民に対する❌❌を秘密裏に却下したことだろうか。
法案に反対票を投じたことだろうか。
いくらでも思いつくが、こんなことで命を捧げたホワイトハウスを去ることになるとは.......
「君の業務はこっちのメーロン・マスクが引き継ぐ。すぐに荷物をまとめて出て行きたまえ。」
大統領のそばには白Tシャツにジャケットという起業家スタンダードセットに加え、室内で帽子を被る馬鹿野郎がニンマリしていた。こいつが来た当初はすぐに追い出してやる、と思っていたのに。
「後悔しますよ。」
男は持っていた書類を暖炉に放り込み、大足で執務室を去った。それを見て大統領と馬鹿野郎が肩をすくめ、鍵を掛ける。
「どうする?」
「大した業務じゃないだろう。それよりも俺たちの時間が情熱的になる方がよっぽど大事さ。」
二人のまつ毛が触れ合っていく。
燃えていく書類の中には『辺境魔物牧場における反乱について』と題された書類があった。
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