第3話 原因と証明


 案の定世間の風当たりは酷く、どうにも肯定的な意見は皆無に思える。


 意見の大多数は「ふざけたことを言うな!」という物で、確かにこの広大なインターネットの中を探せば同じことを言っている人はいるだろうが、ある程度力のある企業の公式配信者となる『ロキ』がそういったのが問題だったんだろう。

 これがもしその後に懲らしめられるエンタメの世界であればそこそこの注目を集めたとして成功したかもしれない。


 だが、今回の動画の中に嘘は一つも無い。

 というか、


「誰も探索者が弱いの後のことみてないよねこれ」


 その後に今後の活動方針や弱いと言った理由なんかも言っているのだが誰もそれを注目していない。投稿者から見えるアナリティクスでも、その発言の後はぐっと視聴率が落ちている。

 そっちの方が重要なんだけどなぁ。


「それはそうですよロキ・・さん。いや様ってつけた方がいい?」


「サラねぇそういう言い方やめてよ。好きでやったんじゃないんだから」


 僕がパソコンを見ている横でそのように言ってくるのは月島つきしま沙羅さら。僕の姉のような存在であり、昔から何かと親と接する機会が少なかった僕の親代わりのような存在だ。

 ロキだと偉そうに名乗ったことをいじってくるが、そういうシナリオを描いたのは何を隠そうこの沙羅ねぇである。


「本当にこれでよかったの? いや、話題性のためってのは分かってるんだけどさ」


「もちろん。なにせそのままデビューしたところで信じる人は大していないんだから。」


 僕のデビューするための理由は動画の中で探索者が弱いからという理由だと言っていたが、正しくはあるが全てではない。


 影響力というものが欲しい。

 そのための手段を考えてくれたのが沙羅ねぇだ。


 そして僕の本当の目的はもっと先。話題性を得て、影響力を使ってもっとその先にある目的のために動いてる。

 それをするためには兎に角にも沢山の注目を集める必要がある。超級と呼ばれる世界の十二分の一では足りない。それこそ世界の全てを集める必要がある。

 最強の12人のうち一人なんてものは意味が無い。


「挑発するような態度に弱い発言の意味は分かるよ。ちなみに仮面の意味は?」

「あなたの顔は出したらそれだけで注目を集めちゃうから」

「注目を集めるのが目的なんだけど?」

「女が寄ってくるのが面倒なの!」


 それで迷惑するのが僕じゃなくてさらねぇな辺り良く分かんないよねぇ


「あんたがちゃんと対応しないから私がやらなきゃいけないんでしょ!」


 まるで僕の考えを読んだかのようなタイミングでツッコミが入る。軽く叩かれた頭が痛い。


「まぁいいや、とりあえず次の動画撮るよ。」


 そう言ってさらねぇをアシスタントとして動画を取り始めた。

 きっとこの動画は今では対して意味がない。

 でも、これは遅効性で効いてくる毒だ。

 誰にも気付かれないように静かに全身に回るその毒は、きっといつか致命傷へと変わる。


 今じゃないと意味がないんだ。

 誰もがロキのことをほら吹きだと信じているこの時じゃないと、意味がない。


『初めましての方は初めまして、ロキです』


 顔を仮面で隠し、ふざけた態度で、礼儀を知らない子供のように、僕はロキを演じた。



『たぶんこの動画は僕のチャンネルに投稿されているかな。名前は確かロキチャンネルかな。適当なネーミングだよね』


 ちなみにロキという名前はずっと前から決まっていた。

 紹介動画も含めて全てが綿密に決められていた計画だ。


『あんまりにも見てない人が多そうだから改めていうけど探索者が弱いって言ってるのはもちろん理由がある。ただ、結構注目を集めてるらしいから探索者についてあまり知らない人も居るだろうし初歩から説明に入ろうかな。』


『ダンジョンに入る探索者に限らず、この世界に生きる全ての人間に与えられているステータス。

 まぁここは説明の必要も無いと思うけどもしかしたらいるかも知れないよね。みんなが常識を知ってるなんて考えは良くないよね。当たり前を知らない人なんてそこらじゅうにいるんだから。』


 図星をつかれたように怒り狂うか、お前のことだろと批判をするか。

 頭に血が上った人の思考は操りやすい。


『ステータスに表示される項目は全部で四つ。レベルに種族に名前と所持スキル。』

『このステータスはとても便利で、ダンジョンでは相手の強さだったり何が出来るのかの確認に使える。地上では身分証明としてがもちろん就職とかの履歴書代わりに使える場所もあるんだったかな。』

『ああ、せっかくだし僕のステータスでも見せながら話そうか。』


 それだけいってカメラに見えるようにそのステータスを動かした。


レベル:44444444444

 種族:神

 名前:ロキ

 所持スキル:《ステータス改変》


『驚いたかな、驚いてないはずがないんだけど。見ての通り所持スキルの《ステータス改変》ってスキルで変えてるわけ。もちろん疑問があるよね?……だってこのスキル未発見らしいし?』


 事前に調査したところ当然、そのようなスキルの記録は存在しなかった。

 世界の、どこにも。


『まぁとりあえずこれは置いておこうか。』


 同時にステータスを消した。


『ステータスを人間が得た昔。……と言っても百年も経ってないんだったかな。その時から犠牲を出しながらステータスと同時に得たスキルを使って攻略をして、ダンジョンで得たアイテムを解析したりして今があるわけだ。』


 これは世界の常識であり、ダンジョンとステータスの出現によって新しく出来た宗教もあるらしい。既存の宗教もかなり協議やら経典の再編が行われたそうだ。


『そしてダンジョンの常識として、得られるスキルは個人差があり、人によってタンクが出来るもの、魔法が使えるものとタイプ別に分けられるってのが探索者の常識だよね。僕ちゃんと勉強したんだよね。』

『《水魔法》を得られる魔法タイプや逆に覚えない魔法タイプもいる。』

『当然、《魔力増大》だったり《精密射撃》だったりの魔法を補助するスキルばっかり覚えて肝心のなんとか魔法ってつくスキルを覚えられなかった魔法使いは何も出来ないただの案山子。』


『そう! 本当にただのお荷物として疎まれるらしいよね』


『そして、当然魔法タイプはタンクだったり物理アタッカーのような《身体強化》は覚えられない。』

『あとはたしか、どのタイプのスキルも全部少しずつとるような人も器用貧乏として蔑まれているんだったっけ』


『魔法スキルも基本的には決められた○○ボールとか○○ウォールとかの形じゃないと発動できないんだったよね。ゲームのコマンドみたいに出来ることは全て同じ、個人差なんてものは無くて、持ってるスキルが同じなら誰がやっても同じこと。』


 僕はまた、手のひら大の水の球を出し上に投げてはキャッチを繰り返す。


『これ』


 さらねぇがカメラを操作して球に向ける。


『こんなスキルに覚えはあるのかな』


『気づいてる人があまりに少なくてちょっと不安になっちゃったんだけど、ちゃんと一部の人はこれに言及してて安心したよ。ああ、この皮肉はつまり、ほとんどの人は違和感に気付かないくらいの馬鹿って意味であってるよ』

『ちなみに僕はタイプとしてはいわゆる器用貧乏。特に補助のようなスキルばっかりで探索者としてはそれはまぁ弱いと言われるタイプだね』

『それと《水魔法》なんてスキルも持ってない』


『この動画はきっとCGだとか言われるだろうし、もちろん今度これの証明をしてあげる』


『そうだね、明日の午後1時から』

『その時から渋谷のハチ公ダンジョンで配信をしてあげる』

『じゃあ、その時まで待っててね』


 それを最後に動画撮影を終えた。

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