私たちの歴史ー暖かい偽物たちへー
三七田蛇一
第1話 文学病の私
2024年12月28日(土)正午、薄暗い曇りの中私はバスに揺られていた。
なぜなら、帰省するためである。
しかし、帰省していち早く「記憶と歴史」のレポートを書かなければならない。
動機は少年の時からずっと好きだった歴史を追い求めるためなのか、
大学の単位が欲しいからなのか。よくわからない。
とにかくこのレポートを書かなければならないという思いが私の脳裏を駆け巡った。だが、懸念があった。
12月2日(月)大学で行われたゼミ発表の準備の中で私はおかされてしまったのである。「文学病」に。
この病はかつて太宰治や芥川龍之介を殺してしまったものと何ら変わりないものだ。症状は、何が本当で何が嘘なのかないし自分のしてきたことがすべて否定される、この世のすべてが「ニセモノ」に見えるものだ。
ただ最も恐ろしい点は‘りょうほう’にあった。
それは人との対話、歴史を読むというものである。
つまり、文学病を文学(言葉)によって治さないといけないという生き地獄に落ちなければならないことだ。
私は、なんとか地獄から生還したものの歴史を見ることでより深い無間地獄に落ちるかもしれないという恐怖感が心を曇らせていた。そんな年末年始のことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます