大切な時間

ニド カオル

第1話 巳年っぽい事

   巳年っぽい事


登場人物

 圭吾...夫

 詩織...妻


 幕


 リヴィングの炬燵に夫婦二人が各々、pcを開き、一見すると仕事をしている様に見える。

 圭吾はパチパチとキーボードを叩き、詩織はペンタブを使って絵を描いている様だ。


詩織「うーん...。」

圭吾「どうしたの?」

詩織「折角の巳年なのに、蛇っぽい事を全然してないよ。」


 間。


圭吾「巳年っぽい事じゃなくて、蛇っぽい事?」

詩織「そう蛇っぽい事。」

圭吾「今まで、干支の動物っぽい事とかしたことあった?」

詩織「無いよ。」

圭吾「無いだろ。」


 詩織、手首と肘を曲げ、手を蛇の様に立てて揺らす。


圭吾「蛇っぽいっていうか、それはジャッキー・チェンなのよ。」

詩織「ちょっと違うか...。」

圭吾「たまごを...。」

詩織「たまご?」

圭吾「丸呑みする。」

詩織「おお、」

圭吾「それを、んぐんぐんぐ、ぺって殻だけ吐き出す。」

詩織「出来るか!」

圭吾「ダメか。」

詩織「台本、書きなさい。」

圭吾「絵、書きなさい。」


 間。


圭吾「ネズミに巻き付いて...。」

詩織「おお、」

圭吾「きゅーっと締めて、丸呑みにする。」

詩織「丸呑みから離れよう。」

圭吾「それを、んぐんぐんぐ、ぺって毛だけ吐き出す。」

詩織「たまごの殻で出来ないんだぞ。」

圭吾「ダメか。」

詩織「台本、書きなさい。」

圭吾「絵、描きなさい。」


 間。


詩織「インド人の吹く笛で...。」

圭吾「操られるのか?」

詩織「レッドスネークカモン!ぴーひゃらら」


 圭吾、片手を蛇の様に立てて揺らす。


詩織「イエロースネークカモン!ぴーひゃら」


 圭吾、もう片方の手を蛇の様に立てて揺らす。


詩織「出来た。蛇っぽい事が出来た。」

圭吾「よし、これから巳年にはインド人の笛で...あっ...ゼンジー北京は中国人。」


 間。


二人「ゼンジー北京は日本人。」

詩織「コーヒー飲みましょう。」

圭吾「コーヒー飲みましょう。」


 二人、立ち上がり、キッチンへ向かう。


詩織「さっき聞き流したけど、巳年っぽい事って何?」

圭吾「はいはい、コーヒー淹れるで...。」


 二人、退場。

 幕


第一話 巳年っぽい事 終

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大切な時間 ニド カオル @nidokaoru05

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