ここはどこ?
猟師達からの暴行を耐え抜いて、軽く意識が飛んでいたバグスが、意識を取り戻した。
「… 終わったのか…」
しかし、周りは静寂に包まれており、誰の気配もしない。
恐る恐る目を開き、少しづつ周りを見渡す。
そこは、もはや誰も居ない森の中で、ただ一人、バグスのみとなっていた。
「今度は置いてきぼりかよ…」
とボソッと言うも、ここが何処か分からず、帰り道も必死に着いて行ってたので分からずしまい。
途方に暮れながら、ゆっくりと森の中を歩いて行く事にした。
何度か顎に決まった蹴りの所為で、頭痛が止まらず、身体の痛みと頭痛で思う様に身体が動かないが、それでもなんとか、森の中を進んで行った。
その道が魔の領域へ続いてるとも知らずに…
何時間がたったのか、時間感覚はもはや全く当てにならなかったが、時々差し込む日の光の色にまだ昼を少し超えた時間帯だと把握は出来た。
森の中を彷徨ってる途中に見つけた食べれる木の実と花を拾ってたので、食事にする事にした。
身体を預かれる大木の下のウロで食事を終えて、軽い休息についた。
一息ついて、アザだらけの身体をさする。
「あいつら、無茶苦茶しやがって、何が戦士だ!クソゴミムシ共め!くそぉぉ…」
突如、どうしようもない涙が溢れ出てきた。
孤独と痛みと恐怖が休息する事によって、一気に襲って来たからだ、人目も、と言っても人なぞ居ないが、気にせず、大声を出し泣き叫んだ。
声が枯れると思う位の自分なりの出せる大声で大泣きした。
ある程度、泣き叫んで、気持ちが少し落ち着いた頃、突如、激しい頭痛が襲ってきた。
今まであった頭痛を遥かに超える頭痛が襲って来たのだ。
その少し前、人の声で騒いでる音を魔物が聴き取った。
一匹の猿の魔物だった。
序列的には一番弱い最下層のレッサーモンキーだったが、自分よりも弱い存在なのは分かったので喜び勇んで声の元へ走って行った。
そう、バグスはもう魔の領域へ入って居たのだ。
激しい頭痛に悲鳴をあげていたが、痛みの他に何かが産まれ出て来る様な感覚もあった。
(あと少し、あと少しで何かが出てくる!怖い!俺はどうなってしまう!助けて!ママ!パパ!)
何がもう少し産まれて来そうな感覚が最高潮に感じ、あとほんの少しっ!!!
と言う所で、強烈な衝撃が顔面を襲う。
握り拳位の石が顔面に投げ込まれたのだ。
鼻が折れ、前歯も折れ、口の中も裂けて、ボタボタと流れ出る自分の血を見て、何が起こったのか分からなかった。
その少し上を見ると自分にぶつかった石が転がっており、この石が投げつけられたのを、ようやく理解した瞬間…
『ゲッゲッゲッ』
愉快に顔を綻ばせ、手を叩きながら、草の中から、体長50cm程の猿が出てきた。
バグスは初めて見る魔物に恐れ、混乱した。
(アレはなんだ!!!あんなのが森の中に居たのか!!!)
(てか?アレが初エンカウントのモンスターか?いきなりピンチバトルイベントッスか!!!)
(どうしよう!助けて!!!パパ!!!ママ!!!僕はどうしたらいいの?!?)
(でも?よく話のネタ的に鑑定してみる?どうやんの?ん〜?無理だわ!無いわ!)
(俺、何更なる混乱してるんの?アホなの?どうでもいいから逃げるしかない)
(まてぇ〜ぃ!経験値ですぞ?経験値をみすみす逃すのですか?アホですか俺?)
(あれっ? ヤバい俺狂ってきてる… 終わった…人生ここまでか…短かったな…)
(とりま、ステータス開っ…けたな?)
(何が起きてるの?何コレ)
目の前に文字が並んだ板が現れていた。
名前 バグス
レベル 1
職業 下民
スキル なし
P=0
(ん〜?横フリックかな?あっでけた)
スキル 骸骨召喚
骸骨兵装
×無外形召喚
×無外形強化
×頭骨爆弾
(序盤ですな〜…まだあるやろ?確か?)
スキル ×配下強化
×配下増設
×配下能力+
×レベル上限突破
(これだけか?他は?)
スキル ×異界からの召喚
×透明化
×ダメージリフレクション
×マウント召喚
(マジかぁ〜… レベル上げんとな〜…なんも出来んわ)
(って?はぁ?何が起きてんの?俺?何が起きてる?)
(もちろん、覚醒してスーパー…俺誰だっけ?)
ジャリッ…
足音に気が付き、ハッと猿の方を見ると、ニヤニヤしながら目の前に立って居た。
口の中に見える涎を垂れ流しながら、滑りのある大きな牙を剥き出して。
「骸骨召喚、骸骨召喚、骸骨召喚、骸骨召喚……」
何度言ったか分からない位、今の自分が使えるスキルを叫んだ!!!
突如、土の中から1体の骸骨が姿を現せて、猿の後ろに立っていた。
骸骨が俯いてた顔をあげた途端、猿に襲いかかった。猿もビックリして、戦おうとするも不意に襲い掛かられ転倒、倒れてる猿を骸骨が殴る蹴るなどをする。
逃げようとする猿の上に跨がり抑えつけながら、更に殴る。
とうとう、猿が弱り瀕死になっていた。
バグスは弱った猿の上に跨り、投げられた石を持ち、後頭部へ何度も叩きつけた。
何度か石を打ちつけた所、やっと猿の魔物は死んだ様でバグスの中で何かが開花した様な気分になった。
ふと、さっきの言葉を呟きたくなり、呟く。
「ステータス」
名前 バグス
レベル 3
職業 下民 12
スキル なし
P=2
「レベルが、上がった… 俺のレベルが上がった」
(すぐあのスキルに振らなければ!)
骸骨兵装 1
迷う事なくスキルを一つ試しで振ってみる。
(間違いないわ!これで勝てる!)
謎の無双気分が込み上げてくるも、現状がどうしてこうなってるのかも、バグスにも分からない状態で、今のバグスの心情はとってもカオスな事になっていた。
骸骨兵装 2
迷わず続けて、コレに振った。
状況を説明するなら、
骸骨兵装 0
ただの骸骨
骸骨兵装 1
ナイフを持った骸骨
そう、スキルに振るだけで1体の骸骨がナイフ持ったのだ。
バグスの知識にも装備次第で強さがモノを言う事を知ってる、あまりにも破格なスキルであった。
頭の中からも「次は5まで振れば…」と言う期待してしまうフレーズが響いていた。
バグスはとりあえず、折れた鼻などを応急処置して、宝の山であるこの猿の魔物をどうするかバグスは悩んでいた。
牙と毛皮は換金出来る素材であり、50cm位ではあるが食料としても利用されている宝の山。
それを放置して、次へ!
…はバグスには出来そうも無かった。後ろで待機している骸骨に頼んでみたら、解体をしてくれた。が、ズタズタのボロボロで、素材として価値があるのは牙のみとなった。もし、バグスも解体していれば、同じ様な出来の解体をした筈だ。その場面は猟奇的な状態になったが、牙と肉は取れたので今回はokと言う事にした。
そして、改めて周りを見渡す。
日も落ち目に入り、薄暗くなってきてた。
(ここは何処だろ?)
(マジでここは何処だ?異世界デビューで迷宮スタートは難易度高過ぎない?!?)
迷宮スタートってなんだよ?と自問自答するバクスが佇んでいた。
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