第四話 祟りデスゲーム

     ※


「昨日、お前が関わったものは、【呪い】といえるだろう。【呪い】と【祟り(たたり)】は、似ているようで違うものだ。【呪い】は、特定の相手に関して不幸を願う悪意のある行為。現在では、【呪い】の力が強すぎるものが【祟り】と考えられている。昨日のことは、取るに足らない【呪い】だ」


 あいさつをして、謝る前にはじまった話。私は、ついていけず、デスクの椅子に座る高良夏羽(こうらなつは)を見つめるしかなかった。


 濃いブルーのサングラス、ウェーブがかかった長めの髪の毛。着ている長袖のパーカーとスキニーは黒。細身で、組んでいる足は長い。

 ここ数日、毎日顔を会わせている高良夏羽は、まだどんなひとかは分からない。


「昨日のことは、気に病むようなことではない。お前が、俺に謝ることではない。お前は、前回もだが、昨日もよくやっていた」


 私は、分からないけれど、彼に感じていることを返した。


「……高良さん。私のこと、すごく心配してくれて。ありがとうございます」


「なぜ、俺の言動に傷つけられているのに、礼を言う。お前は、【クシナダヒメ】の依り代で、まだ力を持たない。国の保護対象となり、自分を守るひとをそばに置かなければいけない。俺は、お前を守るよう、国から言われているが。別のひとに変えることも出来る」


 私は、彼と自分の関係をはじめて知り。少し考えてから口を開いた。


「……嫌ですか。……私を、守ってもらうこと」


「嫌なわけがないだろう。俺は、自分以外が、お前を守るのは嫌だ」


 すぐに返ってきた答えに、とても驚いた。


「これから、態度をあらためるようにするが。俺は、お前を傷つけてしまうことがあるだろう。お前は、自分が傷つくよりも、他人が傷つくことに心を痛める。俺は、お前を利用し傷つけようとするものは、ひとであろうとようしゃなく傷つけるだろう」


 私は、これまでの彼の言動を振り返り、少ししてから言った。


「……加減をして下さい。……私は、大丈夫ですから」


「お前が他人に対して心を痛めるよう、俺は同じように腹が立つ。優しい罪のないものが、ひとや【イガキ】にいいようにされるのは我慢ならない。母親のようになることは許さない」


 とても強い言葉を吐いたあと、彼は「すまん」と言い。


「俺は、お前を守りたいと思うが。どうする」


 じっと、サングラス越しの瞳に見つめられ。私は、なぜか、ずるいなと思った。


「……高良さん。どうして、私の名前を呼んでくれないんですか」


「名前は、とても強い【言霊】だ。前回の女子高生には、お前のことは「ひな」だと伝えていた。【イガキ】に操られているひとに、名前を教えるのは危険なことだと覚えておけ。話がそれたが、俺に名前を呼ばれるのは嫌ではないのか」


 「嫌じゃないです」と返すと、「そうか」と言い。


「ひなた、お前を守らせてくれ。これからは、傷つけないように気を付ける」


 高良夏羽が言ったことに、胸がしめつけられているのを感じ。


「……あなた。本音を隠さず、今生でも守って下さいね」


 口からもれたことに、とても驚き。扉が大きく開かれた。


「ちわっす! ふたり仲直り出来たみたいっすね! 姫、俺とも仲直りして、仲良くして下さい!」


 今日も元気よく一樹が現れ。私の前に立ち、片手を伸ばしてきた。


「昨日は、ごめんなさい! 俺、姫の気持ちが分かるよう、がんばるっす! これから、仲良くして下さい!」


 昨日、外が落ち着いてから、ひとり駅に向かい。次に会うときは、気まずいと思っていたけれど。

 私は、「お願いします」と言い、一樹の温かい手を握り顔をゆるめた。


「一樹、仕事はどうした、父親に何て言ってきたんだ」


「夏羽さん、やきもち焼すぎ! 姫を守るの、俺もなんですからね! ひとりじめは出来ませんよ!」


「ひなたから手を離せ。俺ひとりでも十分だ、一樹の出る幕はない」


「うわあ! 姫、夏羽さんが調子にのってる! 大人のくせに、大人気ねえ!」


 一樹が私から手を離し、「ねえ!」と明るい笑みを浮かべ。高良夏羽が「うるさい」と、じろり一樹をにらみ。私は、小さく笑い声を上げてしまった。


「姫、かわいい! やっぱり、姫は笑ってるほうがいいっす! 夏羽さんディスったら、もっと笑ってくれますか!」


「一樹、調子に乗るなよ、父親に言って出禁にしてもらうぞ」


「ふーん、そう言うこと言うなら! 【宝なつは】のこと、姫に言うよ!」


 そう言ったあと、一樹は長い足に背中をけられた。


「恥ずかしいことのように、脅しのように言うな。俺が使う【宝なつは】は、情報収集に役立てているだけだ」


「じゃあ、姫に教えてあげなよ! アニメの美少女の身体と声で、ネットで配信してるの!」


 一樹がもう一度けられ、私は「やめて」と言い。


「……高良さん。……もしかして、Vtuberをされてるんですか」


「そうですよ! 【宝なつは】って名前で、個人だけど五千人フォロワーいるんす!」


「一樹、黙って、出ていけ。ひなた、なぜVtuberを知ってる、忘れていないのか」


 高良夏羽が、私をじろりとにらみ。「忘れていない」が何をさすか分からず


「夏羽さん! 俺らの年代だと、Vtuberふつうに知ってるっす! アニメとかと同じカテゴリなんですよ!」


「同じカテゴリではない。キャラクターは似ているが、受動的なアニメと能動的なVtuberの配信は別のものだ」


「じゃあ、違うところ! 姫に、見せてあげて下さいよ!」


 彼は舌打ちをしたあと、PCの電源を入れ。私は、一樹に手をとられ立ち上がり、デスクのそばへ。


「俺は、Vtuberにこだわりがあったわけではない。今生では、ひとはネットの生配信に強い関心を向け、特に若いひとはテレビやラジオよりも身近に感じている。【イガキ】が好むのは、未熟な子供たちだ。だますのがたやすく、簡単に取り込むことが出来るからな」


 高良夏羽は、口を動かしながら、マウスとキーボードをあやつり。モニターに知らないアプリの画面が映され、モニター上部につけられたカメラの電源が点いた。


「配信をすることを相談したら、Vtuberになるよう言われた。収益は、提案してきた相手に全て渡している。実際に見せるほうが早いだろう。終わるまで口を開かず、動作を最小限にしろ」


 デスクの引き出しから取り出したマイクをセットし、マウスとキーボードをさわったあと。


『こんにちはー! 【宝なつは】だよー! みんな、今日もよろしくね!』


 高良夏羽とは正反対、高いアニメ声が部屋に響いた。


『今日は、なつはのお友達がいるの! 恥ずかしがりやだから、おしゃべりは出来ないんだ!』


 彼が、マイクに向け口を動かすたび、モニターの中の美少女キャラクターも。

 かわいらしい音楽とともに、高く元気な声を上げる。モニターの中の美少女の隣では、コメントの文字が上に早く流れていく。


『うんうん! みんな、元気そうだね! 何か、困ってることとかはないかな!』


 私は、あっけにとられ、モニターの中かわいらしい部屋に居る美少女を見つめた。


『うんうん! えっ、何それ! 【祟りデスゲーム】って、くわしく!』


 コメントの文字がとても早く流れるようになり、よく読めるなと思い。


『それ、なつはも出たい! え、なつはも出られるの! じゃあ、ここに居るお友達と出るね!』


 私は、とても驚き、声を上げそうになって両手でおさえた。


『配信者とリスナー参加型デスゲーム! 賞金は100万円! 優勝者以外は、リアルで不幸が起きる! 【祟りデスゲーム】楽しそうだね!』


 モニターの中、美少女がとても楽しそうに言い。モニター前に座る、高良夏羽は口の右端を上げた。


       ※


「俺はね! 結構、ゲームうまいんすよ! 優勝して、100万円ゲットだぜ!」


 Vtuber【宝なつは】こと、高良夏羽が配信を終えたあと。隣に立つ一樹が興奮した様子で大きく言った。


「一樹、開始時間までに、ネットカフェを回って情報収集してこい。ひなたは、ゲームをしたことはあるのか」


 一樹が「えー!」と不服そうな声を上げ、私はぶんぶんと首を左右にふった。


「一樹、さっさと行け。ひなたは、開始時間までゲームの練習をするぞ」


 一樹は「えー!」と言ったあと、部屋を出ていき。私は、「座れ」と言われ、高良夏羽がいつも座る椅子に座った。


「【宝なつは】の配信をどう思った。何か、思い出したことはあるか」


 隣に立つ彼が、ゲームの画面を立ち上げながら言い。私は、思ったままを言った。


「……すごかったです。私、高良さんみたいに出来ないです。Vtuberに生配信はしたことないですけど」


 高良夏羽は、私にゲームのコントローラを渡し「そうか」と言った。


「まだ、生配信を見たりはするのか。生配信をしたいとは思わないのか」


「……動画は見ますけど、配信は時間が長いので見ないです。……配信をするなんて考えたことないし、無理です」


 彼が「そうか」と言い。私は、先ほどの【宝なつは】の配信を見て、思ったままを言った。


「……すごいですね。コメントいっぱいもらって、リスナーさんを楽しませてるの。リアルで居場所がなくても、楽しく居られそうです」


「そんな風に考えるのは、やめろ。ひなたの居場所は、もうあるだろう」


 固い声で言われたことは、怖くはなくて。「はじめるぞ」と言われ、「はい」と明るい声を返した。


「このゲームはPCとゲーム機でダウンロード出来て、基本無料で遊ぶことが出来る。世界中で愛される障害物競争ゲームだ。様々なアバターに扮し、障害物をさけながらゴールを目指す」


 彼に教わりながら、モニターの中チュートリアル画面を操作し。アバターづくりを初めてした。


「……どうですか、かわいいですかね」


「うさぎやパンダを選ぶと思ったが。緑色のカエルが、一番かわいいと思ったのか」


 私は「ダメですか」と言い、


「ダメではない。このゲームのアバターの中、俺も一番好きだと思う」


 高良夏羽が言ったことに、顔がゆるむのが分かった。


「かぶらないよう、俺は別のアバターにしよう」


 別アカウントでログインしたあと、彼がアバターをつくり。


「……高良さん。実は、かわいいものが好きなんですか」


「実はとは、何だ。【宝なつは】のキャラクターに合っているものを選んだが」


 彼のアバターは、ピンクのふわふわしたうさぎ。美少女の【宝なつは】に合っている。


「確かに、かわいいものは好きだが。見ていると、心が落ち着いていくからな」


「……カエルちゃんのほかに、かわいいと思うものは何ですか」


 彼の発言を意外に思って、つい質問してしまい。「ひなた」と呼ばれ顔を向けると。


「ひなたを見ていると、かわいいと思う」


 高良夏羽に、じっと見つめられて言われ。少しして、意味が分かり。私は、かああっと、顔がとても熱くなった。


「ひなたを見てると、一緒に居ると落ち着くな。お人よしすぎてイラつくときもあるが、そんなところもかわいいと思う」


 続いた言葉に、我慢出来なくなり。心臓がばくばくしてるのを感じながら、「やめて下さい」と言った。


「本音を隠すなと言ったろうが。守って欲しいと言っていたが、やめたほうがいいのか」


 私は、彼から目がそらせず、ぐるぐるする頭で口を開いた。


「さっきは、勝手に口が動いたんです! でも、言ったことは、本心です!」


 大きな声で言ってしまったあと、


「そうか。何か変化があれば、すぐに言え。俺は、今生でも、お前を必ず守る」


 私と違い、彼はとても冷静に言った。


「ゲームの練習をはじめるぞ。このゲームは、ジャンプと進行と後退のコマンドだけ、ゴールまでたどり着けばクリアになるとても単純なものだ。プレイヤーたちはオンラインでクリアの順位を競うことになり、プレイヤー同士で足の引っ張り合いをすることもある」


 私は、「はい」と返して、色々鎮まるようゲームに集中しはじめた。

 単純と言われたゲームは、ゲームをしたことのない私にはとても難しく。お昼ごはん休憩を挟み、彼に教わりながら時間まで練習した。


「ただいま! 俺が、まじめに働いてるあいだ! ふたり、何かなかったですよね!」


「一樹、遅いぞ。早く、用意をしろ。何か、めぼしい情報はあったのか」


 部屋に戻ってきた一樹が、「姫!」と明るい笑みを浮かべ近づいてきた。


「夏羽さん、天然だから! その気になるようなこと、言われなかったすか!」


 「その気」と首をかしげ、


「かわいいとか、言われなかったすか?」


 私は、言われたことを思い返してしまい、顔がとても熱くなった。


「夏羽さん! 俺が気に入ったこ、ことごとくたらすのやめて下さいよ! 今生では、俺が、馬投げつけますよ!」


「うるさい。訳の分からないこと言ってないで、情報があればスマホに送れ」


「古からの、天然たらしが! 姫、夏羽さんには気を付けて下さいね!」


「一樹、黙れ、言われたことをさっさとしろ」


 「ばか!」と大きく言って、一樹はスマホをさわりはじめ。私は、高良夏羽とともに別室へ向かい、椅子をふたつ持ってきた。


 すっかり日が暮れ、四隅の間接照明だけの部屋は薄暗く。大きいデスクに、みっつ椅子を並べて私たちは座り。


「俺たちはチームとなるが、ひとりでも一番にクリア出来ればいいらしい。今日の【祟りゲーム】は、配信者とリスナー参加型だ。主催者は一番にクリアしたものに100万円を送ると言っている。競う様子は、各々ので配信をすることが出来る。主催者が雇った配信者が、全体を実況することになっているが。一樹、参加するものたちはどんな様子だ」


「実況する配信者と参加者全員にDM送りました! 主催者とはSNSのDMを通じてのやりとりだけ、面識はなくどんなひとかも分からないそうっす!」


「一樹、それぐらいしか情報はなかったのか」


「ひどい言いようっすね! スマホに送ったの見て下さいよ! 【オモイカネ】を探すの、めっちゃ大変だったんすから!」


 私は、「【オモイカネ】」と口に出し。


「ひなた、【オモイカネ】は知恵を司る神だ。アマテラスを岩戸から出す際、知恵を使ってなしとげたとされ。知恵の神としてまつられ、学業成就を願われる。現在、【オモイカネ】の依り代のひとは、神戸じゅうのネットカフェを点々としている」


 高良夏羽の説明を聞き、とても驚いた。


「【オモイカネ】は、スマホ持ってないすからね! おかげで、気配をたどりながら、須磨駅まで行ってきたんす! 姫、よしよしして下さい!」


 左隣の一樹が、派手な髪色の頭を寄せてきて。右隣に居る、高良夏羽のこぶしが落ちた。


「【オモイカネ】は、何かと頼られることが多く。依り代が偏屈なのもあり、俺らのようなものと交流を持とうしないが。仕事は、きちんとしてくれるようだな」


 一樹が頭を抱えてうなり、彼はスマホをあやつりながら言った。


「【オモイカネ】の情報によると、女子高生を操っていた【イガキ】と今回の首謀者はつながりがあるそうだ。今日の【祟りデスゲーム】で一位をとり、首謀者と対面出来るようにし話を聞く。ひなた、俺が助けるから、頼んだぞ」


 「えっ」ともらしたあと、「はじまるぞ」と言われ。目の前のモニターの中、【祟りデスゲーム】の配信がはじまった。


『はーい! はじまりました! 配信者とリスナー参加型【祟りデスゲーム】! 今回は、最高人数の50名参加となってます! 解説は、ウォッカが伴侶、ふぁることなっております! もういい感じになってますので、多少のミスはごようしゃ下さい!』


 テンションの高い声が聞こえ、目で追えないほど早いコメント欄とゲームの待機画面が映し出され。


「ゲームにログインをして、音声をミュートしろ。音声をつけるのは、俺だけでいい」


 高良夏羽に言われ、緊張しながら言うとおりにした。ゲームの待機画面に、私のアバター緑色のカエルが加わった。


『続々とプレイヤーが集まってきてますね! ゲームを開始する前に、お話したい方はいらっしゃいますか! はい! では、【宝なつは】さんどうぞ!』


 私は、びくりと全身が震え。


『こんばんはー! 【宝なつは】だよ! 今日は、楽しそうなゲームに参加出来てうれしいな!』


 高良夏羽が、マイク越しに高い声を上げた。


『【宝なつは】さん! 今回のゲーム参加への、意気込みを聞かせて頂けますか!』


『私、【宝なつは】は、絶対に一位をとります! 100万円はいりません!』


 『ええっ!』と、解説のひとが声を上げ。コメント欄も『ええっ』がたくさん早く流れた。


『どうしてですか! 賞金がいらないなら、どうして【祟りデスゲーム】に参加したんですか!』


『私、【宝なつは】は、怪奇なことが大好きなんです! だから、【祟りデスゲーム】をつくったひとに、会いたいんです! 一位にならないと、不幸になる! 【祟りデスゲーム】をつくったひと、見てますよね!』


『あっ! 少々、お待ち下さい! 主催者の方から連絡がありました! 【宝なつは】さん、あなたが一位になればお会いするそうですよ!』


 解説のひとが興奮した声を上げ。コメント欄に『おおっ』とたくさん早く流れた。


『面白くなってまいりました! 【祟りデスゲーム】の説明を、軽くさせて頂きますね! ルールは簡単、ゲーム内で一位になるだけです! 一位以外のかたは、【祟り】にあうだけです! これまで、【祟り】にあった方々は様々な不幸にあっています! 一番有名なのは、とある有名配信者が雷に打たれて入院したことですよね! まさに、【祟り】!』


 明るく楽しそうな声に、私はひゅっと背中が冷たくなり。


「大丈夫だ。昨日と違い、ひなたが直接何かされることはない」


「大丈夫っすよ! 姫を傷つけるものは、もう、近づけさせませんから!」


 右隣の高良夏羽が小さく、左隣の一樹が明るい声で言い。私は、思ったことを口にした。


「……ゲームに参加してる、……一位以外のひとは、どうなるの」


 高良夏羽が「安心しろ」と言い。


『あのう! もうひとつ、お願いがあるんです! 今回のゲームに参加したひとには、何もしないで下さい! もし、私のチームが一位にならなければ! 私ひとりが【祟り】を引き受けます!』


 【宝なつは】の高い声で言って、とても驚いた。


『【宝なつは】さん! 主催者から、連絡がありました! 【祟り】を引き受けてもいいけれど、50人ぶんの【祟り】を受ければ、命の保障は出来ないそうですが! それでもいいかと!』


『はい、【宝なつは】は、それでもいいです!』


『主催者は、了解したそうです! では、プレイヤーが揃いましたので! 【祟りデスゲーム】を開始します!』


 解説のひとがひときわ大きな声を上げ、コメント欄はとても早く流れ。


「安心しろ。ひなたは、一位になることだけ考えて、ゲームをプレイしろ」


 高良夏羽が画面を見つめて言い。私は、こくりとうなずき、コントロ―ラーを強く握った。


『みなさん、準備はいいですか! ゲームスタート‼』


 モニターの中、アバターたちが一斉に動きはじめ。私も、緑色のカエルを動かしはじめ、体当たりをされこけてしまった。


「おいっ! 姫に、何してんだよ!」


「一樹、妨害するやつに、やり返したり構うんじゃない。ひなた、大丈夫だから落ち着け、俺のうしろをついてこい」


 私は、すうっと息を吸って吐き。緑色のカエルの身体を起こし、ピンクのうさぎのあとをついていった。


「練習どおり、俺のあとをついてこい。他のアバターを気にするな」


 私は、右隣に座る高良夏羽が言うとおり、ピンクのウサギだけを見て。緑色のカエルを動かし、障害物と妨害行為を次々さけていくことが出来た。


『おおっと! 中間地点で、半数がステージから脱落してしまったあ! 中間地点のギロチンをぬけられることが、第一の関門となっております!』


 解説のひとが大きく言い、モニターの中大きなギロチンにアバターたちがいたぶられている。


「タイミングをよく見て、追い越されるのを気にするな。練習どおりにいくぞ」


「なんすか! 俺も、同じチームなのに! はぶらないで下さいよ!」


「一樹、お前は先に行き、妨害行為を引き受けろ。ひなた、中間地点を過ぎたら、一気に行くぞ」


「了解っす! 姫! 俺のしかばねをこえていって下さい!」


 「行くぞ」と高良夏羽が言い、私はごくりと喉をならしたあと。左右に動くギロチンの隙をよく見て、あと少しのところまで進み。白い猫のアバターに後ろから押されて、頭が真っ白になった。


「俺は、ここまでだ。ひなたなら、ひとりで大丈夫だ」


 彼が小さく言ったあと、モニターの中ピンクのうさぎが緑色のカエルの手を握り。ぽおんっと緑色のカエルは進行方向にほおられ、ピンクのうさぎはギロチンに吹き飛ばされた。


『おおっと! 【宝なつは】さんが、脱落してしまったあ! チームメイトは残ってますが、ひとりはサッカーボールのようにいたぶられております!』


「姫! 俺のことは気にせず、行って下さい!」


 解説の声のあと、一樹は明るく強い声を上げ。


「ひなた、行け。一樹の死を無駄にせず、一位をとれ」


 高良夏羽が冷静に言い、一樹は「死んでないっす!」と大きく言った。

 私は、モニターの中緑色のカエルを起こして、ゴールを目指して進みはじめた。


「妨害をされて、転んでもいい。ゴール前で、みな手こずることになるからな」


 高良夏羽が言うとおり、私は何度転んでも立ち上がり。先を進んで、何度も練習をしたゴール前に着いた。


「最後、トランポリンで飛び向かう空のゴールへは、タイミングだけでなくランダムで成功が決まる。ひなたなら、大丈夫だ」


「姫、いっちゃって下さい! 俺の死を無駄にしないで下さい!」


 高良夏羽と一樹に言われ、私は深くうなずいた。


 何時間も練習して、数回しかたどり着けなかった。このコースのゴールは難易度が高く、だからこそ【祟りデスゲーム】で使われると高良夏羽が言っていた。

 モニターの中空に飛んで地面に落ちるアバターたち。緑色のカエルをトランポリンの上に乗せ、タイミングをはかり思い切り飛んだ。


『ああっと! 【宝なつは】チームのひとりが、ゴールにつけそうだあ! このままいけば、一位だああああ!』


 解説の大きな声のあと、モニターの中の光景に固まった。


『ああああっ! なんということでしょう! 一位をそしせんと、物理的に足をひっぱるものが出てきたああああ!』


「おおいっ! さっきから、何やってんだ! このクソ猫!」


 解説と一樹が大きな声を上げ。モニターの中、空中で白いねこに足をひっぱられ、緑色のカエルの上昇速度が落ちたとき。


『ああああああああっ! なんと! なんということでしょうかあ! こんな展開ありなんでしょうかあ!』


「ええっ! 誰、この赤いカエル! 助かったあ!」


 解説と一樹が大きな声を上げ。突然現れた赤いカエルに下から押され、緑色のカエルが急上昇していった。


 私は、下に落ちていく、振り落とされた白い猫と赤いカエルを口を開けず見つめ。


「【オモイカネ】に貸しをつくった。【オモイカネ】は、ネット空間を自由にあやつることが出来る。ひなた、【オモイカネ】と会ってくれるか。助ける条件として、会わせろと言ってきた」


 高良夏羽がスマホをあやつりながら言い。私は、よく分からないまま、こくりとうなずいた。


「ごおおおおおおおおるうううう! 【宝なつは】さんのチームのひとりが、一位でゴールしました! おめでとうございます!」


 モニターの中緑色のカエルが雲の上でぴょんぴょんはね。ほっと息を吐くと、モニターの電源が切られた。


「ちょっ! 夏羽さん! 最後まで見させて下さいよ!」


「ひなた、これ以上、このくだらないゲームと【イガキ】と関わる必要はない。ひなたは温泉が好きか」


 高良夏羽は、一樹の声を無視して、私をじっと見つめて言い。


「……好きかは、行ったことないので分かりません」


「そうか、明日行くぞ。泊まりになるので、一日ぶんの用意をして三ノ宮駅に集合だ」


 私は、何を言われてるか分からず。一樹が、「ええっ!」と大きな声を上げた。


「なんなんすか! 泊まりで、温泉デート誘うとか! ふたりは、今生でも夫婦になるんすか!」


 一樹が言ったことが、少しして分かり。私は、「デート」に誘われたことに気づき、顔がとても熱くなった。


「【宝なつは】のSNSのDMに、【祟りデスゲーム】の首謀者から連絡がきた。明日、有馬温泉で会い、例の女子高生の件も話すとな。俺とひなただけで来いと言われた、ひなたが【クシナダヒメ】と分かっているからだろう。ひなた、罠かもしれないが、俺が必ず守ってやる」


 高良夏羽は、とても静かに固く言い。私は、顔の温度が急に下がり、急な展開に全身が冷たくなった。


第四話 祟りデスゲーム 了

 

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