第5話『俺と幼馴染』

キーンコーンカーンコーン!


「ああ、時間か。これで四限目を終了する。挨拶は…あー、まだ学級委員決めてなかったな。起立。姿勢、礼」


「「「「「ありがとうございました」」」」」


「ありがとうございましたー。ちゃんと復習しておけよ」


四限が終わって担任であり、数学の授業を受け持っている神谷隆一かみやりゅういち先生が教室から出ていく。


次は昼休憩だ。この間にご飯を食べないといけない。


「ねーお兄ちゃんは誰と食べる?」


そう後ろから話しかけてきたのは俺、早乙女逸希さおとめいつきの双子の妹である早乙女琴音さおとめことねだ。


「あーどうしようかな」


と、悩んでいると、また声をかけられた。


「なー逸希、一緒にご飯食べようぜ」


「一緒に食べよー」


そう言ってきたのは、先週俺が友達になった遠藤優太えんどうゆうた成瀬凑翔なるせみなとだ。


「ああ、じゃあ一緒に食べるか」


「お、ナイスー」


「琴音、じゃあそういうことだから」


「おっけーじゃああたしも友達と食べてくるねー」


「おう」


琴音は弁当を持って、すぐに後ろの席にいる七瀬柚葉ななせゆずはの席に向かい、三、四人の女の子を集めてご飯を食べだした。


柚葉は高校で再開した、俺の初恋の人だ。でも向こうは俺の事を全く覚えていないときたから困ったものだ。


「はぁ…」


「ため息なんかついてどうしたよ逸希」


「いや、なんでもない。じゃあ食おうぜ」


「うん」


俺の席の近くの席に二人とも座り、弁当箱を開く。すると―


「え!? 逸希その弁当なに? めっちゃ美味しそう。自分で作ったの?」


「あーこれは琴音が作ってくれて…」


「琴音って…逸希の後ろの席の子だよね? 仲良いの?」


「仲良いも何も、あいつ俺の妹だし」


「あー双子か。だから苗字が一緒なのか」


納得したように頷く2人は、琴音と俺の顔をチラチラして見ている。


「…なんだよ、全然兄妹に見えないってか?」


「あ、えっと…まあ、うん」


「まあ良く言われるし仕方ない」


そう、昔から俺と琴音は初対面の人から双子だと思われることはなかった。


なぜなら俺は琴音に比べてほぼ全ての面で劣っている。


頭の良さ、運動能力は最もで、俺が勝てるところは健康な身体くらいだ。


さらに、琴音はかなりの美人だ。中学生の時は人気すぎてほぼ毎日告白されるほどだった。


そして、俺はそうは思わないが、幼馴染で隣のクラスの酒井彩華さかいいろはもまた、俺以外から見れば琴音と同じくらい美人らしく、中学では男子の大半は琴音と彩華の事を好きだったらしい。


こんな奴らが妹と幼馴染だった俺はかなり大変だった。


「うん、やっぱり美味いな」


琴音が朝早く起きて作ってくれた弁当は、めちゃくちゃ美味しかった。


◆◇◆◇


その後、午後の授業も終わり、みんな段々と帰っていった。


俺は琴音と帰ろうとしたが、琴音は柚葉を含めた友達と一緒に仲良く話している。

この雰囲気をぶち壊すわけには行かない俺はそそくさと教室から出ていった。


「あ、逸希、帰り? 一緒帰ろ」


階段を降りている時にそう声をかけてきたのは彩華だ。


「ああ、帰るか」


「やったー! …あれ? 琴音ちゃんは?」


「呼ぼうと思ったんだけど友達と仲良くしてたから置いてきた」


「なーんだ。喧嘩でもしたのかと思ったよ」


「するわけないだろ」


「まーそうだね」


それ以降は特に会話もなく、校門から出て俺らの住むマンションまで歩き始めた。


それでも気まずい雰囲気は無く、歩き続けているとマンションが見えてきた。


俺らはマンションに入り、エレベーターで五階まで登った。


俺の部屋である606号室の目の前になると、やっと彩華が口を開く。


「ねー部屋入っていい? 映画見ようよ」


「ああ、良いよ」


ガチャッ!!


「失礼しまーす」


「なんか飲む?」


「ジュースちょーだい。オレンジね」


「はいはい」


「逸希は今のところ高校生活どう? 楽しんでる?」


「まあまあってところかな」


そんな他愛のない会話をしながら、ゾンビモノのホラー映画を見る準備をする。


「ホラーにしてよー」


「お前この間一緒に映画行った時怖がってたじゃねえか」


「大丈夫大丈夫!」


「後悔しても知らねえぞ」


◆◇◆◇


1時間半程のホラー映画だった。正直、俺はホラー映画をだいたい見れるから怖くなかったが――


「うぅ…」


「だから言っただろバカかお前は」


「だ、だって見たかったんだもん…」


彩華はガクブルしながら俺の腕にしがみついている。


「お前近い。暑いって」


「ちょ、離れようとしないでよ…怖いんだって」


ここまで怖がられたら離れるわけにはいかないだろう。ただ、今俺は大事な事を忘れていた。


「待て…琴音帰ってくるの遅くないか?」


「ま、まさかゾンビに襲われたんじゃ…」


「縁起でもないこと言うなよ」


と、話していたら、玄関の扉がガチャっと開く。


「ひぃぃ!!」


馬鹿みたいな力で俺の腕にしがみついている彩華を落ち着かせようとすると、扉から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ごめん! お兄ちゃん! 帰ってくるの遅れた!! ―あれ? 彩華お姉ちゃん? 遊びに来てたんだー」


「はぁ…琴音ちゃんか…良かった…」


――そう落ち着いた彩華に対して、わけの分からない琴音は首を傾げていた。

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