二、累の死 2

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私は篠竹の籠に入れられて鬼怒川を流れていたらしい。それはちょうど累が死んだ年の秋のことだった。

 朝方に不思議な夢を見たミヲは、導かれるように鬼怒川に向かった。

 川霧が立ちこめていて、鬼怒川の淵はいつにも増して寂寞じゃくまくとしていた。

 なんということもなく川に向かって立ち、霧が少しずつはれていくのを見ていた。

 すると竹籠が流れてきた。ミヲの足もとでゆっくり一回転すると、そのままそこに止まり、中に寝かされていた赤ん坊がぱっちりと目を開け、ミヲを見たのだという。

 絹物の産着にくるまれた私は、生まれてから間もないようであったという。

「それなのに、おまえは大きな目でわしを見上げたんだ。連れて帰るしかないだろう?」

 ミヲはそう言って笑った。この話は何度も何度も繰り返し聞かされた。それほど私との出会に不思議ななにか、ありきたりの言葉で言うなら縁のようなものを感じたらしい。だが、縁などという言葉では言い表せない私とミヲや伽羅とのつながりがあるように思ったようだ。

 私は今年、二十六になった。自分が何者なのか、おぼろげにわかりかけてきたところだ。

 血は繋がっていないが姉である伽羅が、二代目与右衛門に嫁ぎ死んでしまった時に、自分がなにかすべきことがあって、この世に生まれたらしいことが、ふっと頭の中に閃いた。伽羅を失った悲しみが私を目覚めさせたのかもしれない。

 鬼怒川を流れてミヲに拾われたことも、あらかじめ決められたことのように感じる。

 私にやらなければならないことがあるのはわかったが、それが何なのかはいまだにわからない。

 なぜ伽羅は与右衛門のような男のところへ嫁ぐことにしたのか。それを語る前に、二代目与右衛門がどんなふうに狂っていったのかを話さなければならない。

 累を殺し、気に入らない女中を追い出した与右衛門は遠く離れた村から新しい女中を雇った。女中は若く、与右衛門の好みの女だったので、じきに妻とするのだった。

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