24.公開処刑!?
「お兄ちゃ~ん♡ な~んで私と遊んでくれなかったのかな~」
「……」
翌日の夜。俺は星宮アズサこと櫛引とともに配信に参加させられてしまった。
理由は言わずもがな。隣で圧をかけまくっている櫛引とお兄さんこと俺を非難するコメント欄で四面楚歌状態。
「あのな。俺だって色々忙しいんだよ。特に最近は一人の時間も少なくなっているから、一人の時間も確保してゆっくりしている。特に冬アニメが凄くいい作品が多いんだ。悪役令嬢ものなんだけど中身がおっさんのやつとか、他にも戦隊もの×異世界もいい。フィギュアスケートもの、後宮ものの二期、超強い受付嬢に元殺し屋のおっさんが主人公のやつ。追いかけるのだけでも大変だぜ」
「へー……」
なんっすかね。そんな冷たい目でこちらを見ないでくれ。
ちょっと今日の櫛引さんはなんとか二分の一のヒロインみたいになってません?
すぐに暴力を振るあの。いや、あのヒロインは可愛いけれども主人公の女体化の方が可愛いという。最初は女性ものの下着を嫌っていたが受け入れた主人公はその後、様々な衣装を着てくれるからいいぞ!
「待て。俺の話を聞け。アニメというものは今もいいかもしれないが、昔の作品もバカにできない。作画的には今の方が見やすいこともある。キャラデザも時代を感じるかもしれないが、今見ても色あせない良さというものがあってだな――」
く、櫛引さん。君のその左手。一体何を手にしているのかな?
カチャカチャとわざとらしくカッターの刃を出し入れしないでね?
それは紙を切ったりするものに使うんだよ? 君は一体ナニを切ろうとしているのかな?
「あの子、えっと……Iさん。イニシャルを使うがIさんと最近よくいることが多いのは事実だ」
いのりと一緒にいることが多くなっているのは事実。あの飛び降り事件もそうだし、俺の本当の正体を知っている謎の人物。あれ以来、いのりの思わせぶりな発言は減ったが、俺が元の世界に戻れる方法を知っているかもしれない以上、コンタクトをとって機嫌を取らないといけない。
上記のこれ☝を他の人に話したところで俺の精神状態の悪化を心配されるのがオチだろう。俺だって自分が違う世界から来た別人でこの世界は漫画の中だ、と言われても鼻で笑うことだろう。
「へ~Iさんね。随分と幼いみたいだけど、犯罪……」
「ちげぇよ! 偶然知り合って仲良くなっただけ! 幼いっつーけど、もう制服着る年ごろだっつーの」
「つまりお兄ちゃんの好みはロリ――」
「馬鹿野郎! 俺を何だと思ってんだ!!!」
どいつもこいつも俺のことを何だと思ってるんだ。
ったく。俺がそんな変態なわけないだろ。なぜ信じて……あ。
日頃の行いが悪いっすもんね……俺。
「あのな。レッテル張りはダメだ。そういうのが偏見と差別を生みだすことになる。今の世の中はそういうことを打破しようと――」
「でもおかしいよね? 年下でついこの間までランドセル背負っていた女の子と仲良くしているって、怪しいと思われても仕方ないよ思う。というか説明して?」
「説明してるじゃないっすか。変な関係でもなんでもない。だってやることといったらその子の家で遊ぶか俺の家に来るか。もしくは先輩の車に乗せてもらってドライブとか……」
「……」
櫛引の目に光がふっと途絶えてしまった。
「いや。遊ぶと言ってだな。ゲームするかその子が漫画を読むかくらい。あ、いや……俺のベッドを占領しているのが気にくわないが」
「……」
「ん? 妹よ、どうしたんだ? そんな黙り込んじゃって」
コメント欄も「あっ」というコメントが大量に流れて目で追えなくなってしまう。
何がそんなに「あっ」なのか説明してほしいくらいだ。
「あははは……あはははは!!!」
櫛引は壊れたおもちゃのように笑う。
「ど、どうしたんだよ?」
「お兄ちゃ~ん」
櫛引はそう言ってマイクをミュートにした。
「なんで? そんなにあの子がいいの?」
「いいとか、そういうんじゃねぇよ」
「だったら、私のことは?」
「そりゃあ、クラスメイトで友達の――」
「そうだけど!!! もっと……もっと私と遊んでよ……」
もじもじと櫛引は恥ずかしそうにカッターの刃をカチャカチャさせながら懇願してきた。それは懇願でもなくただの脅しっすよ……。
「はぁ……そうだな。そういえば配信もしばらく一緒にやってねぇもんな」
「!!! う、うん!!!」
「でもな。俺にはアニメが待っている。それをお忘れなく」
「うん! 一緒に見ようね♡」
「いや見ねぇよ……」
一人で視聴しながら腕を組んでニヤリとする。
そしてSNSで感想をみたり、一人であれこれ考察するのが一番楽しい。
アニメに興味を持ったら原作の漫画やライトノベルを購入して、アニメでは描き切れない描写や設定を見てさらにアニメ視聴に深みをもたらしてくれる。
「櫛引。お前もいのりと遊んでやれよ」
「あのごめんなさいロリコンの言うことはちょっと嫌なのでお断りしますし二度とそんなこと言わないでください」
「息継ぎなしで言うなっつーの!」
結局、その後の俺たちは視聴者の指摘するコメントに気づかず、一時間もミュートでゲーム実況をするのであったとさ。ちゃんちゃん。
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