第一章 神の病~病花が咲く前に~

第3話 神の病~ラカン・フリーズ~

 2002年8月1日、三鷹にて誕生したその少年は18歳の年に神の病に患った。自我の消失の最中、少年は神に至った。神の病、それは神になるための病だった。だが病状の悪化の末、神になれるのは選ばれた者だけだった。多くの者は死んで行った。


 少年は神の病を治す薬を開発するため、研究員となり薬剤の研究を重ねた。少年はその結果、永遠に生きる不死の薬を開発する。


 その不死の薬が出来てから世界は大きく変わった。不死の薬を求めて権力者達は争った。戦争が起きるのはすぐの事だった。


 だが、神の病を治す方法だけは分からなかった。神の病、それはフリージアのように美しかった。それは死だった。生きながら死んでいるようなものだった。それでも少年は幸せだった。永遠の時を至福に過ごせるのだから。


 2079年9月11日。

 彼が死んだ日、一輪の曼珠沙華が咲いた。


『時雨を喰らうリコリスよ、永遠に咲け』


 そう言い残して彼は花々になった。その花たちも枯れていく。残ったものは何も無い。結局全て無に帰る。それで満足か?


 死んだら無に帰る。

 何も残らない。

 それなら今を楽しんで。

 病花が散るのを待ち望んで。


 咲いたよ咲いた

 病花が咲いた

 秋には枯れて

 冬に散りゆく


 そこに意味はあるか?

 何のための人生なんだ?

 生まれた意味は?

 生まれた訳は?


 神よ、仏よ、僕は分かってた。死に行くことも、全ては無だということも。神の病が完治すると、その人は神様になれる。神に帰れる。元いた場所へ。それでいいのか?


 元いた場所に還るのが輪廻の終わりか?

 第二の場所を、第二の神を創る旅ではなかったか。神は一人ぼっち。だから世界を創ったんだろ。病花は、神の病は人間に仕組まれたプロットそのもの。世界永遠平和の日のために、神のために、そのための人生だろ。神と生き、仏となり、世界を変えろ。君にならできるよ。


 神の病~ラカン・フリーズ~

 末期エピソード

 ラカン・フリーズの門が見える

 その門の先に答えがある

 彼は最高天に至った

 ラカン・フリーズの門の前に立って、その先の景色があまりにも美しかったから、見惚れてしまって、でも、彼は引き返した。その美しさをみんなに伝えたかったから。まだ人間としてやり残したことが多かったから。


 創りたいものが沢山ある

 大学生になりたい

 バイトもしてみたい

 恋をしてみたい

 純粋に彼自身の願いのために、彼は涅槃を諦めて、現世に帰ってきた。神殺しの儀だ。神は死んだ。いいや、彼の中の神性が消えたんだ。彼は戻ってきたんだ。人の世へ。


 彼は語った。

「仏だった時のこと、今も思い出す。神と繋がって、その景色は本当に美しかった。終末と永遠の狭間にいたような感覚だよ。時流はなく、全てが繋がって見えた。全てを忘れ、また知っていたから。だから僕は真に生まれてきた喜びに歓喜していた。死のうとなんてこれっぽっちも考えてなかった。2021年1月7~9日、2023年9月11~16日。この二度の悟りは本当に大切だった。僕が人生と向き合った時だった。その時僕は世界の中心にいた。時間的にも空間的にも世界の真ん中に僕はいた。全ての罪を背負うのも僕、原罪を犯すのも僕、太陽神・大日如来になるのも僕だった。妙法蓮華、宇宙の名前、仏の名前、神の名前。やはりあの冬の日とあの夏の日が全てだった。人生の極地。最高天。人生の完成。涅槃寂静。そのために僕はまた眠らない。眠らずに幾夜も超える。再び真理を悟るため。その記録を残すため。春休みになったら、2月になったら、断眠死、断食死を。サッレーカナーとラカン・フリーズを」

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