試験会場への帰還

暗黒星雲

第1話 それは白と水色の縞模様

 荒地の中でちょっとだけ盛り上がっている所。その中からドカンと飛び出ている岩塊。


 黒くて艶があって、とにかく大きい。

 三階建ての家くらいありそうな大きさだ。


 ウルファ姫はこの岩に上って周囲を確認すると言っていたんだけど、これ、どうやって上るの? 階段も梯子もないんだけど??


 私の心配をよそに、姫は少しだけ助走してからほぼ垂直にジャンプして、そのままふわりと岩のてっぺんに着地したみたいだ。


「姫、ウルファ姫!」

「何だ?」

「本当に、てっぺんまでジャンプしたの? ここからじゃ見えない」

「心配するな。足場は悪くないし、ここから見える景色もなかなかだぞ」

「そうなの? 遠くまで見えるの?」

「ああ」


 姫は黙って周囲を観測しているようだ。

 うん。邪魔しちゃいけないよ。

 私は静かに姫が降りてくるのを待った。


 一分……二分……刻々と時間は過ぎていく。黙ってじっと待ってるのは辛い。ほんの少しの沈黙さえ苦痛になるんだから困ったものだ。


「わかった、あっちだな」


 姫の声がした。試験会場へと帰る道が分かればしめたものだ……って、姫はそのままジャンプして宙に浮いてる。そこから落ちたら大けがしちゃう……って……でも姫はそのまま脚から降りてきた。


 ドスン! と結構な音量の地響きを立てて姫が着地したんだけど、制服のスカートが思いっきりめくれてて、ウルファ姫の可憐な下着がモロに見えちゃった……今日は白と水色のボーダーなんだ……ああ……興奮して鼻血が出そう。


「ティナ、あそこの道が例の廃村へと繋がっているのが見えた。途中で林の中を通っているが、一本道だから迷うことはないだろう」

「そうなんだね。迷子になっちゃったかと思って焦ったよ」

「心配ない。距離は概ね2キロメートル位だから直ぐに着くさ」

「うん、わかった」


 私とウルファ姫は手を繋いで歩き始めた。例の試験会場になっている廃村までは一本道だから迷うことはない。しかし、もし何か罠を仕掛けるなら……林の中は危険なんじゃないの?


「ねえ、姫」

「どうした」

「そこの林の中って、何か罠があるんじゃないの?」

「そうだろうな」

「でも、行っちゃう?」

「行く。罠があっても丸ごと吹っ飛ばす」

「わかったよ」


 うんうん。姫はやっぱり頼もしい。私も緊張感を保たなければいけない。油断は大敵だよね。


 

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