翼を得た巨竜たちの進撃
kakuyoku
プロローグ
ー 1944年(昭和19年)6月15日 マリアナ諸島サイパン島 ー
中部太平洋、マリアナ諸島に浮かぶサイパン島は、この数日間、地球上で最も地獄に近い場所となっていた。
理由は極めて単純で、サイパン島が戦場になっていたからだ。
1944年(昭和19年)6月15日、アメリカ合衆国は二年半前の真珠湾攻撃から開始された大日本帝国との全面戦争である【太平洋戦争】にケリを付けるべく、一二二平方キロメートルに満たないサイパン島を奪うため、サイパン島の南西部に位置するガラパン・チャランカノア海岸へ強襲上陸を開始した。
戦闘開始直後から、両軍の戦いは熾烈を極めた。
サイパン島を守っていた総兵力三万人の日本軍守備隊である第三一軍(第四三師団、独立混成第四七旅団、戦車第九連隊主力)は、二つの海岸に侵攻したアメリカ海軍第二と第四海兵師団に対し、水際での迎撃を図ったからだ。
具体的に言えば、前進部隊の二個大隊(事実上の捨て駒)による海岸での徹底抗戦と、第四三師団主力を投じた敵橋頭堡への夜襲になる。
しかし、この作戦は、サイパン島を取り巻くように配置されたアメリカの戦艦艦隊による火力支援と、海兵隊の粘り強い防御戦闘によって阻止されてしまった。
これにより、第三一軍は主力の過半数を失い、サイパン島の中央部にあるタポーチョ山を中心とした第二戦陣地に撤退を余儀なくされた。
撤退を余儀なくされた第三一軍にとって最悪なのは、サイパン島の上空に地上の将兵たちを支援する筈の日本陸海の航空隊の姿は、1機も無かった・・・。
日本の陸軍航空隊は、元々、マリアナ諸島には配備されていないことに加えて、海軍がマリアナ諸島防衛の切り札として見込んでいた基地航空隊、第一航空艦隊もグァムやヤップで散発的な攻撃をしているだけだった。
逆に、レイモンド・A・スプルーアンス大将が率いるアメリカ太平洋艦隊第五艦隊の航空戦力は、主力である第五八任務部隊と後方の護衛空母群を合わせて1.200機を超えていた。
現在、サイパン島の上空を飛んでいるのは、アメリカ海軍の航空隊だけ。
そんな中で、サイパン島を護る筈だった日本の陸海軍は、アメリカの圧倒的戦力の前に、もはや、風前の灯火だった・・・。
だが、アメリカによるサイパン島への猛攻開始の翌日。
何故か、サイパン島には静けさが戻っていた。
正確には、アメリカ軍の橋頭堡から重砲の射撃音は聞こえてくるが、それも散発的だ。
また、守備隊の頭上に藪蚊のように飛び交っていたグラマン戦闘機や観測機の姿も無かった。
サイパン守備隊の将兵たちに聞こえるのは、僅かな戦場音楽の他は、ジャングル内に満ちる鳥と虫の苛立たしい合唱のみだった・・・。
アメリカ海軍による艦砲射撃や空襲が行われていない理由は、ただ一つ、『彼ら』が来たのだ。
ー 1944年(昭和19年)6月16日 マリアナ沖 ー
サイパン島を護る守備隊を救うべき、航行する艦隊がいた。
小澤治三郎(おざわ じさぶろう)中将が率いる第一機動艦隊だ。
そして、小澤が旗艦としている日本海軍初の装甲空母『大鳳』が配備されている本体(第三艦隊)・甲部隊と乙部隊よりも先に航行しているのは、前衛部隊(第二艦隊)だ。
その前衛部隊である第二艦隊には、8隻の戦艦がいる。
その内の5隻の戦艦は、他の3隻の戦艦とは異なっていた。
特に、5隻の内、3隻の戦艦にあって、他の5隻の戦艦には無い『ある設備』があった。
それは船体中央部から後部に『飛行甲板』が設置されていることだ。
一種の『奇想艦』とも言える『航空戦艦』に生まれ変わった戦艦の名は、『大和』、『伊勢』、『日向』の3隻。
この3隻の航空戦艦が、太平洋戦争の雌雄を決する存在になるとは、誰もが予想していなかった。
一人の海軍将校を除いては・・・。
全ては、昭和17年6月22日の昼間、呉で発生した『あの大事故』から始まった・・・。
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こんにちは、@kakuyoku-no-tateです<(_ _)>
『鶴翼が放つ海鷲たち』、『蒼天の艦隊』に続く架空戦記第三弾です。
こちらは、【もしも、航空戦艦として『伊勢』と『日向』だけでなく、『大和』も加わったら?】と考えて執筆しました。
今回、『蒼天の艦隊』に登場した架空の人物たちも、主人公も含めて何人かは、そのまま登場させる予定です。
また、何人かの架空戦記の作者の架空戦記本を参考にしました。
新たな架空戦記、こちらも読んで頂ければ幸いです<(_ _)>
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