読了までの30秒

藤堂こゆ

爆発までの30秒

「お誕生日おめでとう」

 僕は彼女に小箱を渡した。バラ色の包み紙の、手のひらサイズの箱だ。

 中身はとっておきのプレゼント。きっと彼女は驚くだろう。


 彼女は大きな目を見開いて驚きと喜びを表した。

「開けていい?」

 かわいい顔で聞いてくるので、僕はもちろんと頷く。


 愛しい彼女の指が赤い紙をまさぐるのを、僕は胸を高鳴らせて見つめている。


 もうすぐ。もうすぐだ。


 白い箱が現れる。彼女は上目遣いで微笑んでから、嬉しそうに小箱を開けた。


 ――中に入っているのは、僕のとっておきのプレゼント。

 爆弾職人の僕の、とっておきの作品だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る