第7話

第七章:兄弟の絆と孤独


オオカミ少年と呼ばれていた利用者には、唯一の家族として兄が一人いた。その兄は憲作の同級生で、小学校の頃から筋肉質で、片手で50キロのバーベルを持ち上げるほどの体力を持っていた。当時からバキバキの身体をしており、周囲から一目置かれる存在だった。


兄は電気関係の仕事に就いていたが、カラオケの才能を活かし、夜の世界に身を投じた時期もあった。その後、建設業の鳶職人として働き始め、持ち前の体力で現場を支えていた。しかし、バイク事故に遭い、仕事ができなくなってしまった。結果として生活保護を受けることになり、弟の後見人としての役割を果たすには厳しい状況に追い込まれた。


この兄弟はどちらも独身で、両親はすでに他界していた。それぞれ一人暮らしをしており、兄弟間の関係も疎遠になっていた。しかし、オオカミ少年が市民病院に入院した際、弟から兄に「助けてほしい」との電話があった。これをきっかけに、憲作の事業所が支援に関わることとなった。


憲作の葛藤


憲作は、この兄弟の状況を知るにつれ、自身の弟との共通点を感じずにはいられなかった。自分の弟もまた、障がいを持ち、家族の支えが必要な存在である。オオカミ少年の境遇は、他人事ではなかった。


「家族の絆って、こんなにも脆く、そして強いものなのか…」


憲作は、兄弟の再会とその後の関係修復に希望を見出しつつも、現実の厳しさを痛感していた。自分の事業所がどこまで支援できるのか、そして家族としてどのように関わるべきなのか。答えの見えない問いに、彼の心は揺れていた。

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