第3話 中四国と一都三県

 岡山の職場に置いてあったチラシに、ふと目が留まりました。


『中四国最大の○○!』


 一瞬、言葉の意味を掴み損ねてから


「ああ、『中四国』って中国地方と四国地方を合わせた地域か。関東甲信越みたいな感じかな?」


 と思い当たりました。関東にいたらあまり聞き慣れない地域名です。

 しかし、岡山県の方々にとっては初歩的すぎる名称だったようで


「そこからか。岡南こうなんとか西川原にしがわらとかすらすら読めないとね」


 うーん、地名や人名は難しいです。岡山で有名な蒜山ひるぜんや、日生ひなせだって、来たばかりの頃は読めませんでした。


 地理や文化を学びながら、結婚した夫と新居を購入することにしました。新居の購入も初めてなので、調べながら決めることが多いです。

 夫の職場へ通いやすい場所に新築戸建て住宅を見つけて、不動産の方を通じて建設会社と話し合いをしました。


 建売住宅なので、元々ついていない設備はオプションでお願いするらしいです。私は大きな窓にシャッターがついていないことに気づきました。


「窓のシャッターはオプションですか?」


 建設会社の方に尋ねると、「ああ」と頷いて答えてくれました。


「岡山でシャッターをオプションで頼むのは、一都三県出身の方のみです」

「ええっ!?」


 隣の席で夫も呆気に取られています。


「シャッターってなに? 雨戸じゃなくて?」

「岡山に住んでいる方は、旦那さまのような認識なんです」


 それだけ治安が良いということかと合点がいきました。私の東京の実家は大きい窓にシャッター、小さい窓にも面格子がついているのです。

 職場でその話をすると


「一都三県ってなに?」


 と問われてしまい、シャッター以前にこちらでは一都三県が通じないのだなあと、改めて遠くに来たことにしみじみしました。

 東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県が一都三県ですが、馴染みがなければ知らない地域ですよね。


 建設会社の方に新居の鍵を渡されたとき


「きっと言われなくても大丈夫だと思いますが、ドアの鍵はかけてくださいね」


 と念を押されて、恐らくかけない方もいるのだろうと、防犯意識の違いにも地域差を感じました。


 治安が良いことは素敵なのですが、最近は物騒な事件も多いので、どの地域でも鍵をかけたほうがいいですよね。

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