鬼JK妖を討て

月影光貴

第一話 博物館の特別展示にて私は鬼になる

 私の苗字は鬼にまつわる苗字、五鬼継ごきつぐというモノ。大昔に改心した鬼の前鬼・後鬼の子孫だとか何とか小さい頃に教えてもらった。当時はへーと思いながらもそこまで興味は無かった為に数日前まではほぼ忘れていた。そして私は成長し東京の高校に行く為に田舎を出て15歳で一人暮らしを始めて今は5月に誕生日を迎え16歳になった。学校はまだ一年生で2ヶ月くらいしか通っていないけど楽しいし速攻で彼氏も出来て順風満帆の青春ってやつを味わっていた。だけど近くの博物館が鬼展覧会というモノを開催する事を知りふと昔の記憶が鮮明に思い出して、前鬼と後鬼って鬼の関連のモノもあるのかなと気になり、今日高校生割引で安く入れるとのことで博物館に入館した。


「彼ピと一緒に来たかったけど1人でも面白いモノだなぁ......ほへー牛鬼って鬼怖いな............これが頭蓋骨とされているモノかぁ......」


 そうして彼女は展示品を見て回ると平安時代に大暴れした鬼を封印したと言い伝えられている刀と甲冑に弓がガラスケースに展示されているのが目に入った。


「ほお、これが目玉なのかな?めちゃ人で溢れて見え難いし......えーっと刀の名前は童子切安綱か頼光の刀で本当は年に一回しか展示されないが今回は特別に......か。へぇ〜。こっちは星兜?頼光が酒呑童子?を討伐する時に神の化身からもらった?うさんくさいなぁ......弓は大嶽丸ってのを討伐する時に使われたモノ......私の身長より大きいけどボロボロで朽ちかけてんじゃん......本当に封印なんてされてんの?でもなんか惹かれるんだよなぁ......」


 彼女は人混みを掻き分け最前列に立ち説明を読んでボロクソに言う。だが彼女は目が離せずその場で暫く見つめていた。そして無意識ポールパーテーションを跨いでガラスケースに手を当てた。


「............」


 目が虚になりその場で立ち尽くす彼女を見つけた警備員は走って来る。


「ちょっ、ちょっと!お嬢ちゃん!紐の中に入るのもケースにも触れちゃダメだよ〜!」


 そうし駆け寄る最中に突然ガラスケースが粉砕され辺り一面に散るが彼女には一欠片も当たる事は無かった。


「子供の力で壊れたっ?きょ、強化ガラスなのに......?それよりお嬢ちゃん怪我はないか......!!?ヒッ!?」


 彼女の眼を見た警備員は怯えた、鬼だ。鬼の眼をしていたのだ。警備員が怯み、ガラスケース粉砕の騒ぎで客は逃げ惑い騒がしい中未だに立ち尽くす彼女。すると展示物の3つが浮遊し彼女の身体に入り込み、彼女自身も少し浮遊していた。


「ぐぁっ!!......はぁはぁ..................マジ?」


(本当だ、酒呑が選んだんだ。吾達を使ってせいぜい妖に物怪、幽霊の類のモノを屠れ小童よ)



 

 時はほんの少し戻り彼女の立ち尽くしていた時の精神内。ここでまさかの鬼との対面をした。


「ん......あ?あ!??ここどこ!?私心臓発作とかで死んだ?」


「そんな騒ぐな。まあ落ち着けよ、人間。それにしても小さいなぁ、5尺も無いか」


 そう話す者の方を向くといかにも鬼って感じの巨大な男が立っていた。


「お、鬼のくせに話し方が割とゆるいと言うか現代っぽいというか......夢?」


 そう困惑していると別の鬼が話しかける。


「夢......少し近いか?お前さんの精神内だ、ここは。吾らは封印されながらも外界の知識は取り入れているからな。でなければ互いの日本語は通じておらん。およそ1000年の差があると最早別の言葉よ。それより吾が美少女になっているゲームがあるなんて酔狂よなぁ......あ、意識して無いのにその美少女と同じ様な事言っちまった」


 ちょっと間抜けっぽい風に話す鬼に答える。


「はぁ......で何用でそんな有名でご立派な鬼さんが御用で?」


「吾らを見て怯まない......良い!やはり鬼の血が流れているのだな、しかし少し薄いのぉ......だがこうして封印が弱まり干渉出来た!のう?酒呑?お前の首も戻って来るぞ、改心したのに身体が無いままずっと放置だなんて人間は並みの鬼より惨いモノよ」


 そう言いながら、その鬼が顔を向けた方には首がない身長の高く爆乳でスタイルの良い者が立っていた。


「酒呑......酒呑童子!?あれ?じゃあ、あんたは茨木童子ね。......何でゲームみたいに酒呑童子が女なのよ?」


「元より女の恨みで鬼になったからのぉ......それが強まったのか女体になってしまったのだ。立派なイチモツが............」


「そんな事は良いから!あともう1人のTHE鬼ってのは展示品から考えるに大嶽丸?3万人を相手に勝ったんだっけ?」


「もうそんな前の事は覚えておらんよ、まあ並みの鬼よりは遥かに強い自身はあったなぁ......結局坂上田村丸共の連中にやられてしまったが............」


 何だか少しボケ老人の様に話す日本最強格の鬼。


「今はないの?てか何で私に話しかけるの?3人はいつも一緒に封印されていたの?てか酒呑童子は私の声聞こえてんの??首の切断面がだいぶフレッシュだけど......」


「酒呑は一応聞こえてはいる、会話するには触れなければならんのだ。そして今こうして3人が集まったのは奇跡なのだ、こんな展覧会が無ければ吾らは封印を打ち破る力は無かっただろう。そこから鬼の血を引く者が来るのに賭けていたところでお前が来たのだ。契りを交わし解き放つのだ。吾らを」


「まあ無理にとは言わんがな。どうせ俺が恨んでいた人間は全員寿命でおっ死んでるからな」


 と大嶽丸はどちらでも良い様な事を言うが酒呑はしてくれとジェスチャーで示す。


「契り?なに?私にもメリットあるの?何をするの?」


 そうしていると酒呑童子が茨木童子の肩に掴んでから彼女に話しかけた。


「改心した酒呑は今の日本を憂いている。吾にはそんなモノ感知できぬが妖怪や物怪、幽霊などの封印が弱まり復活し、それが事故や災害を招いているのだそうだ。それを倒したい、だが自身には現実に身体がない。だからお前の身体を使い悪を打ち砕くのだ......だそうだ。吾も大嶽丸も悪何だがな、アレだアレだよ......西洋風にいうならダークヒーローだ。どうだ?見返りは鬼として本格的に目覚めさせて不老不死にさせてやろうか?吾らが実体を持って復活後ならば世界を制するのも容易いだろう。吾らが叶えられる範囲で一つとは言わん!いくらでも願いを叶えてやろう!」


「............じゃあ、これだけは約束してね。絶対に普通の人を殺さない、相手が悪と言えど無意味な殺生を私の身体でするならば私は迷わずあんたらを道連れに自刃する。わかった?正直、漫画みたいな事が起きてウキウキしているから冷めさせないでよね?」


「本当に臆せず覚悟もあり物を言うな............面白いが危うい、調子に乗って無駄死になどは勘弁だぞ。それに酒呑は吾と大嶽丸が悪事を働けば切ると言っている。まあそう言う事だ、頼んだぞ」


 そう言うと大嶽丸が割り込んで言う。


「おい、まだ名を聞いてないぞ。名は何と言う?」


「私は......五鬼継いつき。よろしくね〜!で!何をすれば?齋ちゃんバンバン悪を断つよ〜!!」


 齋は身体をパタパタさせて巨大な鬼達を見上げている。


「......まず展示品の刀、甲冑、弓が体内に入る。そこから吾らの力が使えるが今は弱りに弱って、元々部下にしていた小鬼や邪鬼とも戦えるかどうか......ああ!不愉快だ!吾の腕を切り首を切った源の奴らめッ!!」


「そんなにヒスらないで、もう死んでるから」


「ああ、わかっとる!まあ蘇りの一歩を歩み始めた吾が結果的には勝ちかのぉ〜!」


 1人で浮かれている茨木童子を無視して大嶽丸が齋に言う。


「そういう訳だ、頼んだぞ。眼を覚ますから気をつけろ。俺らは現実世界では頭の中に直接語りかける、お前も同じ様に答えよ。では覚悟しろ」



 そうして目を覚ましたのである。


「はー......めちゃくちゃにガラス割れてんじゃん............ねぇ?そう言うのって超能力で物体を透けて体内に入るものじゃないの?体内に入る時だけなの?透け透けは?」


(いや、ガラスぶちまけた方が強そうかなと。お前には一欠片もかからん様にしたぞ?)


 と茨木は言う。


「馬鹿でしょ。私弁償するお金無いよ、しかも国宝の刀を体内に入れたよ?もう妖怪狩りやっている前に刑務所行きだけど?そうなるとさっき言っていた通り妖怪や鬼は事故を引き起こすね」


(嫌味かお前)


「嫌味以外に何が......って警備員さん腰抜けて動けなくなってる!」


 そう言いながら近づき手を貸してあげた。


「あ、あーありがとうございます............これは現実で、ですよね?はぁ......この展示物は本当に鬼が宿っているから触れるな......なんて言われていましたが本当だとは............」


「まあ、私もびっくりっすよ。で......これ弁償と言うか体内に入ったのとかどうすれば............ってツノが3本?生えてるっ!??」


 ライトの影から気づき頭を触り驚愕する齋。そしてもう後にも引けず、更にどうしようも無いので困り果てる齋であった。

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