第26話 兄さんと勝負

 兄さんは一度決めたら譲らない。


 すぐ意見を変えるお父さんと真逆のタイプと言える。


 そんな兄さんは、時には驚くほど柔軟になる。




「ごめーん。今手が離せないからどっちか買い物行ってきてくれない?」


 お母さんが受話器に手を添えて小声で私たちを呼ぶ。


 お仕事関連の話のようで電話横のメモ帳は備品がどうとかシフトがなんだかという走り書きでいっぱいだ。


 買う物を手早くメモして私に差し出す。


 居間でゲームをしていた兄さんにメモを見せると、画面から目を話さず拳を持ち上げる。


「これ必要な物だって」


「じゃんけんで負けた方が行こう。じゃーんけーんぽん」


 兄さんはグーを、私はパーを出した。


 ルールを決めた御本人さまの鼻先にメモを出す。


「はい。兄さんが買い物係ね」


「勝手に決めんな。三回勝負だぞ」


 こんなときだけ頑固者をやめるのをやめてほしい。


 私は内心で深いため息をついた。

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