第10話 クッキング父さん

 父さんは影響されやすい。


 そして、質が悪いことに影響されてそれを実践する。


 今朝はお料理上手なサラリーマンが主役のご長寿料理マンガを読破し、マンガに出てくる料理を作ると言い出した。


「どうだ、旨いだろう。これからは毎日俺が朝飯を作ってやろう」


「そうね、助かるわ」


 お母さんはお父さんの機嫌を損ねないよう気遣いを見せる。

 兄さんは無言で食器棚の下を漁り、お父さん秘蔵の夜食用カップ麺を取り出す。


「お前はどうだ。すごくうまくできたんだぞ」


「ああ、うん。オイシイネ」


 私もお父さんのために一応うなずく。


 食卓にズラリと並ぶのは茶碗蒸し。茶碗蒸しだけだ。


 作るのに一時間かかった。


 いくら美味しくても、毎朝出汁をとるところからはじめるのはどうかと思う。


 お父さんが飽きるまで、料理マンガのレシピ朝食は続くのだった。

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