第八章
ジョージの携帯に知らない番号から電話がかかってきたのは、ジョージがトニーの母親に伝えて欲しいと頼んでから一時間も経っていなかった。
電話の相手はトニーの母親エリザベス・オルセンだった。
「はじめまして。エリザベス・オルセンと申します。ノースケッティアさんのお電話で間違いありませんか?」
落ち着きのある柔らかい声だった。
ジョージは挨拶して、話が長くなるので都合が着いたら来てトニーに会ってもらえないかと過ぎるほど、大まかでざっくばらんに話すとエリザベスは息子から長い間、連絡がなく、こちらから電話したけど番号を変えたようで連絡が取れず、どうしているのか心配していた矢先のことだったので是非とも伺いたいと、二つ返事で了解した。
明後日には行くとのことで約束して電話を終えるとロバートに連絡した。
「マリア、トニーのお母さんと連絡がついたそうだよ。来てくれるそうだ」
ジョージとの通話を終えてロバートが話した。
「いつ、いらっしゃるのかしら…トニーのお母様なら私も是非お会いしたいわ」
「そうだね。長い間、トニーと連絡が取れずに心配していたらしいよ。明後日には着くらしい。俺は一緒に音楽活動していたから、その話もしたいし、スケジュールが合えば家にも来ていただこう」
ロバートはルドルフに連絡した。
ルドルフは、いつでも来て頂いても大丈夫だと答えた。
その日の午前中、ほぼ定刻に飛行機は到着してエリザベス・オルセンは、その国に降り立った。
迎えに行く約束をしていたジョージとロバートとルドルフは初対面でも間違うことなくエリザベス・オルセンを見つけて声をかけた。
トニーにソックリだったのだ。
黒い髪は肩で切り揃えたボブ、黒いロングコートを着てヒールの低いブーツを履いたエリザベスは約束していた目印を持つ三人の男性が自分を見つけて歩いてくるのに気付き自らも近づいた。
「はじめまして。トニーの母のエリザベス・オルセンです。息子のことで、御心配と御迷惑をおかけして大層お騒がせしたようで申し訳ございません。…やっぱり、すぐに判りました?似ていますでしょう」
エリザベス・オルセンは微笑んだ。
互いに挨拶を交わしジョージが名乗り、ロバートも一緒に音楽活動をしていたと挨拶をして、ルドルフはトニーが自分の診療所で暮らしていると話した。
「ザックリまとめますと、ジョージさん、が、あの子が付き合っていた方のお父様代わりで、ロバートさんが、あの子と音楽活動をされていたと…過去形ですのね。現在進行形で、記憶喪失になってルドルフさんの診療所に御厄介になっている、ということですね」
エリザベスは挨拶の後に落ち着いた様子で話した。
とりあえずはジョージのホテルにチェックインしてから、ルドルフの診療所に行ってトニーと会うことになった。
空港の駐車場からジョージのホテルに向かう途中のロバートの車の中でエリザベスはロバートに訊いた。
「あの子は、人にキチンと聞いてもらえる歌を歌えるようになりたいと言っていたんです。落ち着いたら連絡すると言って、それっきりで…ダンバーさんは、あの子と、どのくらいの期間、どんな音楽活動をされていたのですか?」
「ロックバンドなんです。後で、お時間ある時にDVDを御見せしましょう」
「過去形なのは、どうしてなんですか?」
「トニーが付き合っていたガールフレンドの体調が良くないから支えたいとバンドを抜けることになって…それと他のバンドメンバーも結婚したり復学したり色々ありましてバンド自体が一旦解散なんです」
エリザベスはため息をついた。
「そうですか…付き合っていた、と、それも過去形…なんだか色々と複雑そうですね…トニーが付き合っていたという方は今は、どうされているんですか?」
何から、どう話せばいいのだろうか…
エリザベスの質問は、なかなか尽きないだろう。話せば長くなる…
それでもロバートが答えようとした時にロバートの前を走っていたルドルフの車が合図して車を止めたのでロバートも止めた。
ルドルフは車から降りてロバートの車まで歩いてきた。
「今、ジョージさんとも話して考えたのだけど、オルセンさんは聞きたいことが沢山おありなのではないですか?息子さんにも早く会いたいでしょうけど」
エリザベスは大きく頷いた。
「そうです。早く会いたいですけど、あの子から連絡がなかった間、どうしていたんだろうと…今、ダンバーさんを質問攻めにしていたところなんです」
ルドルフとジョージは頷き、ロバートに提案した。
「それならばディナーの頃にオルセンさんには、うちに来て頂いて、どうだろう?音楽活動をしていた話を先に聞かせて差し上げては」
確かに、このまま殆ど説明もなく記憶喪失のトニーにショートカットで会うよりは…
マリアも会いたがっていたし…ロバートはマリアに電話した。マリアは大歓迎だと電話口で言い、急遽来てもらうことにした。
「では、寄り道で、一旦うちにいらしてください。色々お話しましょう…ルドルフさんとジョージさんも是非、御一緒に、いらしてください」
ロバートは車の方向を変え自宅に向かい、ルドルフはトニーに電話してディナーの支度を頼んだ。
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