モテる広瀬さんからのアプローチを、非モテ男子な僕は、なかなか信じられない。
空豆 空(そらまめくう)
第1話 バイト1可愛い女の子から一緒に帰ろうと誘われた。
「お疲れさまでしたー」
バイトが終わって帰るためにバックヤードに向かったら、ちょうど同じ時間にバイトを終えた女の子と一緒になった。
その子の名前は、
くりくりっとした大きな二重瞼に、絶やす事のない明るい笑顔。文句なしに誰が見ても可愛い顔で、とてもモテる。
対して僕は、うちのバイト内での
「あれ? 吉沢君も今から帰るところ? 私もなんだー」
「あ、はい。僕も今から帰るところです」
そんな僕に、いつも笑顔で話し掛けてくれるのは広瀬さんくらい。改めて広瀬さんのコミュ力を実感しつつ、だからこそ広瀬さんは誰からも好かれているのだなぁと思う。
実際、うちのバイト先には彼女目当てに通っている常連さんも多い。それなのに……
「ねぇ? 吉沢君って私と同じ歳だよね? なんで敬語なのー」
「え? あ、いや、……なんとなく?」
「バイトも終わったんだしさ、タメで……話したいな?」
彼女は時々やたら可愛い上目遣いで僕をみつめて、僕との距離感を縮めようとする言葉を言う。
いや、分かってる。それは彼女のコミュ力が高いからなだけで、そこに僕が期待するような好意はないという事を。
「あ……。考えときます。……じゃ」
だから適当な返事をして、さっさとその場から立ち去ろうと自分の荷物を抱えて出口の方へと向かった。
それなのに――
「え、ちょ、ちょっと待って!! 駅まで一緒に、帰ろ?」
広瀬さんは、立ち去ろうとした僕の袖口を咄嗟に掴んで引き留めた。
「……え?」
思わず振り返ると、広瀬さんと見つめ合うような形になった。間近で見ると、そのあまりに整った顔に思わず見惚れてしまいそうになる。
(うわー。可愛い。間近で見るとさらに可愛い。目とかくりっくりだし。肌とか白くて陶器みたいだし、神が作った造形物か?)
けれど、一緒に帰って広瀬さんにつまらない男だと思われるのも嫌だなと思って躊躇ってしまった。すると。
「……お願い。一緒に……帰ろ?」
広瀬さんはもう一度、今度は懇願するような瞳で僕を見つめた。
一瞬、本当に一瞬だけ。そんなに僕と一緒に帰りたいのかと思った。けれど、そんなはずがないと我に返るのも一瞬で。
こんなに誰からも愛されてる可愛い広瀬さんが、無口で無表情な僕なんかと一緒に帰りたいなんて、普通ならありえない。つまり何か理由があるという事。
ああ、そっか。もう外は暗いこんな時間にこんな可愛い女の子が一人で歩いて帰るのは危ない、だから誰かと一緒に帰りたい。そういう事か。
そう思うと、むしろそこに気付かなかった事に申し訳なさすら感じてしまう。
「ああ。すみません、気が利かなくて。こんな時間に女の子一人で帰るのは危ないですもんね……」
だからそう言ったのだけど。
「え? ……違うよ。……吉沢君と……もっと仲良くなりたいから、だよ」
広瀬さんは戸惑うような小さな声で、そんな事を言った。
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