第7話 宇宙と一体になる

 「宇宙の門」にたどり着いた葵は、これまで訪れたどの門とも異なる光景に圧倒された。そこには境界のない広大な空間が広がり、目には見えない柔らかなエネルギーがあらゆる方向から彼女を包み込んでいた。星々が瞬く夜空とも、日の光に輝く大地とも異なる、不思議な空間だった。


 「ここが最終試練の場、『宇宙の門』だ。」

 フィリオが静かに語りかける。「この門では、これまで活性化させた全てのチャクラを統合し、君自身の真の才能と使命を見出す。これまで歩んできた旅のすべてが、この瞬間につながっているのだ。」


 葵は深く息を吸い込み、その空間に立ち尽くした。体の奥底から、これまでとは異なるエネルギーが湧き上がってくるのを感じた。それはまるで、自分自身を超えた広大な存在とつながり始めているかのようだった。




 突然、周囲に一筋の光が現れ、それが八つの異なる色に分かれた。それはこれまでの旅で活性化させてきた各チャクラを象徴していた。大地の赤、水の橙、炎の黄、風の緑、声の青、知恵の藍、そして宇宙の紫。それぞれの光が葵の体の周囲で踊るように輝いていた。


 「これらの光は、君自身の中にある力の象徴だ。」

 フィリオが説明を続ける。「すべてのチャクラを調和させることで、君は宇宙のエネルギーと一体となり、自分の使命を見つけ出すことができる。」


 葵は目を閉じ、自分の体内を意識した。チャクラごとのエネルギーがそれぞれの位置で鼓動するのを感じる。そしてその鼓動が次第に一つのリズムとなり、全身を通じて響き渡るようになった。


 「私は……何をすればいいの?」

 葵は心の中で問いかけた。すると、宇宙のエネルギーが答えるかのように、彼女の内側にイメージが浮かび上がった。それはエネルゲアの世界全体を包み込むような光の流れだった。




 「君の使命は、エネルゲアの世界を癒し、調和をもたらすことだ。」

 フィリオの声が響いた。「君が目覚めさせた力は、すべての存在をつなぐ架け橋となる。その力を使い、エネルギーの流れを正しい方向へ導くのだ。」


 葵は自分の内側に広がるビジョンを見つめながら、深い感動を覚えた。それは単なる使命ではなく、彼女自身の存在そのものが果たすべき役割であることを悟った。これまでの旅がすべて、この瞬間のためにあったのだ。


 「でも、私はまだ……完全ではない気がします。」

 葵は不安げに問いかけた。


 「完全である必要はない。」

 フィリオが微笑みながら答えた。「宇宙の一部として、君はすでに完成している。ただ、そのことを信じ、行動に移す勇気を持つだけだ。」




 葵が全てのチャクラのエネルギーを統合すると、体の中心から眩い光が溢れ出した。その光は彼女自身を包み込み、やがて周囲の空間全体に広がっていった。瞬間、彼女は宇宙そのものと一体化したような感覚を味わった。


 過去も未来も、全ての境界が消え去り、ただ純粋な存在の感覚が残った。それは恐れも不安もない、ただ安心と愛に満ちた世界だった。


 「これが宇宙のエネルギー……」

 葵はつぶやき、涙が頬を伝うのを感じた。




 光が収まり、葵はフィリオとともに最初の扉があった場所に戻っていた。だが、以前の彼女とはまるで違う。全てのチャクラが調和し、彼女の中には確固たる使命と覚悟が宿っていた。


 「君はよくやった。」

 フィリオは優しく語りかけた。「これからは、君自身が他の人々を導く存在となる。宇宙のエネルギーは常に君と共にある。」


 葵は深くうなずき、フィリオに感謝の言葉を述べた。そして、彼女の新たな旅が始まる。エネルゲアの世界を救い、調和をもたらすために。


 「私はもう迷わない。」

 葵は自分の中に輝く宇宙の光を感じながら、確信を持って歩き出した。

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