第27話
行き着いたのは小奇麗な料亭だった。
駐車場の中にある車は多くはなく、どれもいい車ばかり。
門を潜れば美しい手入れの行き届いた庭園が広がっていて、建物はそれに囲まれている。
圭介のあとに続いて中に入れば、すでに相手側は到着しているらしかった。
案内されるまま長い廊下を進んで、一つの部屋の中に足を踏み入れる。
「お待たせいたしまして申し訳ありません」
圭介が先に入る後ろで、由良はいまだに庭園に目を向けていた。
「いえいえ、こちらこそ無理を言って申し訳ありませんな」
圭介に答えるようにして聞えてきた声は少し年配の声だった。
落ち着いた声に漸く由良は部屋の中に目を向ける。
着物をしっかりと着込んだ年配の夫婦。
それでも背筋は伸びていて品が感じられた。
その横に並ぶのは同じく着物を着こんだ一人の青年だった。
「由良、こちらが宇津宮 夏楓君。宇津宮の総本家の跡取りだよ」
「あ……」
その青年を見て、由良は思わず声をあげる。
目の前には黒髪に眼鏡をかけた青年。
最近では見慣れてしまった顔だった。
向こうもしばらく由良を見つめて、そして気づいたのか「君は」と口を開いた。
「あら、夏楓さん、お知り合いかしら」
思わず固まっていた夏楓は、その声ではっと我に返った。
「あ、ええ。おばあさま。実は彼女とは高校が同じなのです。僕の友人の知り合いでして、少しだけお話させていただいたことがあります」
(あ………)
しっかりとした敬語だった。
流れるような話し方は普段から使っている証拠だろう。
学校や嵐神でも比較的に礼儀正しい態度ではあるのだが、さらに洗練されたような感じ。
むしか今のほうが自然なような。
「あら、それならばちょうどいいですわね、旦那様」
「うむ。どうでしょう、榊さん。私たちは別室でお話をいたしませんか」
ここからは若い人たちで、というものだろう。
圭介はちらり、と由良に視線を向けてきた。
その瞳に映るのは心配だ。
知り合いらしい男と二人きり。
由良を溺愛しているといっていい圭介は不安なのだろう。
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