第11話

「今日は無駄に暑いからって様子見に来てみればこれだからな」


「まさか湊とタイミングが被るなんてよ」


ちっと吐き捨てるようにいう尊に、湊は「はっ」と笑ってみせた。



「私、倒れてないよ?」


食事を続けながらも、由良は弁解を試みる。


たしかに、以前何度か夏バテで倒れたことがあるのは事実だが、今回は寝ていただけだ。


倒れていたわけではない。暑くて疲れて眠っていただけ。


しっかりと自分の足でこの家まで帰ってきた記憶があるのだから間違いない。


「倒れてなくても倒れる寸前でしょーが」


「今日も何も食べなかったのか?」


ん?と聞いてくる尊の声は柔らかい。


「ゼリー、食べた」


みんなで、と付け足された言葉に尊の表情が曇った。


「……まさか、あいつらか?」


「あいつらって、嵐神か?」


湊の口から出た言葉に素直にうんと頷いておく。


事実だし隠すことでもないと思ったからなのだが、どうやら隠したほうがよかったらしい。


湊はそうでもないが、尊の顔が笑顔で固まっている。


笑顔なのは由良に向けていたからで、いつもならば確実に大の大人でも泣いて逃げそうな形相がその下にはあるのだと思う。


「ちっ。ガキどもが。俺の由良を連れ出しやがって。やっぱ一回しめるか……」


「ったく。大企業の社長が何言ってんだよ」


(みこ兄が手出したらほんとに潰れちゃうよ)


食べ終わったばかりのいれものをテーブルに置いて、由良は口を開いた。


「みこ兄が来てくれたから大丈夫だよ」


「そうか?なんかあったら俺に言うんだぞ?絶対だからな?」


「うん」


全く、どこまでも過保護な人間ばかりだ、と毎回のように聞くセリフに思わず頬が緩んだ。

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