【第二章略奪愛編】第10話 「闇が照らす道 - 聖女と精霊の契約」

はじまり


夜の静寂の中、私は水面に映る月を見つめながらそっと息をついた。聖女としての務めは果たしているつもりだったが、それでも人の光となることは容易ではない。


「リュナ、無理をしすぎるなよ。」


そばにいたカイリが心配そうに声をかける。彼は私を守るため、どんな努力も惜しまない存在だった。彼の温かさに支えられながらも、時に私は光を求めすぎて疲れてしまうこともあった。


そのとき、ふわりと黒い霧が漂い始めた。


「ん? 何かしら?」


霧の中から、黒衣の青年のような存在が現れる。


「やあ、リュナ! 俺はルクス、闇の精霊だ!」


闇の精霊との出会い


カイリは即座に私の前に立ち、警戒の構えをとる。


「何者だ? リュナに害を及ぼすつもりなら容赦はしない。」


しかし、ルクスは慌てて手を振る。


「違う違う! 俺はむしろ、リュナに仕えたいんだよ!」


私はルクスの言葉に興味を引かれた。


「どうして私に?」


すると、彼は胸を張り、まるで誇らしげに語り出した。


「だって、闇こそ癒しだからさ! 光は人を導くけど、強すぎると眩しすぎて道を見失うこともある。そんなときこそ、俺の力が必要なんだ!」


闇の優しさ


ルクスの言葉に、私は少し考え込んだ。


「例えば、疲れたとき、人は暗い部屋で休むだろ? 食べ物だって、闇の中で保存すれば長持ちするし、物書きも暗い空間の方が集中できる。 そして何より、星が輝くのも、広がる闇があるからこそなんだ!」


彼の考えは、これまでの私の信じていたものとは違う視点を持っていた。しかし、確かにその通りかもしれない。光は必要だけれど、それがすべてではない。


「……なるほど。」


私は小さく微笑んだ。


「だからさ、リュナ! 俺と契約してくれ! 眩しすぎる光で道を見失わないように、俺がそばで癒し、包み込む!」


カイリの警戒と決断


カイリは腕を組み、鋭い視線を向ける。


「……お前、本当にリュナを守れるのか?」


「もちろんさ! 俺の闇はどんな攻撃も飲み込んで無効化できるし、リュナの疲れを癒す力もある! それに、俺がいればカイリ、お前も少しは気を抜けるんじゃないか?」


「……お前の理論は理解できる。」


カイリは渋々頷いた。


私はそんな二人のやり取りを見ながら、そっとルクスを見つめる。


「ルクス、あなたの考えはとても面白いですね。確かに、光が強すぎると人を疲れさせることもある……。」


「だろ!? だから俺の闇の力が必要なんだ!」


「ええ。では—— あなたと契約します。これからよろしくお願いしますね、ルクス。」


新たな仲間と共に


ルクスは歓喜の声を上げ、両手を広げる。


「やったー! 俺の人生……いや、俺の精霊生涯で最高の契約だ!」


カイリは小さく溜息をつきながら、私の肩に手を置く。


「まぁ、リュナがいいならいいさ。ただし、俺の大事な人に妙なことをしたら、すぐに消滅させるからな。」


「ひえぇ……それだけは勘弁して!」


こうして、私は新たな仲間を得た。


ルクスの闇の力は、私の巡業において癒しの役割を果たし、カイリの技術と組み合わさることで、私の安全をさらに確かなものにした。


「さぁて! 俺は闇の精霊として、リュナの癒し係&カイリの牽制役として頑張るぜ!」


「牽制役はいらない。」


「まぁまぁ、そう言わずに!」


二人のやり取りを見ながら、私は静かに微笑んだ。


こうして、私のそばにはまた一人、新たな仲間が加わったのだった。

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