パラレル・ネモ:⁠聖女は護衛騎士に溺愛される

@lolo1980

第1話 序章リュナシアとカイリの絆

第1章 伝説の聖女


カイリが物語を初めて読んだのは、彼がまだ幼かった頃だった。

そこには、月の光と清らかな水を司り、人々に慈愛と献身を注ぐ「伝説の聖女」の話が書かれていた。


彼女は全ての命を等しく愛し、その手で世界を救ったという。

物語の中で彼女が見せた優しさと覚悟に、少年カイリは深く感動した。


「僕も、いつかこの聖女みたいに誰かを救いたい。」

その夢は、やがて彼の人生の目標となった。


転生者として新たな世界に生まれたカイリは、地球の知識を武器に、物理学や化学の研究を進め、魔法との融合を試みる。だがその過程で、彼の心の片隅にはいつも伝説の聖女の姿があった。



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第2章 聖女との邂逅


それから十数年後、カイリは「ポイント・ネモ」と呼ばれる浮遊都市にたどり着いた。

そこにいるのは、まさに彼が物語の中で憧れた聖女そのものだった。


リュナシア・アルノクス・カウラ――「リュナ」と呼ばれるその少女は、都市を潤す水を司り、月の輝きを結界に変えて都市を守る存在だった。


初めて彼女を見た瞬間、カイリは言葉を失った。

その姿はまるで、彼がずっと探し続けてきた理想の存在そのものだったのだ。


「君が、この都市を守っているのか?」

カイリは声を震わせながら問いかけた。


「はい、そうです。私はこの地に住む人々を守るために、聖女としての役割を果たしています。」

リュナの瞳には迷いのない決意が宿っていた。その姿に、カイリの胸は高鳴る。



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第3章 二人の距離


カイリはリュナの専属護衛騎士に任命され、彼女の側でその日々を支えるようになった。

彼女の穏やかで優しい言葉の中に隠された孤独を、カイリは敏感に感じ取る。


「リュナ。君は誰かに頼ることができないのか?」

「……聖女としての私を求められることはあっても、私自身を見てくれる人は少ないのです。」


その言葉に、カイリは心を痛めた。彼にとってリュナは聖女である前に、一人の女性だった。


カイリは彼女の笑顔を守るために、さらなる研究に没頭し始める。そして彼女の力をより活かすための「アーティファクト」を作り出すことを決意した。



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第4章 結晶のプロポーズ


数年後、カイリはついにアーティファクトを完成させた。それは月の輝きと水の流れを再現する、美しい結晶のような装置だった。


「リュナ、これは君と僕の力が共鳴して初めて完成する装置だ。」

彼はアーティファクトを手にしながら、リュナの前に膝をつく。


「僕は君と共に生き、共に歩みたい。このアーティファクトのように、僕たちが力を合わせて新しい未来を作りたいんだ。僕と結婚してくれないか?」


リュナは驚きと共にその結晶を見つめ、やがて小さく微笑んだ。


「カイリ…これは、私だけのために作ってくれたのですか?」

「そうだよ。僕にとって君が、世界の全てだから。」


リュナはその言葉に、胸の奥から温かい感情が溢れるのを感じた。孤独を埋めてくれる存在が、目の前にいる。


「……はい、喜んで。」



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第5章 転移装置と新たな旅立ち


結婚後、カイリはさらなる研究の果てに、転移装置の開発に成功する。

これは異世界や地球へと移動できる革新的な発明だった。


その頃、リュナは魔王の侵略を退けた功績により、国王から「自由」を許されるが、同時に「ポイント・ネモ」の女王として都市を守り続けることを条件として課された。


「リュナ、これで君はどこへでも行ける。」

カイリは転移装置を指しながら、優しく語りかけた。


「けれど僕たちは、ポイント・ネモを守る使命も果たさなければならない。」

リュナは頷く。


「それでも私は自由を得た。この都市を守りながら、あなたと共に新しい世界を見に行けるのですね。」


「そうだよ。君となら、どこへでも行ける。」


こうして二人は、ポイント・ネモを守りつつ、未知の世界への旅を始めた。

彼らの絆と冒険は、これからも続いていく。

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